配信日時 2020/04/09 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (273)】  ― メイキングオブ防衛白書(3)―

こんにちは、エンリケです。


「メイキングオブ防衛白書」
の三回目です。


体験談やご感想もお寄せください。
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さっそくどうぞ

エンリケ

追伸
東京五輪は一年延期されました。
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
を読んで、来年に思いを馳せます。
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『ライター・渡邉陽子のコラム (273)
 ―メイキングオブ防衛白書(3)―

         渡邉陽子
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こんばんは。渡邉陽子です。
コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言が出された場合、自衛隊
への災害派遣要請は従来のコロナウイルス患者の急患輸送やPCR支
援以外の支援も行なうことになるのでしょうか。おそらくなるので
しょう。すでに自治体にLOの派遣は始めているようですし……自治
体と自衛隊の連携は常に密であってほしいです。それから災害派遣
に従事する隊員が決して罹患することのないよう、万全の体制で臨
んで欲しいです。みなさまもどうぞご自愛ください。

Gさま
白書室の取材は私にとっても貴重で、得がたい経験をさせていただ
いたと今でも感謝しています。そしてこのメルマガを読んでいただ
くことで、白書にまた違った思いも抱いていただけるとしたら、そ
れほどうれしいことはありません。ありがとうございました!


■メイキングオブ防衛白書(3)

防衛白書ができるまでの流れを追ってみます。
まず、前年版の白書室のメンバーが解散して間もなく、次の白書作
成のための新メンバーが集まり、新たに平成(今なら令和ですね)
●年版の白書室が開設されます。

最初に行なうのは、方針案の作成です。
なにをどの章で書くのか、目玉はどうするか、コラムで扱うネタは
なににするかなどを、さまざまな調査分析に基づいて作成し、担当
各課の意見照会、各種省内会議を重ねて決めていきます。

続いて部内外意見聴取として、有識者数名に昨年の防衛白書を読ん
でもらい、意見をもらいます。
取材した年は大学教授やデザイン会社などのほか、防衛白書を区市
町村長に伝えたり渡したりする地方防衛局長の意見も現場レベルの
声として聞いたそうです。おそらく大学教授などの有識者や、地域
の声を知る地方防衛局長に意見をもらうというのは、今も変わらな
いのではと推測します。
ちなみに取材時は、前年の白書を読んでもらったところ「総じて大
体好意的でしたね。他省庁の白書と比べると工夫があってとてもい
い、構成も読みやすいという声が多かったです」とのことでした。

記事の作成に取りかかるのは、政務三役、大臣補佐官への説明を終
えてからです。
本文は1次案、2次案、そして省案と3度のステップを踏むごとに
ブラッシュアップしていきます。
各幕に確認してもらい意見をもらうほか、先任班長級会議と庶務担
当課長等会議を行ない、その声を次の案に反映させるということを
繰り返します。
ひとつの部署の意見を通すとほかの部署からは逆の意見が出るとい
った具合に、四方八方から届く声の調整に頭を悩ませるのがこの時
期です。きつそうです。
各部署からの回答を待っている間、白書室では写真を集めたりコラ
ムのオーダーを出したり、図表の手直し、資料の情報収集などを行
ないます。地味で、面倒で、そしてとても大事な作業です。

省案まで来ると本文の内容はほぼまとまっているので、今度はどん
な紙面になるのかといったレイアウトに焦点が移ります。
ちょうどこのタイミングで取材に行ったのですが、部員と3人の陸
海空自衛官が顔を突き合わせて意見を出し合っているところでした。
「ここのスペースもったいないね」
「この写真は2枚並べて見せたほうがわかりやすいんじゃない?」
「人名のキャプション、さっきのページではハングル読みだけどこ
こでは日本語読みになってる。どっちかに統一しないと」
「コラムがページ分割するのは見た目がよくないですね」
活発に意見がやりとりされる横では、事務官と舞鶴からはるばる遠
征中のWAVE、士長が黙々と自分の仕事をこなしていました。

省案がまとまると、いよいよ白書作りの山場、局長・幕僚長等会議
を迎えます。
報道官と部員が局長や幕僚長などに省案の説明をするなか、さまざ
まな意見を出し合いながら内容の検討が行なわれます。

局長・幕僚長等会議まで終わると世に出せる形になってきているの
で、ここから最後の追い込みです。
他省庁に確認してもらう渉外調整、政務三役と大臣補佐官への説明
を経て、省内での意見が最終的に決定する防衛会議が行なわれます。
大臣が参加するこの防衛会議が、白書作成のクライマックスといえ
るでしょう。
この会議でゴーサインが出ると閣議にかけられ、そこで了承を得る
と(ここで初めてニュースでも取り上げられていますよね)、晴れ
て新しい防衛白書が世に出るのです。
紙媒体のほか防衛省のホームページでは、閣議で了承された即日に
全文をアップ、透明性を強く意識して英語版も日本語と同日にアッ
プします。

これで終わりではありません。
完成した防衛白書を有効利用してもらうため、白書室の面々は全国
の防衛局に足を運び、今年の白書の説明を行ないます。
そして来年度に引き継ぐための資料整理を終え、ようやくその年の
白書室が閉室となるのです。



(つづく)


(わたなべ・ようこ)


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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。

 
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