配信日時 2020/03/05 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (268)】  ― 日本に初めてオスプレイが配備されたとき(2)―

こんにちは、エンリケです。


「日本に初めてオスプレイが配備されたとき」
のニ回目です。

冷静で事実に基づく「しっかりした基盤」を持つ情報。

すべてのものごとに通じる知的基盤です。

ここが汚染されると、
判断や決断、決心に重大な悪影響を及ぼします。

何かを判断するにあたって、
情報の集め方を間違うと
トンデモ結論に導かれるということです。

きょうの記事は、
しっかりした基盤を持つ情報のお手本です。

さっそくどうぞ

エンリケ



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『ライター・渡邉陽子のコラム (268)
 ―日本に初めてオスプレイが配備されたとき(2)―

         渡邉陽子
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こんばんは。渡邉陽子です。
新型コロナウイルスを「自分とは関係ない」と思っている方はそう
そういないでしょうが、私も罹患せずともその影響を受けています。
プライベートの約束が延期になるのはまだいいのです。参加を予定
していた行事が中止になるのもやむをえません。けれど今週は予定
されていた取材が2本、中止になりました。舞台出演者への取材だ
ったのですが、その舞台そのものが上演中止になったからです。稽
古を重ねてきた出演者の方もお気の毒ですが、私の懐も取材2本分
寂しくなったということで、これがいつまでも続くとちょっと笑え
ない状況になります。オリンピックも心配です。日本以外の国での
広がりも気になります。


■日本に初めてオスプレイが配備されたとき(2)

「オスプレイ反対」は2012年11月に沖縄に配備されてからも連日叫
ばれました。
理由の筆頭は「事故の多い危険な航空機だから」です。
2012年に入って2件の墜落事故を起こしていること、それらの事故
原因が日米共に「人為的ミス」という結論に至ったことも、機体
の不備を隠しているのではという疑念を抱かせました。回転翼機が
備えているオートローテーション機能に欠陥があるとの指摘もあり
ました。

次は「返還される普天間に新機種が配備されるのはおかしい」とい
う声。
普天間を返還するつもりがないのではという疑念につながっている
ほか、2012年10月に起きた海軍米兵2名による女子暴行事件のよう
な犯罪が、地元住民の反米感情を悪化させました。
今回はほんのわずかの差でまだ那覇に滞在していた米兵を逮捕する
ことができましたが、もしもすでに目的地であるグアムに向けて出
発した後だったら、日米地位協定が捜査を阻んだ可能性は否定でき
ません。それは過去の沖縄で起きた米軍、米兵による事故や事件が
証明しています。2004年に起きた沖縄国際大学へのヘリコプター墜
落事故の際も、日米地位協定の壁に阻まれ日本の警察は捜査できま
せんでした。危険なオスプレイが墜落しても地元は泣き寝入りする
だけではないか、そういう不安があるのは無理もないでしょう。現
地では大規模な反対集会も催され、その様子は大々的に報じられま
した。

では、それらの反対意見が理にかなったものであるのか考えてみま
す。
まず「オスプレイは危険」という意見についてですが、開発試験中
から2012年時点までの事故はすべて公開されています(現在はさら
に最新版が公開されています)。
なかでも米海兵隊は、10万飛行時間当たりのクラスA(政府への被
害総額が200万ドル以上または死亡等を引き起こした事故等)飛行
事故の件数を事故率としてカウント。
その結果、事故率は2012年4月現在で1・93(モロッコでの事故を含
む)であり、海兵隊の平均2・45より低い数値です。
この事故率に
・政府への被害総額が510万ドル以上200万ドル未満または負傷等が
恒久的な部分的障害をもたらした事故等のクラスB
・政府への被害総額が5万ドル以上510万ドル未満または1日以上の
欠勤をもたらす負傷等を引き起こした事故等のクラスC
が反映されていないのは、事故率を下げるためではという声もあり
ます。
しかしクラスB、Cの事故は整備士が整備中に作業台から転落して
負傷する、立て掛けていた梯子が外れて損傷など、整備中や駐機中
の事故が多く、基地周辺住民に被害が及ぶとは考えにくいものです。
また、空軍が使用しているCV-22の事故率を合算して算出すべきと
いう指摘もありましたが、空軍のオスプレイは特殊作戦群で運用さ
れているため、運用形態が大きく異なるCV-22を合算しては、かえ
って本来のMV-22の事故率が不明瞭となってしまいます。
モロッコ(2012年4月に墜落、乗員2名が死亡)の事故についても、
反対派は日本独自の調査をせずに米側の言い分を聞いただけだと非
難しています。
防衛省は7月に2件の事故調査結果を独自に分析するため分析評価チ
ームを設置。8月に渡米して国防総省の事故調査関係者から説明を
受けるなどして、事故原因を米側と同じ人為的ミスと判断した経緯
があります。
オートローテーションについては、過去10万飛行時間以上において
エンジン出力の停止が原因となって緊急着陸が必要な状況になった
事例はないこと、垂直離着陸モードは飛行全体の5%程度であるこ
となどから、オスプレイがオートローテーションを求められる場面
はほとんど想定されないというのが日本政府の出した結論です。
ただしオートローテーション機能自体は保持しており、その訓練は
シミュレーターによって行なわれること、また、オスプレイのオー
トローテーション中の降下率が一般の回転翼機に比べて高いことな
ども公表しています。
これらを踏まえると、「他機種に比べて事故が多く危険」を理由に
反対を唱えるのは、事実に反するので説得力に欠けるということに
なります。



(つづく)


(わたなべ・ようこ)


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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。

 
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