配信日時 2020/03/27 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】世界の秘密兵器(15)「擲弾発射器」

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が出まし
た。今回はMP5です。

「MP5サブマシンガン」
L.トンプソン (著), 床井雅美 (監訳), 加藤喬 (翻訳)
発売日: 2019/2/5
http://okigunnji.com/url/14/
※大好評発売中


きょうのテーマの「擲弾」は、
わたしが直面したはじめての
「軍事のカベ」でした。
懐かしいですね。

思えば諸国の軍の部隊名には
竜騎兵とか装甲擲弾とか騎兵とか
むかしからの伝統的な名前が残っています。

いいのか悪いのかよくわかりませんが、
歴史と国史と軍事は不可分一体なんですね。

さっそくどうぞ

エンリケ


ご意見ご質問はこちらから
https://okigunnji.com/url/7/


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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編     

世界の秘密兵器(15)「擲弾発射器」

Takashi Kato

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□トランプツイッター3月18日付

 コロナウイルスに対し、まだ人類は免疫を獲得し
ていません。したがって罹患率は極めて高く、また、
国境が疎んじられるグローバリズムに助けられ、文
字通り「野火」のように世界中に拡散しています。
致死率は通常のインフルエンザの10倍。しかも免
疫の低い人々にとってはもっと高いそうです。抵抗
力のある人々は、感染しても発症しないか、または
「質(たち)の悪い風邪」程度の症状で済み完治す
るといいますが、パニックに陥った人々が病院に殺
到すれば医療制度がパンクしてしまいます。本当に
治療が必要な人々に手が回らなくなる訳です。
 
 先日、近くの陸軍基地内スーパーから紙製品と水
ボトルが消えました。パニックに強いはずの軍人や
復員兵でもこの有様。してみると、コロナ禍は未知
の病原体との戦いであると同時に「人間性の暗部」
とのせめぎ合いでもあります。アジア系に対する偏
見しかり、買い占め転売しかり、経済パニックしか
り。

 わたしは陸軍の訓練でも学びましたが、ストレス
に長くさらされると一定数の人々は平常心を失いま
す。自分のことしか考えられなくなるのです。出自
や高等教育の有無には関わりなく、パニック状況下
でその人の「地」が出るということでしょう。恐慌
時に問われるのは、軍人、警官、武道家、教師、政
治家、起業家、スポーツ選手などの肩書ではなく、
要は、各人の人格が磨かれているかどうかなのです。

昨年末の時点でこのウイルス性肺疾患が「武漢肺
炎」と呼ばれていたこと、そしてその後の拡散経緯
から見ても、新型コロナウイルスの発生源が武漢の
ウイルス研究所か同市の海鮮市場であることは間違
いありません。ところが国内の感染がピークを過ぎ
たと見るや、中国首脳部は「アメリカ軍真犯人説」
など荒唐無稽な偽情報を拡散し責任転嫁を画策し始
めました。

もとより中共に「大国の品格と自覚」を期待しても
詮無いことですが、放っておけば中国の情報工作は
世界に波及・浸透します。嘘も百回繰り返せば真実
と見なされてしまうことは、日本人が歴史・領土問
題で学んだ苦い教訓。ならば中国政府に「武漢ウイ
ルス発生源を特定のうえ、検証可能な防止策を世界
に向け発表させる」のが日本の使命。安倍首相が習
近平国家主席への国賓招待をテコに迫れば、決して
できないことではありません。そのぐらいのしたた
かさと豪胆さがなければ、日本は早晩、独裁強権の
隣国に飲み込まれましょう。

 トランプ大統領は本日のツイッターで、新型コロ
ナウイルスを再度「中国ウイルス」と呼んでパンデ
ミック放置の責任を明確にし、また、コロナ禍に喘
ぐ同胞の結束を促しています。キーワードは 
containment。この文脈では「封じ込め」が適当です。
 
For the people that are now out of work because 
of the important and necessary containment 
policies, for instance the shutting down of 
hotels, bars and restaurants, money will soon 
be coming to you. The onslaught of the Chinese 
Virus is not your fault! Will be stronger than 
ever! 

