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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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「防衛予算から読み解く日本の防衛力」第二部の
六回目です。
冒頭の一文は、月曜日の桜林さんの
疑問に答える内容。
自衛隊の医療費の解説です。
さて巷では自衛隊アゲ花ざかりですが、
実態は想像を超える深刻さです。
応援や感謝の声はありがたいことですが、
そこに依存するしかないレベルに至ると、
組織は不健全になります。
ですから解決策は、
「防衛予算増」の一択です。
そのために国民ができることは何か?
あなたも考えてください。。
さっそくどうぞ
エンリケ
追伸
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(27)
第2部 危機的状況にある日本の安全保障体制(6)
16大綱から透けて見える「防衛サイドと財務サイドの対立」
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
16日(月)配信の桜林氏の「美佐日記」で、自衛
隊の医療費に関する解説のご要望がありましたの
で、早速、解説します。防衛予算の仕組み(という
よりは国の予算)として重要な事項であり、本来で
あれば、第1部で解説すべき事項ですが、全く触れ
ていませんでした。多分、ほかにも漏れていること
が沢山あると思われますので、今後ともご指摘、よ
ろしくお願いします。
自衛隊をはじめとする国の行政機関は、税金を主
体とした収入を元として予算を編成し、予算に基づ
いて使用した経費は国庫(日本銀行にある預金)か
ら支出されます。国庫の預金は省庁ごとに区分され
ているわけではなく、年度の予算で支出額が定めら
れています。
自衛隊病院はすべて防衛予算で運営されていま
す。本来、自衛隊病院は自衛官のために作られた病
院で、自衛官に関わる診察、検査、医薬品等は防衛
予算でまかなわれます。自衛隊の基地や駐屯地の医
務室での診療に関わる経費も同様です。有事におけ
る戦傷者の治療が基本にあります。
同時に、自衛官は有事に即応できるため健康な状態
(人の力=防衛力)を維持することが求められま
す。自衛官は体力検定を義務づけられ、自らも健康
な状態を維持しなければなりません。ただし、個人
の努力も限界がありますから自衛隊病院がサポート
しているという仕組みです。
今では、様々な理由により、大きな自衛隊病院は
一般公開して自衛官以外でも診療を受けられるよう
になっています。自衛官は無料ですが、自衛官以外
は、当然、有料です。自衛官以外の人が支払った診
療費は、すべて国庫に入ります。国庫には防衛省の
口座があるわけではなく、国の共通的な預金となり
ます。また、一般の人の診療費を次の防衛予算に上
乗せする制度もありません。
したがって、一般の人の診療が増えるほど防衛予
算を圧迫する仕組みとなっています。最悪の場合、
本来必要な自衛官の診療ができなくなります。病院
の運営費は、医療器材などの購入経費以外は防衛費
の中の一般物件費(歳出経費)で支出されるため、
支出経費が予算額限度になれば医薬品や輸血のため
血液を買うこともできません。これも、防衛予算の
構造上の大きな問題です。
▼「基盤的防衛力構想」から脱却した22大綱までの
2回の大綱見直し(16大綱)
07大綱では「基盤的な防衛力を保有するという考
え方については、国際情勢のすう勢として、不透
明・不確実な要素をはらみながら国際関係の安定化
を図るための各般の努力が継続されていくものとみ
られ、また、日米安全保障体制が我が国の安全及び
周辺地域の平和と安定にとって引き続き重要な役割
を果たし続けるとの認識に立てば、今後ともこれを
基本的に踏襲していくことが適当である」との記述
のとおり、明確に「基盤的防衛力構想」が引き継が
れています。
ところが、16大綱に関しては「今後の防衛力につい
ては、新たな安全保障環境の下、『基盤的防衛力構
想』の有効な部分は継承しつつ、新たな脅威や多様
な事態に実効的に対応し得るものとする必要があ
る」との記述が表すように、「基盤的防衛力構想」
から脱却すべきという意思が表れました。
07大綱から16防衛大綱策定までの10年間に、北朝鮮
の弾道ミサイルやゲリラ・特殊部隊の脅威、平成13
年の米国の9.11テロに代表される国際テロ組織など
の非国家主体の重大な脅威の出現、中国の島嶼部に
対する脅威など、日本に対する脅威が多様化すると
ともに、平成16年のイラクへの自衛隊派遣に象徴さ
れるように自衛隊の海外任務も本格化し、日本を取
り巻く安全保障環境は激変しました。脅威の多様化
に対抗するとともに、世界から期待される国際任務
を果たすためには「基盤的防衛力構想」では対応で
きなくなり、大綱の抜本的な見直しが必要となった
のです。
そして、日本の安全保障環境に対応できるよう、防
衛力の役割も、「新たな脅威や多様な事態への実効
的な対応」として「弾道ミサイル攻撃への対応」
「ゲリラや特殊部隊による攻撃等への対応」「島嶼
部に対する侵略への対応」「周辺海空域の警戒監視
及び領空侵犯対処や武装工作船等への対応」、およ
び「国際的な安全保障環境の改善のための主体的・
積極的な取組」が新たに追加されています。
しかしながら、「『基盤的防衛力構想』の有効な部
分は継承しつつ」の記述にあるとおり、新たな脅威
や多様な事態に実効的に対応し得る「所要防衛力」
を必要としながらも、「基盤的防衛力構想」からの
完全な脱却は図れませんでした。そして、「基盤的
防衛力」の有効な部分を継承した「16大綱」の新た
な防衛力が「即応性、機動性、柔軟性及び多目的性
を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度の技術
力と情報能力に支えられた、多機能で弾力的な実効
性のあるもの」です。
では、「『基盤的防衛力構想』の有効な部分は継
承しつつ」の記述にある「有効な部分」とは何でし
ょうか? 大綱本文では明確にはなっていません
が、「新たな脅威や多様な事態に実効的に対応し得
るものとする必要がある」との記述が明示するよう
に、基盤的防衛力構想の「我が国に対する軍事的脅
威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となって
我が国周辺地域の不安定要因とならない」の部分は
完全に矛盾します。
つまり、「有効な部分」とは「独立国としての必
要最小限の基盤的な防衛力」の部分となります。こ
れは、「基盤的防衛力構想」の本質を何度も説明し
たとおり、予算ありきの防衛力です。言い換えるな
らば、16大綱の日本が必要とする防衛力とは、現状
の防衛費の範囲内で新たな脅威や多様な事態に実効
的に対応する防衛力ということになります。
この記述だけ見ても、日本の安全保障環境に対応
しうる「所要防衛力」を必要と主張する防衛サイド
と防衛予算を前年度同額以下に抑えたい財務サイド
の対立と妥協がうかがえます。結果的には「基盤的
防衛力構想」を残した財務サイドの勝利といえるで
しょう。つまり、新たな脅威や多様な事態に実効的
に対応し得る防衛力を現行の防衛予算内で作るとい
う、予算ありきの防衛力構想が残ったということで
す。
そして、防衛サイドのささやかな抵抗として、
「V 留意事項」で「この大綱に定める防衛力の在
り方は、おおむね10年後までを念頭においたもの
であるが、5年後又は情勢に重要な変化が生じた場
合には、その時点における安全保障環境、技術水準
の動向等を勘案し検討を行い、必要な修正を行う。」
という記述を残しました。10年後を念頭に置きなが
ら5年後に見直しを行うというのは、矛盾した記述
です。5年後に見直しをするのであれば5年後を念頭
にすべきです。総じて、16大綱は、行政的な駆け引
きの結果できあがった大綱といえます。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
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著書に、
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心から感謝しています。ありがとうございました。
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