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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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おはようございます。エンリケです。
●なぜ米とイランは激しく対立するのか?
●米とイランの争いの歴史
を振り返り、
●トランプ政権の対イラン戦略と、それに対する
イランの抵抗戦略
を丹念に分析して、
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エンリケ
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●短期連載 米国とイランはなぜ戦うのか?(最終回)
ソレイマニ司令官殺害後──イランは新たな手法で
米国に揺さぶりをかけ始めた
菅原出(国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント)
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□はじめに
コロナウイルスの感染拡大と原油安で世界経済の
混乱が続くなか、イラクにおける米国とイランの代
理戦争が再び激化の様相を見せている。
3月11日、イラクの首都バグダッドの北に位置す
るタジのイラク軍基地に向けて30発のロケット弾が
発射され、18発が着弾。同基地にいた米軍兵士2名
と英軍兵士1名が死亡、有志連合軍のメンバーを含
む10名以上が負傷する事件が発生した 。トランプ
政権は、米軍に対してこのような攻撃を仕掛けるグ
ループは、イランが支援するシーア派民兵組織「カ
タイブ・ヒズボラ」しかいないとして、同組織の犯
行と断定した。
米軍は、3月12日にイラク国内のカタイブ・ヒズ
ボラの拠点5か所を空爆、同民兵組織の武器庫を破
壊したと発表した。エスパー米国防長官は「我々は、
イラクやこの地域の米軍部隊を守るためにあらゆる
手段を講じる」と勇ましく述べたが、米兵2名が殺
害された報復としては、非常に抑制された攻撃だっ
た。
昨年末から今年の年始にかけて戦争寸前まで高ま
った緊張が繰り返されるかのような展開がみられた
が、トランプ政権は危機を回避すべく抑制的な対応
にとどめたのだろう。
2月6日に発売された拙著『米国とイランはなぜ
戦うのか?』では、“トランプ政権がもはや取り返
しのつかないところまでイランを追い込み、イラン
が生存をかけた危険な勝負に出ている”という現在
の危機の構図と背景を解説させていただいた。本連
載では、同書からそのエッセンスを読者の皆様にお
伝えさせていただいているが、連載第8回目は、米
軍によるソレイマ二司令官殺害とその後の危機を振
り返り、危機が再び繰り返される可能性について考
えていきたい。
▼全面戦争を回避した米国とイラン
昨年12月27日にイラク北部キルクークにあるイラ
ク軍の基地に約30発のロケット弾による攻撃があり、
米兵の通訳として同基地に駐在していた民間の米国
人1名が死亡し、米兵4名が負傷すると、トランプ
政権は、イランが一線を超える攻撃を仕掛けてきた
として方針を転換。挑発を強めてきたイランに対し
て、積極的に攻撃を仕掛けることで相手の動きを抑
止する作戦へと切り替えたのである。
12月29日、米軍は、イラクとシリアの国境をまた
いで設けられているカタイブ・ヒズボラの基地に
F-15E戦闘機による空爆作戦を実行し、イラク人
民兵25名を殺害、20名以上を負傷させた。イラクの
主権を侵害するこの米軍の攻撃でイラクにおける反
米感情が高まると、12月31日にバグダッドの米国大
使館の襲撃事件が発生。主にカタイブ・ヒズボラの
メンバーとみられる数千名の暴徒たちが、バグダッ
ドの米大使館を攻撃した。
大使館を破壊されたトランプ大統領は激怒したと
伝えられた。年が明けた1月2日、マーク・エスパ
ー米国防長官は「脅威(攻撃)情報を得たら、我々
は米軍や米国民の生命を守るために先制攻撃を仕掛
ける」と述べ、「ゲームのルールは変わったのだ」
と宣言。米国が何か攻撃を仕掛けることが予想され
たが、翌日、米軍はバグダッド空港に到着したイラ
ン革命防衛隊「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を
無人機で爆殺して世界を驚かせた。
ソレイマニ司令官殺害のインパクトはすさまじく、
イラン政府高官は次々に「報復」について言及。イ
ラン国内は、この事件の結果、保守強硬派も改革派
も区別なく、対米報復で国民が団結したようだった。
