配信日時 2020/02/25 08:00

【短期連載 米国とイランはなぜ戦うのか?(4)】「脅し」には「脅し」での対抗を始めたイラン革命防衛隊  菅原出(国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント)

────────────────────
ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp
────────────────────
おはようございます。エンリケです。

菅原さんの最新刊
『米国とイランはなぜ戦うのか?』が出ました。
 https://amzn.to/38gTD3h

●なぜ米とイランは激しく対立するのか?
●米とイランの争いの歴史

を振り返り、

●トランプ政権の対イラン戦略と、それに対する
イランの抵抗戦略

を丹念に分析して、

今そこにある危機

の実相を解説した本です。

おススメの一冊です。

200202、派遣情報収集活動水上部隊が、現地に出立
しました。その状況を、より正確に把握するために
も、他の人と一味違う中東眼を身につけたい人は、
ぜひご一読ください。

『米国とイランはなぜ戦うのか?』
 菅原出(著)
 並木書房
 https://amzn.to/38gTD3h


エンリケ


ご意見ご質問はこちらから
https://okigunnji.com/url/7/


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●短期連載  米国とイランはなぜ戦うのか?(4)

「脅し」には「脅し」での対抗を始めたイラン革命防衛隊

菅原出(国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

□はじめに

2月21日に行なわれたイラン国会議員選挙では、反
米路線を支持する保守強硬派が7割以上の議席を獲
得する見通しになったと、伝えられている。

今回の選挙では、改革派や保守穏健派の立候補希望
者の多くが失格扱いとなっていたため、国際協調路
線を支持する有権者は、そもそも投票に行かなかっ
た可能性が高い。実際投票率は史上最低の42.5%に
とどまったという。

立法権のほか閣僚の罷免権や予算案の審議権を持つ
国会を反米保守強硬派が牛耳るようになれば、ロウ
ハニ大統領やザリフ外相のような保守穏健派が国際
協調路線をとるのはますます困難になることが予想
されている。米国の対イラン圧力政策に対して、今
後イランが再び抵抗作戦を激化させてくる可能性は
十分にある。

2月6日に発売された拙著『米国とイランはなぜ戦
うのか?』では、“トランプ政権がもはや取り返し
のつかないところまでイランを追い込み、イランが
生存をかけた危険な勝負に出ている”という現在の
危機の構図と背景を解説させていただいた。本連載
では、同書からそのエッセンスを読者の皆様にお伝
えさせていただいているが、連載第4回目は、トラ
ンプ政権の強硬策を受けたイラン側の対応策を振り
返ってみたい。


『米国とイランはなぜ戦うのか?』
 菅原出(著)
 並木書房
 https://amzn.to/38gTD3h


▼欧州諸国と組んで米国の孤立を狙ったイランのロ
ウハニ政権

オバマの“レガシー”である核合意から離脱したト
ランプ政権は、イランに対する経済制裁を復活させ
てイランに前例のない圧力をかけ始めたが、イラン
は当初、外交的に米国の圧力をかわすべく、欧州諸
国と協調して米国を孤立させる外交を展開した。

イラン核合意(JCPOA)は多国間の国際的な合意であ
り、国連安全保障理事会の決議2231に裏付けられた
ものだった。そこでイランは当初、米国の核合意違
反、国連安保理決議違反を国際社会として認めるこ
とのないように強く訴える外交を行なった。

要するに、“イランは核合意に従い義務を果たして
きた。悪いのは米国なのだから、米国の暴挙からイ
ランと核合意を守るために努力して欲しい。それが
合意当事国としての義務である”と主張して、欧州
の核合意当事国である英仏独や中国、ロシアの5か
国に対して、合意によってイランが得られるはずの
メリットが、米国の離脱によってなくなることのな
いように補償することを要求したのである。

具体的には、米国の経済制裁にもかかわらず、核合
意後に欧州をはじめとする世界中の企業がイランと
再開させたビジネスを継続できるようにする仕組み
を早急に立ち上げることを求めたのだった。

