配信日時 2020/03/13 08:00

(新)【【海軍式】戦う司令部の作り方(1)】「日本海軍の意思決定の失敗──「社風」の問題」 堂下哲郎(元海将)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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おはようございます。エンリケです。


きょうからはじまる堂下元海将の連載は、
「海軍式 戦う司令部の作り方」
と題し、この世で最も難しいともいわれる

「組織を率いるリーダーシップとは?」

というビッグクエスションに答える試みです。

リーダーとは?
チームとは?
組織を率いるとは?
意思決定とは?

・・・

大きなものから小さなものまで、
所属する組織のパフォーマンス向上を
日々考えている方には見逃せない内容です。

あなたの体験や思い、感想など、
ぜひ堂下さんにお届けください。
https://okigunnji.com/url/7/
いつでもお待ちしています。



エンリケ


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https://okigunnji.com/url/7/


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【海軍式】戦う司令部の作り方(第1回)

日本海軍の意思決定の失敗──「社風」の問題

堂下哲郎(元海将)
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□はじめに

 皆さん、お久しぶりです。海自OBの堂下(どう
した)です。

 昨年の1月まで「戦う組織のリーダーシップ」と
してメルマガ連載させて頂きましたが、お陰さまで
このたび『海軍式 戦う司令部の作り方』として、
近く出版の運びとなりました。

 今回の連載では、新著の内容をなぞるかたちで、
リーダーシップの3つの要素「リーダー」「チー
ム」「意思決定」のそれぞれについてお話したいと
思います。

 よろしくお付き合いください。感想などお聞かせ
頂ければ幸いです。第1回は「海軍意思決定の失
敗」についてです。

▼海軍はなぜ太平洋戦争で負けたか?「社風」の
問題

 日本海軍は、最優秀の人材を集め、進歩的な組織
運営を行なった組織で、合理性や柔軟性を重んじ、
「指揮官先頭」のリーダーシップはまさに「戦う組
織」そのものでした。その海軍がなぜ太平洋戦争に
負けたのか? 科学技術力や工業生産力の差をはじ
め色々ありますが、最大の敗因は情勢判断を誤って
無謀な対米戦争を始めたことです。

 海軍の現場におけるリーダーシップには素晴らし
いものがありましたが、ハイコマンド(経営層)と
しての基本的な情勢判断の考え方ができていなかっ
たのです。これに加えて、海軍独特の「社風」が意
思決定をゆがめました。

▼前動続行

 海軍は、創設以来イギリス海軍を師として発達し
ましたが、イギリス流を無批判に鵜呑みにしたとこ
ろがあり、いつのまにか「自分の頭で考える」こと
がおろそかになっていました。「前動続行」です。
ハワイ作戦のやり方をミッドウェーでも繰り返し大
敗を喫したように、この傾向は作戦面にまで及びま
した。「前動続行」は先例や自分の経験をもとに主
観的に考えますから自然に組織も独善的になり、
「伝統墨守、唯我独尊」などと揶揄されたのです。
 
 また、海軍は、日本海海戦の大勝利という成功体
験から「対艦巨砲、艦隊決戦」の考え方を絶対視し
て航空機の発達など新しい戦い方に後れを取りまし
た。この考え方に基づいて参謀虎の巻の『海戦要務
令』が作られました。単なる前動続行ではなくドク
トリンとして徹底されたところが悲劇的でした。
 
▼精神至上主義と情報の軽視

 秋山真之中佐が起案した『連合艦隊解散の辞』
は、「勝って兜の緒を締めよ」の結びの文句で有名
です。しかし、時の山本権兵衛海相は「戦争は精密
な数字上の作戦に基づくべきで、精神力のみで勝て
るという印象を与えてはいけない」と秋山の「美
文」を喜ばなかったといいます。事実、この『解散
の辞』は一人歩きを始め、海軍の軍人思想に影響し、
精神至上主義の一員になったといわれています。
 
 情報の軽視も大きな欠点でした。これは事大主
義、自信過剰の海軍エリートの常でした。「なんだ
あいつの言うことか」と軽視したのです。このこと
は、作戦においては希望的観測に傾き、ミッドウェ
ー海戦では「敵は出てこないだろう」と油断して、
海戦史に残る大敗を喫したのでした。
 
▼スタッフ組織の欠陥

 スタッフ組織の欠陥もありました。司令部で最も
重要なのは大佐クラスで、少将の参謀長はチェック
役、中将の長官はだいたい「ウン」と頷いて採用し
ます。「長老制司令部」です。もう1つのタイプは、
司令部内の微妙な人間関係や力量によって力関係が
決まる「人間関係司令部」です。山本五十六率いる
連合艦隊司令部がこのタイプで、山本長官の信頼厚
い黒島先任参謀が中心で、参謀長などは浮いていま
した。大戦争を指揮する司令部として大きな欠陥を
抱えていたのです。
 
▼フィードバックの欠如

 このような欠点に加えて、決定的だったのは失敗
した作戦のフィードバックが行われなかったことで
す。さらに、作戦指揮に失敗した指揮官に対して、
山本長官は「下手なところがあったら、もう一度使
え。かならず立派に成し遂げるだろう」として、不
問に付したのです。太平洋戦争の日本軍の戦術を研
究した英米の戦術家に共通した驚きは、4年近くも
戦闘を経験しながら、変革のあとが見られなかった
ことだといいます。

 次回は、この海軍の「社風」を克服する意思決定
の仕組みをどうやって作るかについてお話します。



(つづく)


(どうした・てつろう)


□次回以降のテーマ

第2回 意思決定の仕組みを作る
第3回 チームを作る
第4回 リーダーの資質と個性
第5回 リーダーの役割
第6回 戦うリーダーに求められるもの(最終回)



●著者略歴
 
堂下哲郎(どうした てつろう)
1982年防衛大学校卒業。米ジョージタウン大学公共
政策論修士、防衛研究所一般課程修了。海上勤務と
して、護衛艦はるゆき艦長、第8護衛隊司令、護衛
艦隊司令部幕僚長、第3護衛隊群司令等。陸上勤務
として、内閣官房内閣危機管理室(初代自衛官)、
米中央軍司令部先任連絡官(初代)、統幕防衛課長
(初代)、幹部候補生学校長、防衛監察本部監察官、
自衛艦隊司令部幕僚長、舞鶴地方総監、横須賀地方
総監等を経て2016年退官(海将)。


 
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