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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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おはようございます。エンリケです。
●なぜ米とイランは激しく対立するのか?
●米とイランの争いの歴史
を振り返り、
●トランプ政権の対イラン戦略と、それに対する
イランの抵抗戦略
を丹念に分析して、
今そこにある危機
の実相を解説した本。
それが菅原出さんの最新刊
『米国とイランはなぜ戦うのか?』です。
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200202、派遣情報収集活動水上部隊が、現地に出立
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ぜひご一読ください。
『米国とイランはなぜ戦うのか?』
菅原出(著)
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エンリケ
ご意見ご質問はこちらから
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●短期連載 米国とイランはなぜ戦うのか?(7)
反イラン世論を反米世論に転換─ソレイマニ司令官の思惑
菅原出(国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント)
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□はじめに
3月8日、サウジアラビアは4月から原油を増産
し、事実上のロシアとの価格戦争に打って出ること
を発表し、原油市場だけでなく世界の株式市場を震
撼させた。
それまでは両国を中心として産油国は減産で合意
し、原油価格の維持に努めてきたが、コロナウイル
ス感染拡大の影響で需要が激減したことを受けて、
サウジはさらなる協調減産を提案。しかしこれ以上
減産を続けても米国のシェールオイルにシェアを奪
われるだけだとするロシア側が一歩も引かずに協議
が決裂すると、サウジは一転して原油増産を発表
し、4月から生産能力いっぱいの日量1200万バレル
まで増やすと発表。
サウジ、ロシアの両国が原油の大幅な増産を決め
たことで原油価格は暴落し、今後も低迷することが
予想される。こうなると財政基盤の脆弱な産油国に
は大打撃だ。その中でも、イランは、コロナウイル
スの感染拡大にも苦しめられており、米国による制
裁も合わせるとトリプル・パンチになるはずである。
ウクライナ機撃墜事件とその隠蔽工作で革命体制
に対する信頼が大きく揺らぎ、国会選挙での保守強
硬派の強引な手法に政治不信も強まり、さらにコロ
ナウイルス対策での不手際と原油価格の低迷で現実
の生活苦が重なれば、現体制に対する不満と反発は
ますます増大することだろう。
そうした反発が政府に向かい、抗議活動や暴動が
再び激化するとなれば、保守強硬派は、体制維持の
ためにも、国民の不満を外敵に向かわせる必要性を
感じ、「危機」を必要としてくる可能性も否定でき
ない。要注意である。
2月6日に発売された拙著『米国とイランはなぜ
戦うのか?』(*)では、“トランプ政権がもはや
取り返しのつかないところまでイランを追い込み、
イランが生存をかけた危険な勝負に出ている”とい
う現在の危機の構図と背景を解説させていただい
た。本連載では、同書からそのエッセンスを読者の
皆様にお伝えさせていただいているが、連載第7回
目は、昨年後半にイラクやイランで吹き荒れた反政
府暴動とその影響を振り返ってみたい。
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▼イランやイラクで吹き荒れた反政府暴動
2019年9月にイランがサウジ石油施設に対して
「前例のない攻撃」を仕掛けた直後の10月頃から、
イランの影響力の強いレバノンやイラクで反政府抗
議活動が急拡大し、特にイラクではイランの在外公
館が焼き討ちに遭うなど反政府抗議デモは「反イラ
ン暴動」の様相を呈するようになったことから、イ
ランはその対応に追われることになった。
また、同年11月中旬には、イラン国内でもガソリ
ン値上げに抗議する反政府デモが発生し、瞬く間に
