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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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得難い本です。
●発売されたばかりの月刊『軍事研究』(2020
年3月号)で、「国産製品が割高・低性能の誤解を
解く!『日本が弾薬を国産する理由』」という市川
さんの記事が掲載されました。不良弾や欠品が許さ
れない国内事情、継戦能力の確保だけではない弾薬
を国産する理由が解説されています。
ご一読をおススメします。
『軍事研究』
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「防衛予算から読み解く日本の防衛力」第二部の
五回目です。
戦役に決をつける陸上戦力のわが国における
実態に接し、寒気を覚える方も多いのでは?
砲兵火力の減衰は陸上作戦に重大な悪影響をもたらす。
これって、素人でもわかる、至極当たり前の感覚と
思うのですが、我が国にはそうじゃない方々が多い
ようですね。
防衛公債を発行してでも予算減に対応しないと、
国家国民の不安が増すばかりでは?
軍を政治的に利用している限り、
国家国民の不安は解消されません。
そう私は感じます。
さっそくどうぞ
エンリケ
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(26)
第2部 危機的状況にある日本の安全保障体制(5)
陸自始まって以来の大改革─9コ師団、6コ旅団体制
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
清朝末期の政治家である曽国藩の名言として有名
なのが「四耐四不訣」です。事を成すために耐える
べき4つの事、してはいけない事4つを述べた戒めの
言葉です。この前半の4つ
耐冷(冷に耐え─周囲の冷たさに耐え)
耐苦(苦に耐え─苦しさに耐え)
耐煩(煩に耐え─わずらわしさに耐え)
耐閑(閑に耐え─閑職に追われても(暇なことに)
耐え)
は、非常に奥深い言葉です。特に、耐煩と耐閑につ
いては、一般の啓蒙書ではあまり見ることがありま
せん。
そして、今の日本人に欠けているのが「耐閑」で
あると思われます。日本人は勤勉勤労で「何か」を
していないと落ち着かない人種ですが、ネット社会
になってからは、この「何か」が勉強や仕事、人の
役に立つことに向かわずに、他人に迷惑をかける方
向に向かうことが多くなっています。
耐閑と対をなす名言に「小人閑居して不善をなす」
があります。(中国の古典『大学』より)「ダメな
人、レベルの低い人は、暇を持て余すと悪いことを
するようになる」ということですが、「仕事を辞め
て暇になった人がギャンブルにはまって財産を失う」
というような場合に使います。
街で見かける人たちは年配の方を除き、ほとんど
の人がスマホを見ています。満員電車の中でもスマ
ホを見ている人がいます。時間があればメール交換
をしている人がいます。SNSを通じてデマを流し、
匿名で無責任かつ辛辣な書き込みをする人が大勢い
ます。
ネット社会では、簡単に自分の意見を発信できま
す。文章を書くのが苦手な人も自分の意見を発信で
き、才能がありながら日が当たらなかった人にもチ
ャンスが与えられるよい時代ともいえますが、小人
が閑居すると便利なツールも凶器として使われるよ
うになります。最低限、匿名で情報や意見が書き込
まれるシステムは改善すべきです。
また、危機管理、安全保障の観点からも、サイバー
攻撃対処と同レベルで対策を講じる必要があります。
SNSに精通した組織的なグループであれば、SN
Sを活用して国全体をパニック状態に陥れることは
簡単にできます。
▼「基盤的防衛力構想」から脱却した22大綱までの
2回の大綱見直し(07大綱)
22大綱の策定で「基盤的防衛力構想」は大綱から
削除されましたが、22大綱までにも安全保障環境の
変化により2回の大綱見直しが行なわれています。
特に、16大綱においては、「基盤的防衛力構想」か
ら脱却しようとする意思が垣間見えます。
1回目の改定における07大綱では、「大綱策定後
約20年が経過し、冷戦の終結等により米ソ両国を
中心とした東西間の軍事的対峙の構造が消滅するな
ど国際情勢が大きく変化するとともに、主たる任務
である我が国の防衛に加え、大規模な災害等への対
応、国際平和協力業務の実施等より安定した安全保
障環境の構築への貢献という分野においても、自衛
隊の役割に対する期待が高まってきている」との認
識のもと防衛力の役割を幅広く捉え、「我が国の防
衛」、「大規模災害等各種の事態への対応」、「よ
り安定した安全保障環境の構築への貢献」の三つを
規定しました。
大綱の本文を読む限り、07大綱で最も大きく変わ
ったのが防衛力の役割ですが、本連載の当初で説明