「ホテルやバー、レストランの閉鎖など重要かつ不
可欠な(コロナウイルス)封じ込め政策によって現
在失業中の人々へ、(連邦政府の)現金支給がもう
すぐ始まる。中国ウイルスの襲来はあなた方の責任
ではない!(この試練をしのげば)われわれはもっ
とはるかに強くなる!」
  

▼世界の秘密兵器「擲弾発射器」

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な
破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手
放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏
面が「抑止力」なのです。

「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。今回は手榴弾をより遠く
まで正確に飛ばす擲弾発射器です。

近代的手榴弾の嚆矢となったのは1915年に英国
で開発された Mills bomb(ミルズ ボム)。軽量小
型で殺傷力の高いミルズ型手榴弾は兵士の戦闘能力
を一段と高めましたが、誰もが野球選手のような制
球力と遠投力を持っているわけではありません。手
榴弾をより遠くまで正確に投擲する目的で発明され
たのが擲弾発射器と呼ばれる一連の兵器です。

第1次世界大戦の塹壕戦から第2次世界大戦にかけ
ては、小銃の先端に発射機を取り付け空砲で手榴弾
を撃ちだす小銃擲弾(rifle grenade)が使われまし
た。しかし、反動が強烈で正確な照準ができないこ
とや、銃を損耗するなどの欠点があったため、米軍
は50年代に元折れ単発式のM79グレネード・ラン
チャーを制式化。手榴弾を投げても届かず、迫撃砲
(mortar)では近すぎて狙えない射程50メートルか
ら300メートルの敵を攻撃するのに適していまし
た。

しかしM79はかさばり、擲弾兵はM16小銃を携行で
きません。そこで、M16小銃の銃身下に取り付ける
タイプの擲弾発射器M203がベトナム戦争中に開発
され、擲弾兵(grenadier)もライフル歩兵として火
力を発揮できるようになったのです。

ちなみに士官候補生時代、M203の射撃訓練を受け
ました。M16の左側面にオフセットされたグレネー
ドサイトで狙いをつけ、擲弾発射器自体に装備され
た引き金を引くと「ポン」といういささか拍子抜け
する発射音とともに40ミリ擲弾が飛んでいきます。
グレネードが放物線を描いて飛翔するのが見えるほ
ど銃口初速が遅いので反動も軽微です。標的は10
0メートルほど前方の廃棄された装甲車。まぐれだ
ったのでしょうが、初弾が命中したのには驚きまし
た。

 手榴弾の軽便さと、ミニ迫撃砲としての精度と威
力を兼ね備えた擲弾発射器は歩兵の火力を格段に増
強します。この意味で、戦術レベルでの抑止効果は
侮れません。

教材ビデオ: https://www.youtube.com/watch?v=r4Rwe-N8s_I&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=106

(手榴弾のイントロダクションは0:04から始ま
ります)


基本語彙 (カタカナ発音表示はおおざっぱなもの
です)
Grenade launcher(グレネード・ランチャー)擲弾
発射器
Improve(インプルーブ)改良する 強化する
Firepower(ファイアパワー)火力

シナリオ(2:15から始まります)

It (The grenade launcher) is another war 
machine that improves the firepower of a single 
combat soldier.
(擲弾発射器は各戦闘兵の火力を強化するいまひと
つの兵器だ)

英語一言アドバイス:
 firepowerは文字通り「火」+「力」。具体的には
銃火器の発射速度や弾丸の破壊力を含めた射撃性能
や威力のことです。

発音サイト:  firepowerの発音 https://www.youtube.com/watch?v=IInwwHRLCII

参考サイト:  

ミルズ型手榴弾 https://en.wikipedia.org/wiki/Mills_bomb
(本サイトの日本語版に移行してください)

擲弾発射器 https://en.wikipedia.org/wiki/Grenade_launcher

小銃擲弾 https://en.wikipedia.org/wiki/Rifle_grenade
(本サイトの日本語版に移行してください)

M79グレネード・ランチャー (元折れ式単発の擲
弾発射器)https://en.wikipedia.org/wiki/M79_grenade_launcher

M203グレネード・ランチャー (M16小銃に取り付け
る擲弾発射器)https://en.wikipedia.org/wiki/M203_grenade_launcher



(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃(近刊)』(いずれも
並木書房)がある。
 
 
追記
「MP5サブマシンガン」
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『チューズデーに逢うまで』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063326X
 
『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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