配信日時 2020/03/23 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(68)】 防衛力には「余力が必要だ」

こんにちは、エンリケです。

いつもとは一味違う「一文」です。

さっそくどうぞ。

エンリケ


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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。

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桜林美佐の「美佐日記」(68)

防衛力には「余力が必要だ」

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は今回で68回目です。

読者のKさまから感想を頂きました。

「本日のメルマガの通り、自衛隊では『風邪と水虫、
怪我の治療』程度が多いため医官が育たない、とい
う問題を抱えています。私も所属医官が近くの大学
病院に毎週1日研修に通いたいというのでOKを出
しました。あの医官は防衛医大1期生でしたが状況
は今も変わっていないのでしょうかね。」

とのことで、ありがとうございました。

現在は一般患者も受け入れるようになってきていま
すので、経験値は以前より高くなっていることと思
われますが、その一般患者を診療する問題点につい
て、リクエストに応じて市川文一・元陸上自衛隊武
器学校長が「防衛予算で読み解く日本の防衛力」で
解説をして下さいました。ありがとうございます!

その前に、まずはエンリケさんの冒頭コメントに大
拍手!

「さて巷では自衛隊アゲ花ざかりですが、実態は想
像を超える深刻さです。応援や感謝の声はありがた
いことですが、そこに依存するしかないレベルに至
ると、組織は不健全になります」

おっしゃる通り!「応援」と「依存」は違うのに、
みんな勘違いしとらん?というのが
最近の私のよく言う独り言です。

 因みに「追伸」にあった、自衛隊への寄付につい
て。私もそうしたご要望や「自衛隊ふるさと納税は
できないのか」といった声を聞くことが多いですが、
いま現在「寄付受け」は難しくなっています。何か
良いシステムができたらいいですよね。

 そして、本題の市川さんのコメント。まず、ポイ
ントはこちら。

 「自衛隊病院はすべて防衛予算で運営されていま
す。本来、自衛隊病院は自衛官のために作られた病
院で、自衛官に関わる診察、検査、医薬品等は防衛
予算でまかなわれます。自衛隊の基地や駐屯地の医
務室での診療に関わる経費も同様です。有事におけ
る戦傷者の治療が基本にあります」


見て下さい皆さん(ご存じのこととは思いますが)、
自衛隊病院は「自衛官のために作られた病院」なの
です。そしてすべて「防衛予算でまかなわれてい
る」のです。

急に最近、ネット上で「自衛隊中央病院がコロナ対
応で活躍したのに報じられていない」というお怒り
の投稿が拡散されているようで、それは確かに多く
の人に皆さんの活躍ぶりを知ってもらいたいと私も
思いますが、最も大事な「自衛隊医療とは何か」が
欠落したまま伝わっても、またぞろ「自衛隊依存
症」が増えるだけで、自衛隊のために全くならない
というのが私の見方です。

市川さんの続き。

「同時に、自衛官は有事に即応できるため健康な状
態(人の力=防衛力)を維持することが求められま
す。自衛官は体力検定を義務づけられ、自らも健康
な状態を維持しなければなりません。ただし、個人
の努力も限界がありますから自衛隊病院がサポート
しているという仕組みです」

自衛隊が、医療であれ救難であれ、それら機能を持
っているのは、自己完結組織だからです。

そういえば、最近、自衛隊のサイバー部隊について
多くの人が「社会インフラを守るため」だと勘違い
していることを知りました。これも言うまでもなく
自衛隊のシステムを守ることが目的です。

自衛隊が自らをしっかり守ることは、即ち、国民の
安全に繋がるわけですから関係者はこれらの事々を
「自衛隊のため」と言わず「国民のため」と表現し
ます。それが誤解の元なのか・・(汗)。

また「自衛隊のため」だけに使われる物や人は予算
が認められにくいという実情もあるでしょう。

サイバー防護などは、24時間稼働しているので分
かりやすいかもしれませんが、自衛隊だけが相手だ
と病院はベッドが空いている状態になりますし、救
難も自衛隊機に事故がなければ暇になってしまうわ
けです。

それを会計検査院が厳しく指摘したり財務省が予算
を渋ったりするという実態はありそうです。

ネット上ではこれらの人々が自衛隊をいじめている
諸悪の根源のように言う人も多いようですが、あく
まで課せられた仕事をしているだけですので、悪口
を言っても予算はびた一文も増えません。

それより、賢明な判断をしてもらえるようなコンセ
ンサスを醸成する努力をしたいものです。

今回のコロナ対応を機に防衛力には「余力が必要
だ」と広く認識されることを願います。「余力=ム
ダ」ではないのだと「国民が理解すること」が大事
だと思います。
 
では再度、市川さんに続きます!

 「大きな自衛隊病院は一般公開して自衛官以外で
も診療を受けられるようになっています。自衛官は
無料ですが、自衛官以外は、当然、有料です。自衛
官以外の人が支払った診療費は、すべて国庫に入り
ます。国庫には防衛省の口座があるわけではなく、
国の共通的な預金となります。また、一般の人の診
療費を次の防衛予算に上乗せする制度もありません。」

どうですか。私の言った通りではありませんか!一
般患者を診療するほど、タコが自分の足を食べてい
る状態になるんです(ひえっ)!

そして重要なのはこの一文(文一じゃないですよ笑)。

「最悪の場合、本来必要な自衛官の診療ができなく
なります」

ちょっと、ちょっと!そんなことになったら、日本
は誰が守るのよ!自衛隊の自己完結機能を削いでま
でサービスされても、かえって困るわよ、それを望
むならもっと規模を拡大しなくちゃだめでしょう!


このようなセリフが主婦の皆さんの会話から聞こえ
てくる・・・、私はそんな日本に早くなって欲しい
のです。

っていうか、今回の美佐日記って、ほとんど「防衛
予算から読み解く日本の防衛」をコピペじゃない
の!?と思われた皆さん、怒らない、怒らない。和
やかに、和やかに。こんな時こそ大らかな気持ちで
過ごしましょう(おまえが一番怒ってるんだろ)!

<お知らせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしてい
る「国防ニュース最前線」、今週は伊藤俊幸・元海
将に解説をして頂きます。

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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリ
ーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(PH
P研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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