配信日時 2020/02/18 08:00

【短期連載 米国とイランはなぜ戦うのか?(3)】トランプは核合意から離脱し、イランとの本格的な対立へ  菅原出(国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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●なぜ米とイランは激しく対立するのか?
●米とイランの争いの歴史

を振り返り、

●トランプ政権の対イラン戦略と、それに対する
イランの抵抗戦略

を丹念に分析して、

今そこにある危機

の実相を解説した本です。

今の中東方面の動きをとらえるにあたって
欠かすことのできないおススメの一冊です。

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部隊の活動を、より正確に理解把握する補助線と
して参考になる一冊です。

この短期連載とともに、
ぜひご一読ください。

『米国とイランはなぜ戦うのか?』
 菅原出(著)
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●短期連載  米国とイランはなぜ戦うのか?(3)

トランプは核合意から離脱し、イランとの本格的な対立へ

菅原出(国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント)

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□はじめに

米国とイランの緊張が全面戦争寸前まで高まり、両
国が戦争回避のための行動をとってから1か月以上
が経過。世界中で新型コロナウイルスの感染が話題
になっていることもあり中東関連の報道は少なく、
米・イラン関係は表面的には穏やかである。

しかし、両国の対立の構図に変化はなく、水面下で
は挑発や牽制が続いている。2月13日にイラク北部
のキルクーク近郊で米軍が駐留するイラク軍基地に
ロケット弾1発が着弾。16日にはイラクの首都バグダ
ッド中心部の米国大使館近くに複数のロケット弾が
撃ち込まれた。いずれも負傷者は確認されていない
が、相変わらず米軍に対する挑発と思われる事件が
続いている。

また、13日に中東を管轄する米中央軍は、アラビア
海を航行していたダウ船と呼ばれる小型の木造帆船
から、イラン製の150発の対戦車誘導ミサイルや地対
空ミサイル3発などの武器を押収したと発表している。
日本の海上自衛隊が派遣される海域では、米・イラ
ン間の緊張が継続し、気の抜けない状況が続いてい
ることが分かる。

米国の対イラン圧力政策は続き、イランの抵抗作戦
も続いている。2月6日に発売された拙著『米国と
イランはなぜ戦うのか?』(*)では、“トランプ政
権がもはや取り返しのつかないところまでイランを
追い込み、イランが生存をかけた危険な勝負に出て
いる”という現在の危機の構図と背景を解説させて
いただいた。本連載では、同書からそのエッセンス
を読者の皆様にお伝えさせていただいているが、連
載第3回目は、トランプ政権の対イラン政策を振り
返ってみたい。

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▼イランの周辺地域への拡大を抑え「巻き返し」を
はかるトランプ政権

ドナルド・トランプ氏が、オバマ前大統領の“レガ
シー”であるイラン核合意(JCPOA)を徹底的に批
判して大統領になったことはよく知られている。

トランプ大統領は2017年10月に対イラン戦略を発表
した際に、「これまで私が何度も述べてきた通り、
この核合意は、米国がかつて締結した合意の中でも
っとも酷く、もっとも一方的な取引の一つである。
(中略)核合意は、イランの独裁政権に政治的・経
済的な命綱を与えるものであり、制裁が生み出した
強烈な国内の圧力から体制が必要としていた緊急的
な救済策を提供するものだ」と述べて、この合意を
「酷い取引」だと酷評。

また核合意が、イランに対して一定の核開発の権利
を認めていることや、ウラン濃縮の制限なども一定
の期間に限定されていることなどの欠陥を次々に指
摘した。さらに、

「この核合意はもともと中東地域や国際的な平和と
安定に寄与することが期待されていたはずだが、米
国が合意を履行する一方でイランの体制は中東全域
において紛争に火をつけ、テロや騒擾に拍車をかけ
ている」

と述べて、核合意があるにもかかわらず、イランが
イラクやシリアやイエメン内戦への関与を強め、中
東地域への影響力を拡大させてきたことを問題視し
た。

こうした主張や核合意に対する批判は、トランプ大
統領独自のものではなく、イランの現体制を敵視す
るキリスト教福音派や新保守主義派(ネオコン)
の論客などがこれまでも繰り返し論じてきたものだ。
トランプ大統領はこうした自身の支持基盤の利益を
尊重し、オバマのレガシーをぶち壊すために、イラ
ンの核開発を封じ、イランの中東地域への影響力の
拡大を抑えて巻き返しをはかることを対イラン戦略
の柱に据えたのである。