そして1月8日未明、ついにイランが、米軍の駐留
するイラク国内の2つの基地に向けてミサイル攻撃
を行なった。これに米国が報復行動をとれば、戦争
のエスカレーションは避けられなくなる可能性があ
った。
米国による報復攻撃の懸念が強まるなか、イラン
によるミサイル攻撃の詳細が明らかになり、イラン
側の意図が少しずつ明らかになっていった。米軍が
駐留する2つのイラク軍基地には合計22発の弾道ミ
サイルが撃ち込まれ、2発が不発だったものの、イラ
ク軍にも米軍にも被害は発生しなかったと伝えられ
た。実際には100名を超す米兵が脳損傷の治療を受け
ることになるのだが、この時点では負傷者もゼロだ」
と発表された。
攻撃の直前にイランから攻撃予告の連絡がイラク
軍にあり、この情報は事前に米軍側にも共有された
ため、米軍側の被害が限定的だったのだ。イランは、
ソレイマニ司令官の殺害に対する報復攻撃をする必
要があったものの、米兵に対する被害を抑えること
で、米国からの全面的な報復攻撃を避けることを狙
ったのは明らかだった。
こうしたイランの配慮をトランプ政権が受けとめ
て、イランへの攻撃をしないと発表するかどうかに
注目が集まったが、1月9日、トランプ大統領はホ
ワイトハウスで声明を発表。米軍に被害が出なかっ
たことを正式に報告し、相変わらずイランへのいつ
もの批判を繰り返し、イランの核武装は許さないと
の決意を示したものの、イランへの軍事攻撃には触
れなかった。
▼米・イラン危機は再燃する
こうしてイランも米国も全面戦争を回避させるこ
とをこの時点では優先させたが、だからと言って危
機が去ったわけではない。イランは、ソレイマニ司
令官を殺害されたことに対して国家として何らかの
対応をしなければならなかったが、本来はイランの
仕業であるという決定的な証拠を米国に掴ませず、
米国に対イラン攻撃の口実を与えずに米国に攻撃を
仕掛けるのがイランのやり方である。正面から米国
と衝突するのではなく、ゲリラ的に米国にテロ攻撃
を仕掛けることで、米国がイランに制裁をかけ続け
ることのコストを増大させ、制裁緩和に持ち込むの
がイランの抵抗戦略の基本である。その抵抗戦略を
イランがやめたわけではなかった。
この1月の危機から2か月が経過した3月中旬に、
冒頭で記したように再びイラクの米軍に対してロケ
ット弾による攻撃が行なわれ、米兵に死傷者が発生
した。3月15日、「革命家連盟」と名乗るグループ
が、これらの攻撃の犯行を認めるビデオを公開した。
この新組織はソレイマニ司令官殺害が彼らの怒りに
火をつけたとして、「イラクの米軍に対する攻撃は
始まったばかりだ」とさらなる攻撃を示唆した。も
し、この新たなグループがイラン革命防衛隊のフロ
ント組織だとすれば、イランはこれまでとは異なる
新たな手法で米国に揺さぶりをかけてきたことにな
る。
イランは、制裁とコロナと原油安のトリプルパン
チで経済的には大打撃を受けており、ますます厳し
い状況に置かれているはずだが、米国自身もコロナ
対応に忙殺され動きが鈍っているはずであり、この
状況下でイランがあえて危機を煽ってきている可能
性は否定できない。トランプ大統領がコロナとイラ
ンの二正面作戦を回避しようとするなら、イラン保
守強硬派はそこにチャンスを見出して危機を煽って
くる可能性は十分にある。
米・イラン間の緊張が再び高まる可能性がある。
そして、今度は両国とも「相手は全面戦争を避けよ
うとするに違いない」と相手の意図を読み誤り、互
いのレッドラインを超えてエスカレーションを引き
起こしてしまう可能性は排除できない。
米・イラン危機の再燃に備えるべきである。
(おわり)
(すがわら・いずる)
●著者略歴
菅原 出(すがわら・いずる)
国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント
1969年生まれ、東京都出身。中央大学法学部政治学
科卒業後、オランダ・アムステルダム大学に留学、
国際関係学修士課程卒。東京財団リサーチフェロー、
英危機管理会社役員などを経て現職。合同会社グロ
ーバルリスク・アドバイザリー代表、NPO法人「海
外安全・危機管理の会(OSCMA)」代表理事も務め
る。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争
詐欺師』(講談社)、『秘密戦争の司令官オバマ』
(並木書房)、『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』
(講談社現代新書)などがある。
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