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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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おはようございます。エンリケです。
菅原さんの最新刊
『米国とイランはなぜ戦うのか?』が出ました。
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●なぜ米とイランは激しく対立するのか?
●米とイランの争いの歴史
を振り返り、
●トランプ政権の対イラン戦略と、それに対する
イランの抵抗戦略
を丹念に分析して、
今そこにある危機
の実相を解説した本です。
おススメの一冊です。
200202、派遣情報収集活動水上部隊が、現地に出立
しました。その状況を、より正確に把握するために
も、他の人と一味違う中東眼を身につけたい人は、
ぜひご一読ください。
『米国とイランはなぜ戦うのか?』
菅原出(著)
並木書房
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昨年9月の
<世界最大規模の石油施設と首都リヤド東方のクラ
イス油田が、無人機などによる攻撃を受け、サウジ
の石油生産能力の半分が一時的に停止した>
事件は衝撃的でした。
きょうは、そのことに触れられています。
世の中は、見えるものと見えないものから成ってい
ます。いまや狭くなった世界の事情もそうですね。
本連載を読んでいるとよくわかります。
エンリケ
ご意見ご質問はこちらから
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●短期連載 米国とイランはなぜ戦うのか?(6)
サウジ石油産業の心臓部を狙った前代未聞の攻撃
菅原出(国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント)
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□はじめに
3月3日、国際原子力機関(IAEA)は、イランの
低濃縮ウラン貯蔵量が2月19日の時点で1020キロに
なったとする報告書をまとめた。核合意が規定する
量(202キロ)を大幅に上回り、昨年11月の時点の
372キロから3倍近くまで急増したことが明らかに
なった(『共同通信』)。濃縮度は最大でも4.5%
と低レベルのままだが、濃縮ウランの貯蔵量がすで
に1トンを超えたというのは、米国やイスラエルを
ナーバスにさせるニュースであろう。
「1トン」という数字は、もしイランがウランの
濃縮度を兵器級まで高めていくとすると核爆弾1個
が作れてしまう量であり、この量の低濃縮ウランの
貯蔵をイランにさせないことが、核合意の当初の狙
いでもあった。
イランは現状では4.5%以上のウラン濃縮は行なっ
ていないが、もし20%のウラン濃縮に踏み切り、さ
らに90%まで濃縮度を高める決定を下すとすれば4
か月程度で兵器級の濃縮ウランが製造可能だとされ
ている。もしそうなれば緊張が一気に高まることは
避けられない。
2月6日に発売された拙著『米国とイランはなぜ
戦うのか?』(*)では、“トランプ政権がもはや取
り返しのつかないところまでイランを追い込み、イ
ランが生存をかけた危険な勝負に出ている”という
現在の危機の構図と背景を解説させていただいた。
本連載では、同書からそのエッセンスを読者の皆様
にお伝えさせていただいているが、連載第6回目は、
2019年後半にイランが仕掛けた抵抗作戦の一つであ
るサウジ石油産業への攻撃を振り返ってみたい。
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▼サウジ石油産業の心臓部を狙った前代未聞の攻撃
前号で触れたように、2019年6月にトランプ大統領
は、米軍の無人機が撃墜されたことに対する報復と
してイランを空爆すべきとする閣僚たちに押され一
度は攻撃を承認したものの、直前に攻撃命令を撤回
していた。米・イラン間の緊張が戦争直前まで高ま
ったことを受けて、この後、両国間の緊張を緩和さ
せ対話を促す動きが加速した。米・イラン対話に向
けて外交を活発化させたのはフランスだった。
7月以降、仲介外交を本格化させたフランスのマ
クロン大統領は、8月26日までフランスで開催された
G7サミットの場で、トランプ大統領に米イラン首
脳会談を呼びかけ、トランプ大統領も「環境が整え
ばロウハニ大統領と会談してもよい」と発言したこ
とから、米・イラン首脳会談の可能性に対する期待
が一気に高まった。
マクロン大統領はイランのザリフ外相をサミット
の場に招いて個別に会談するなど、米イラン間の緊