これに対して欧州諸国は、政府レベルでは、核合意
から一方的に離脱したトランプ政権に批判的な姿勢
が強く、イランの要望に可能な限り応えることで、
核合意を維持していこうという政策をとっていた。

実際2018年夏ごろは、制裁を乱発し国際的な合意を
無視し、同盟国を軽視するトランプ政権の姿勢に、
欧州諸国から強い不満と反発が噴出しており、ドル
を離れた決裁システムの整備など「対米自立」を求
める声がドイツを中心に強まり、米欧同盟の亀裂が
伝えられるようになっていた。

しかし、こうした欧州諸国の政府の姿勢とは異なり、
民間企業レベルでは、米国からの制裁リスクを回避
しようとする動きが一気に広がり、同年8月を前に
して、大手欧州企業がイラン・ビジネスから撤退す
る動きが相次いだ。

米国政府の経済制裁の対象になるというリスクは、
民間企業が負えるようなものではなく、欧州やアジ
アの主要な企業は次々にイラン市場から撤退もしく
は事業を縮小してしまったのだった。結局のところ、
誰も米国による「不当な制裁」からイランを守って
くれないことが徐々に明らかになっていくなかで、
イランの不満は募っていった。

▼「脅し」には「脅し」での対抗を始めた革命防衛隊

そしてイラン国内においては、革命防衛隊のような
反米・保守強硬派の不満を抑えきれなくなり、「戦
略的忍耐」を訴えてきたロウハニ政権に対する批判
が強まっていった。

ちょうどこの頃から、イランが支援しているイエメ
ン・フーシー派によるサウジ国内へのミサイル攻撃
やドローンを使った攻撃、さらに石油タンカーを狙
ったような攻撃が少しずつ発生するようになってい
た。

また、2018年9月にはイラクにある米国大使館や領
事館近くにロケット弾が着弾する攻撃が発生するよ
うになり、米政府はこうした攻撃の背後にイランが
いるとして警戒を強めた。

トランプ政権は、2018年5月にイラン核合意からの
離脱を宣言して以来、イランに史上最強の圧力を加
えるべく精力的に動き出したが、これに対してイラ
ンのとりわけ革命防衛隊は、「脅し」には「脅し」
で、「経済制裁による痛み」に対しては「間接的な
攻撃」で報復する方針を、同年夏頃から固めていた
ようである。

少なくともすでにそうした「抵抗」の兆候は、2018
年夏ごろから徐々に表れるようになっていたのであ
る。

しかし、トランプ政権はさらにイランに対する圧力
を強め、原油の全面禁輸に踏み切り、イランをギリ
ギリまで追い込んでいく。次回は、2019年に入って
さらに加速するトランプ政権の対イラン圧力キャン
ペーンをみていきたい。



(つづく)



(すがわら・いずる)






●著者略歴
 
 菅原 出(すがわら・いずる)
国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント
1969年生まれ、東京都出身。中央大学法学部政治学
科卒業後、オランダ・アムステルダム大学に留学、
国際関係学修士課程卒。東京財団リサーチフェロー、
英危機管理会社役員などを経て現職。合同会社グロ
ーバルリスク・アドバイザリー代表、NPO法人「海
外安全・危機管理の会(OSCMA)」代表理事も務め
る。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争
詐欺師』(講談社)、『秘密戦争の司令官オバマ』
(並木書房)、『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』
(講談社現代新書)などがある。
 

 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
 

PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス(携帯サイトを含む)で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。


最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。

-----------------------------------------
メールマガジン「軍事情報」
発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)

メインサイト:
https://okigunnji.com/

問い合わせはこちら:
https://okigunnji.com/url/7/

メールアドレス:
okirakumagmag■■gmail.com(■■を@に置
き換えてください)
------------------------------------------
 


配信停止はコチラから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
 
----------------------------------
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権はメー
ルマガジン「軍事情報」発行人に帰属し
ます。

Copyright (C) 2000-2020 GUNJIJOHO All rights reserved.