イラン全国の100都市に拡大した。
これに対してポンペオ米国務長官は、抗議デモを
行なっていた大衆に対する支持を早々に表明し、
「米国はあなたたちと共にある」とツイッターでコ
メント。またトランプ大統領も「米国はイラン体制
に反対する平和的な抵抗を行なうイランの人々を支
持する」と公式に表明した。
こんな声明を出せば、イラン政府に“抗議デモは
米国が扇動している”として全力で弾圧する口実を
与えることになるのは明らかなため、歴代の米政権
は、イラン国内で反政府デモなどが発生した際に
は、支持表明をするかどうか、慎重にタイミングや
そのメッセージの内容などを検討するのが常だった
が、トランプ政権はそんなことお構いなしに反政府
デモを支持し続けた。
案の定イラン政府は、「米国がガソリン価格の値
上げに伴う平和的なデモの機会につけ込んで、政治
不安を煽って揺さぶりをかけてきた」としてインタ
ーネットを遮断して抗議活動の鎮圧につとめ、暴動
の扇動者を逮捕するなどして力で抑え込んだ。
▼反イラン世論を反米世論に転換
イラン国内のデモ・暴動は早々に鎮圧できたが、
隣国イラクにおける反イラン暴動はなかなか収まら
なかった。そこで、イラン革命防衛隊の対外工作機
関「コッズ部隊」のソレイマニ司令官は、イラクで
対米テロを激化することを思いついた。
ソレイマニ司令官は、イラクのシーア派民兵たち
が米軍基地に対する攻撃のレベルを上げて米側の被
害が拡大すれば、怒った米軍が過剰な空爆を行な
い、イラク人に多数の犠牲者が発生することにな
る。そうしてイラク人の被害が発生すれば、イラク
国民の怒りの矛先が米国に向かうと考えたのである。
そこで同司令官は、昨年10月以降、レーダーに探
知されない高性能の無人偵察機を含む洗練された兵
器をイラクに搬送する手配を済ませ、これらの新型
兵器を使った米軍基地の偵察活動をイラク民兵組織
カタイブ・ヒズボラに指示した。
そして12月27日、危機のエスカレーションの引き
金となる事件が発生した。米軍が駐留しているキル
クークのイラク軍基地に約30発のロケット弾による
攻撃があり、米兵の通訳として同基地に駐在してい
た民間の米国人1名が死亡し、米兵4名が負傷した
のである。
これまでもイラン系のシーア派民兵組織は、米軍
や米大使館を標的にした攻撃をしてきたが、実際に
米政府の人員に被害が出ることはなかった。怒った
トランプ政権は、イランが一線を越えてきたと判断
し、29日にカタイブ・ヒズボラの拠点を空爆し、イ
ラク人民兵25名を殺害した。
この米軍による「過剰な攻撃」を受けてイラクで
は、シーア派の政治家たちが米国を非難する声明を
次々に発表し、米軍をイラクから追い出すべきとの
議論も強まった。続いてカタイブ・ヒズボラの民兵
などが中心となってバグダッドの米国大使館を襲
撃、2日間にわたって大使館の施設の一部を破壊し
た。この暴動を鎮めるため、イラクのアブデルマフ
ディ首相(当時)は、「米軍のイラクからの撤収を
求める法案の審議を進める」ことを約束した。
イラク国内の議論が、反イランから反米へと一気
に変わった。ここまでは、ソレイマニ司令官の狙い
通りだったと言っていい。しかし、米大使館襲撃に
激怒したトランプ大統領は、とんでもない作戦でイ
ランに報復することを決め、イランとの戦争の危機
を高めることになる。次回は、米軍によるソレイマ
ニ司令官殺害とその後の危機をみていくことにしよ
う。
(つづく)
(すがわら・いずる)
●著者略歴
菅原 出(すがわら・いずる)
国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント
1969年生まれ、東京都出身。中央大学法学部政治学
科卒業後、オランダ・アムステルダム大学に留学、
国際関係学修士課程卒。東京財団リサーチフェロー、
英危機管理会社役員などを経て現職。合同会社グロ
ーバルリスク・アドバイザリー代表、NPO法人「海
外安全・危機管理の会(OSCMA)」代表理事も務め
る。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争
詐欺師』(講談社)、『秘密戦争の司令官オバマ』
(並木書房)、『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』
(講談社現代新書)などがある。
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