配信日時 2020/03/16 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(67)】 自衛隊医療をめぐる古くて新しい問題…

こんにちは、エンリケです。

興味深い内容です。

さっそくどうぞ。

エンリケ



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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。

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桜林美佐の「美佐日記」(67)

自衛隊医療をめぐる古くて新しい問題…

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は今回で67回目です。

多くの予定がキャンセルになっている中、自衛隊OB
の方などの来訪がありました。とても嬉しかったで
す。

皆さん所属する会社からは自粛要請があったものの
「不要不急ではない用事」「8名以内の面会なので
大丈夫」(根拠は不明ですが)など、それぞれ理由
を申し出て福岡出張を敢行して下さいました。あり
がたいです。

 わが町では、マクドナルドが平日の昼から賑わっ
ています。お父さんが子供を連れてきている姿がけ
っこう多く見られます。

この子たちにとっては、なぜかお父さんとふたりで
マックに行ったけどあれはなんだったんだろう、ど
うもコロナウイルスが初めて流行した年だったらし
い。今はコロナなんてすっかり忘れられたけど・・。

いつか、そんな思い出になる日が来ればいいな、な
どと夢想してしまいます。

 しかし、現実に戻ればまさにこれは現在進行形。

お父さんと過ごした平日が良い思い出になればいい
ですが、お父さんの仕事がなくなったなどというこ
とになると大変なことになります。

前回、消費税「減税」への期待を書きましたが、減
税をしてその効果が現れるまでには時間がかかるこ
とから、減税するにしても、その前に現金の支給な
ど大規模な救済措置が必要だと専門家は言います。

 ぜひ、できることなら早急に動いてもらいたいも
のです。もうすぐ月末です。また年度末でもありま
す。今月お金がないと支払いができない人がたくさ
んいるのです。

 そんな中、今回のコロナ関連で「自衛隊の活動が
報じられていない」という声がちらほらと出ていま
す。

 確かに、そうなのですが、最近は自衛隊の災害派
遣について、こんなことまでするのかと疑問視せざ
るを得ないものが多く、自衛隊側としても積極的な
広報を憚(はばか)ってしまうという一面もあるの
かもしれません。

 現場の隊員さんの姿は伝えたいに決まっています
が、ジレンマはありますよね。

そういう意味で現在、広報にあたる人は積極性が評
価に繋がるのか、自衛隊の任務に対する誤解を拡大
させ自らの首を絞めることになるのか、難しい境遇
に置かれていると言えるかもしれません。

 河野防衛大臣になってからは、大臣ご自身のツイ
ッターで活動者数や内容を淡々とアップデートして
いますので、これは地味なようで十分に広報になっ
ていると思います。

これまでは「ホームページに載せています」と判で
押したように言う関係者が多かったですが、そんな
にみんなわざわざHPにアクセスしないでしょう、
と私は思っていました。

 わしはツイッターのごたるもんはやらんばい!と
いう方はいるとしても、ツイッターを見られる環境
にある人で防衛大臣のフォローをポチっとすればそ
れだけで情報が勝手に入ってくるのですから、従来
の情報取得より格段にラクです。

 もうひとつ気になる「報じられていないじゃない
か」という声があります。

自衛隊病院のことです。大臣のツイートで「自衛隊
病院、3月10日時点でこれまで感染者122名を
受け入れ、114名退院、2名転院、6名が現在、
入院中です。」とあるのに、なぜメディアは取り上
げないのだという怒りの記事を目にしました。

 以前も書きましたが、自衛隊医療について、大き
な誤解が広がっていないか?という懸念が私にはあ
ります。

 自衛隊の医官や自衛隊病院はそもそも自衛隊員の
ために存在するものです。

しかしながら、昨今は自衛隊の国際活動が本来任務
の中に位置づけられるようになり、それに伴い医官
の国際的活動も任務のひとつとなりました。

 また同時に「国民医療への貢献も」ということ
で、災害派遣のみならず、平素からも自衛隊病院は
一般患者にも門戸が開かれるようになりました。

医官は防衛医学のスペシャリストですが、相手が自
衛官だけでは症例の経験が積めないこともあり、一
般医療への参画そのものは決して悪い事ではないと
思います。
 
しかし、もしかしたら、世の中の期待値はこうした
自衛隊病院のあるべき専門性や立ち位置とかけ離
れ、全く違う方向に膨らんでしまっているのではな
いかと、またも私は心配しているのです。

 自衛隊員約27万人のうち、医官はわずか100
0人ほどしかいません。この人たちが自衛隊病院だ
けでなく陸海空の部隊や艦艇などに配置されます。
近所のクリニックの先生は毎週、陸上自衛隊の駐屯
地にも勤務しています。医官が足りていればそんな
必要はないでしょう。

 国家公務員なので、民間病院のように専門分野に
よる給与の差別化や夜勤の手当はありません。その
上、スキルアップを目指しても、手術の経験などが
十分に積めず「水虫と風邪の治療しかできない」と
辞めてしまう人が後を絶たないというのが、自衛隊
医療をめぐる古くて新しい問題であることは、この
読者の皆さんはよくご存じだと思います。

 だからこそ、先日、超党派議連が防衛大臣に申し
入れをしたという「病院船」の件も、「自衛隊医官
を派出すればいい」などという甘い考えが、いかに
ばかげているか関係者は知っているのです。

 ところが「誤解」や「早とちり」の感染力はすさ
まじいものです。

河野防衛大臣が3月7日に、防衛医大の卒業式に出席
したニュースが全国で流れました。

「感染症の脅威にも立ち向かわないといけない。自
衛隊の衛生機能の充実と強化が求められる」と述べ
たとされています。

これを見た多くの人が、ああ自衛隊がやってくれる
んだなあと思ったのではないでしょうか。

大臣が自衛隊医療の実情をどの程度ご存じなのか分
からないのですが、もしも実態とギャップがあるの
なら正しい情報を認識してもらう必要があります
し、それでも大きな期待を持たれるなら、規模も制
度も大幅に変えなければ無理でしょう。

因みに、自衛隊病院で部外者の診療をしても、診療
報酬は国庫に入るため病院の収入になるわけではあ
りません。

治療行為は病院の予算を使っていますので、薬をた
くさん出したり、あるいは手術などしたら大変な出
費になるという構造のようです。一般患者の手術を
しようとしたら予算が枯渇していて実施できず、別
の民間病院を紹介したなどという話もあったようで
す。

このあたりはきっと、市川文一 元武器学校長の
「防衛予算で読み解く日本の防衛力」で、いつか解
説して頂けることでしょう。期待しておりますっ。

<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしてい
る「国防ニュース最前線」、今週はお休みです。

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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリ
ーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(PH
P研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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