したとおり大綱で重要なのは必要な防衛力を表す
「キーワード」と具体的な防衛力を示す「別表」で
す。この二つをきちんと捉えると07大綱での変化が
明確になります。
まずは、キーワードとなる「基盤的防衛力構想」は
変わっていません。つまり、予算ありきの防衛力、
GDP1%以内の防衛予算です。大きく変わったのは、
別表で示された陸自の定員削減と戦車、火砲の数量
の規定(削減)です。本文では明記されていません
が、陸上防衛力の削減が行なわれています。
定員削減と戦車、火砲の削減は、予算ありきの防衛
力に納めるための陸上防衛力削減の意味もあります
が、定員の削減には別の意味も含まれます。実員=
定員を追求し、部隊としての実効性を高めるととも
に、訓練の効果を上げるという目的です。このため
に行なわれたのが、定員を18万人から16万人として、
定員16万人の部隊を常備自衛官14万5千人と即応予備
自衛官1万5千で構成したことです。
07大綱までは、陸自の定員は18万人でした。ところ
が実員は16万人を越えることなく15万5千人前後で
推移してきました。充足率は、86%です。18回目の
「自衛官の定員と実員」で説明しましたが、全体の
充足率が低くても上級司令部等の恒常的に業務を持
つ部署は100%の人員充足が必要です。全体の充足が
86%であれば、末端の部隊の充足は70%を切ります。
70%の充足とは、「30%が戦闘で損耗したら戦闘継
続が困難な状態となる」とされる状態です。つまり、
当時の陸上自衛隊は、平素の態勢では戦闘困難な組
織であった訳です。
これが、普段の訓練となると、入校者や駐屯地の維
持管理のための人員が部隊から抜けるため、場合に
よっては定員の半分程度の実員しか参加できないこ
とになります。これでは、まともな訓練などできま
せん。そんな中でも、現場部隊で工夫を重ねて、や
りくりしてきました。しかし、安全保障環境の変化
に伴い防衛力の役割が多様化し、即戦力と即応性が
求められ、常時低充足という態勢も限界を迎えるこ
とになります。
そこで、大鉈を振るった陸自の大改革です。現在、
陸自始まって以来の大改革として、陸上総隊の創設
や師団、旅団の改変をはじめ大きな改革が進行中で
すが、陸自の最も大きな結節は07大綱での改革でし
ょう。定員の大幅な削減、機能別師団、旅団の創設、
即応予備自衛官の導入等、数十年間、ほとんど変化
のなかった陸自が大きく変わったのです。
定員を16万人にしたことで、部隊編成も13コ師団、
2コ混成団の体制から、9コ師団、6コ旅団体制へと
大きく変わりました。4つの師団を旅団へと縮小し
たわけです。普通科連隊は、名前はそのまま残りま
したが規模は大隊規模へ、特科連隊も大隊規模の特
科隊へ、戦車、高射特科、施設、通信の各大隊は中
隊へと、部隊の規模としては一回り小さくなりまし
た。
「基盤的防衛力構想」のもとで防衛予算が変わらな
いなか、部隊規模の縮小は定員と実員を一致させる
ためにやむを得ない処置です。部隊の縮小に伴い、
装備品も削減できます。象徴的なのが戦車と火砲の
削減です。51大綱には陸自に関しては装備品の数は
規定されていませんが、戦車1,200両、火砲1,200門
の態勢でした。それが、07大綱において900両、900
門に削減されたのです。
07大綱での戦車、火砲の数量の規定に始まり、大綱
が改定される度に戦車、火砲は削減されています。
30大綱では戦車300両、火砲300門です。なんと、
1/4にまで削減されてしまいました。陸上戦闘にお
いては、火力の優越が戦勝を支配します。いくら、
情報戦に勝利し、優れた作戦計画があろうと、最終
的に戦闘の勝敗を決するのは火力です。そして、火
力の実体とは、まさに戦車と火砲です。
装備品の性能は毎年向上していますが、それは各国
とも同じです。「1,200両、門」態勢時の日本の戦
車や火砲の性能が、「300両、門」態勢の現在は向
上しているように、各国の兵器の性能も向上してい
ます。日本周辺国は、日本のように戦車、火砲を大
幅に削減しているわけではありません。相対的に見
るなら、日本の陸上戦力は大幅に後退しているので
す。これも、予算ありきに囚われた日本の防衛力整
備が生んだ危うい日本の安全保障体制の実体です。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
市川さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
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ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
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心から感謝しています。ありがとうございました。
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