▼対イラン強硬派の側近をつけて核合意から離脱し
たトランプ政権

そして2018年1月にトランプ大統領は、満を持して
「イラン核合意の問題点に関する修正がなされない
限り、合意を破棄する」と宣言。トランプ氏は、
(1)イラン国内の全関連施設の即時査察、(2)核
開発活動の制限の恒久化、(3)核開発と弾道ミサ
イル開発は不可分だとして制裁対象として明記する
こと、という3つの条件を提示して、「同年5月ま
でにこの条件をクリアする修正がなされない限り核
合意を破棄する」と述べて、他の合意当事国である
主に欧州諸国に対して事実上の「最後通告」を突き
つけた。

イランに対する強硬策に転じるにあたり、トランプ
大統領は、この強硬な対イラン戦略を推進するため
に外交・安全保障チームを刷新した。まず、これま
でオバマ前政権の対イラン政策の踏襲を進言し続け
てきたティラーソン国務長官を解任し、それまで米
中央情報局(CIA)の長官職を任せていたマイク・ポ
ンペオ氏を国務長官に任命した。

キリスト教福音派のポンペオ氏は、下院議員時代か
らイラン核合意には反対の立場を明確にしており、
イランに対する脅威認識はトランプ氏のそれとほぼ
同じである。

また、それ以上にイランに強硬な姿勢を持つジョン・
ボルトン氏を国家安全保障問題担当大統領補佐官に
任命した。ボルトン氏は、ワシントンにあるネオコ
ン系シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ
研究所(AEI)」のシニア・フェローや「新アメリカ
の世紀プロジェクト(PNAC)の役員、それにタカ派
のユダヤ系安全保障シンクタンク「国家安全保障問
題ユダヤ研究所(JINSA)」の顧問をつとめるなど、
ワシントンのネオコン系シンクタンクに幅広い人脈
とネットワークを有している。

ボルトン氏はまた、長年イランの現体制と敵対関係
にあるイラン亡命人ロビー組織「国民抵抗評議会
(NCRI)」やその軍事部門である「ムジャヒディン・
ハルク(MKO)」とも深い関係を維持してきた人物
である。

このような反イラン最強硬派ともいえるボルトン氏
を国家安全保障問題担当大統領補佐官に新たに加え、
トランプ政権は核合意から一方的に離脱し、イラン
との本格的な対立への道へと突き進んでいったので
ある。

こうしてトランプ大統領は予告通り2018年5月8日
にイラン核合意からの離脱を宣言。核合意から離脱
し、イラン制裁を再開し、イランに対して「最高レ
ベルの経済制裁を科す」と宣言した。そして「イラ
ンの核兵器獲得を支援する国も米国の強力な制裁を
受ける」と述べて、イランとの取引を望む国々にも
制裁をかける姿勢を示し、イランに対して前例のな
い強力な経済制裁を科し、事実上の経済戦争を開始
することを発表したのである。

オバマの“レガシー”である核合意から離脱したト
ランプ政権は、イランに対する経済制裁を復活させ
てイランに前例のない圧力をかけ始めるが、イラン
は当初、外交的に米国の圧力をかわすべく、欧州諸
国と協調して米国を孤立させる外交を展開する。

次回は、トランプ政権の圧力を受けたイラン側の対
応策をみていきたい。



(つづく)

(すがわら・いずる)






●著者略歴
 
 菅原 出(すがわら・いずる)
国際政治アナリスト・危機管理コンサルタント
1969年生まれ、東京都出身。中央大学法学部政治学
科卒業後、オランダ・アムステルダム大学に留学、
国際関係学修士課程卒。東京財団リサーチフェロー、
英危機管理会社役員などを経て現職。合同会社グロ
ーバルリスク・アドバイザリー代表、NPO法人「海
外安全・危機管理の会(OSCMA)」代表理事も務め
る。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争
詐欺師』(講談社)、『秘密戦争の司令官オバマ』
(並木書房)、『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』
(講談社現代新書)などがある。
 

 
 
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