張緩和に向けて積極的に動いた。マクロンは、イラ
ンに対する一定の原油輸出を認め、その代わりにイ
ランに核合意を順守させることをトランプ大統領に
説得したようだった。フランスは、イランが少なく
とも日量70万バレルの原油を輸出できるようにする
ことや、150億ドルという巨額の融資を柱とした金
融支援を提案したという。
トランプ大統領はサミット後の記者会見でも、イ
ランが米制裁で被った損害について、数か国が信用
供与などの形で補?する案を検討したことを認めてお
り、対イラン制裁の事実上の緩和を容認するかのよ
うな発言を行なった。トランプ政権はまた、ニュー
ヨークで開催される国連総会に合わせ、トランプ大
統領とロウハニ大統領による初の首脳会談開催を正
式にイランに打診し、9月25日を軸に調整したい考え
も明らかにした。この時トランプ大統領は、周囲が
困惑するほど、イランに対する柔軟な姿勢を見せた
のだった。
しかし、トランプ政権はこの間、イランに対する
制裁を緩和させるどころか、次から次に新たな制裁
を打ち出した。イランとの首脳会談には反対しない
が、制裁は解除しないというのがトランプ大統領の
基本的なスタイルだった。フランスが提案した「15
0億ドル金融支援」策も、結局は米国が制裁緩和を
容認しない限り先には進まない。トランプ米大統領
は9月5日、マクロン大統領に対し、イランに対する
制裁を「現時点では解除しない」考えを伝えた。
イランは「制裁解除なしに米国との交渉はない」
と繰り返し主張していたので、フランスの提案した
救済案の実現性に見切りをつけて、再び強硬策をと
ってくる可能性が高かった。が、その直後に起きた
事件は、関係者の予想をはるかに超える大胆なもの
だった。9月14日、サウジアラビア東部アブカイク
にある国営石油会社サウジアラムコの世界最大規模
の石油施設と首都リヤド東方のクライス油田が、無
人機などによる攻撃を受け、サウジの石油生産能力
の半分が一時的に停止したのである。
イエメンの親イラン武装組織フーシー派が犯行声
明を出したが、18日、サウジアラビア国防省は、攻
撃に使用されたイラン製の無人機や巡航ミサイルの
残骸を展示し、合計18機の無人機と7発の巡航ミサ
イルによる攻撃だったことを公表した。
またサウジ政府は「無人機やミサイルは北方のイ
ラクやイランの方から飛来しており、イエメンの方
角である南からではない」と述べてフーシー派の主
張を否定。この攻撃は「疑いようもなくイランに支
援されたものだ」と述べた。状況証拠やこれまでの
イランの米国に対する「抵抗戦略」の文脈から考え
ても、イランが関与したと考えるのが妥当だ。
イランは、敵対する米国との戦争の危機を高め、
サウジの石油施設を破壊して世界経済を脅かすこと
で、「それが嫌ならばイランに対する経済制裁を緩
和しろ」と迫り、「戦争か制裁緩和か」の究極の選
択を米国や他の関係国に突きつけたのであろう。し
かも今回イランは、恐ろしく大胆な方法でサウジア
ラビア石油産業の心臓部を狙ってきた。これまでサ
ウジアラビアが米国から莫大な金額を費やして購入
した各種の高価な防衛システムの監視網をかいくぐ
り、サウジでもっとも重要な石油施設を正確に破壊
し、同国の石油生産の半分を、一時的とはいえスト
ップさせたのである。
このイランによる前代未聞の攻撃を受けたサウジ
アラビアは、表面的にはイランを非難しつつ、軍事
衝突を回避するため、緊張緩和を狙った外交を展開
した。しかし、ちょうどその頃からイランやその同
盟勢力の国々では、体制を脅かすような大規模な抗
議行動や暴動が激化するようになり、イランは米国
やサウジアラビアの強く疑った。次回は、昨年後半
から末にかけてイラクやイランで激化した反政府デ
モの広がりとイランの対応をみていきたい。
(つづく)
(すがわら・いずる)
●著者略歴
菅原 出(すがわら・いずる)
国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント
1969年生まれ、東京都出身。中央大学法学部政治学
科卒業後、オランダ・アムステルダム大学に留学、
国際関係学修士課程卒。東京財団リサーチフェロー、
英危機管理会社役員などを経て現職。合同会社グロ
ーバルリスク・アドバイザリー代表、NPO法人「海
外安全・危機管理の会(OSCMA)」代表理事も務め
る。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争
詐欺師』(講談社)、『秘密戦争の司令官オバマ』
(並木書房)、『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』
(講談社現代新書)などがある。
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