配信日時 2020/02/10 20:00

【戦略航空偵察(2)】電子偵察機は何を偵察しているのか? 西山邦夫(元空将補)

こんにちは、エンリケです。

「戦略航空偵察」ニ回目です。

実にわかりやすいですね。

さっそくどうぞ


エンリケ



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戦略航空偵察(2)

電子偵察機は何を偵察しているのか?

西山邦夫(元空将補)
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□ご挨拶

第1回の配信を終わって少しほっとしています。最
近北朝鮮の核開発やミサイル発射実験で米国の偵察
機が頻繁に韓国上空や日本海を飛行していますので、
偵察機に対する関心が増しているのではないかと思
っていますが、皆さんはいかがでしょうか? この
件に関しては第3回目の配信で触れるつもりです。

最近は中国が日本海にまで偵察機を飛ばし始め、ロ
シアは依然として頻繁に本邦を偵察しています。偵
察機に対する皆様の関心が深まることを望んでいま
す。

前回は、現在自衛隊が運用している偵察機が持って
いる飛行能力について書きました。
今回は多少具体的なことに触れたいと思います。

▼どのような電波を集めるか?

偵察機を持ったからといってすぐに有効な電子情報
を収集できるわけではありません。対象国の近くを
飛行して多数の電波を受信できたとしても、それが
どのような機器から発射され、どんな目的で使われ
ているのか、精密なデータベースがなければ分かり
ません。現代では、民間の電波発射源が数多くあり
ます。それを仕分けし、脅威となる電波を集めるに
は高度のノウハウが必要です。

年月を経て、経験を積み、十分なデータの積み重ね
ができないと、実戦に使える情報とはなりません。
そして、そのデータは常に更新しておかなければな
りません。対象国はいつどのような新装備を開発し、
あるいは器材の改修改善をしているか分かりません。
艦艇、航空機が搭載する電波機器も改良・変更して
いる可能性は排除できませんし、地上の施設も同様
です。監視の目をゆるめてはならないのです。

2019年、韓国駆逐艦から海自のP-1哨戒機に電波が
発射されましたが、P-1はすぐに火器管制レーダー
だと判断しました。精密なデータベースが備わって
おり、使用可能になっていたからです。

同盟国、米国にしても、限られた数の自国の偵察機
を目いっぱい使って情報収集をやっていますが、満
足の行く収集態勢を築くことは難しいのが現状です。
情報はギブアンドテーク、自衛隊としても、米軍の
力を補完し、互いに助け合うことで、より良い収集
態勢を作れます。

▼飛行ルート

自衛隊の偵察機が偵察対象としていると想定される
国は、ロシア、北朝鮮、中国の3か国です。これら
の国は領空を12海里にしています。飛行は領空に侵
入しないよう、かつスクランブルして来る戦闘機と
の安全を考慮して、相手を刺激しないよう公海上で
適切な距離をとって飛行ルートを設定します。

米軍の場合は、領空から50海里(90km)程度離れて
飛行しているようです。自衛隊機の場合は、米軍よ
り余裕をもって、すなわち対象国の海岸からより離
れて飛行しているはずです。

最近はGPSを利用する航法が行なわれ、まず飛行ル
ートを外れることはありませんが、冷戦時代のU-2な
どは時々自分の位置を失う事例も出ていました。冷
戦時代、敵の領土に深く侵入し、航法を支援する電
波が届かない地域では天文、地文の航法が主役にな
ります。地表が雲に覆われていたら、さらに航法は
困難になります。

電波や慣性を利用した航法が確立してからも、樺太
で撃墜された大韓航空機のように航法ミスが発生し
ているのです。ミスをすれば、取り返しのつかない
結果をもたらしますから、慎重の上にも慎重に飛行
しなければなりません。

▼北朝鮮の無法

対象国を刺激しないよう慎重に飛行ルートを設定し
て飛行したとしても、想定外のことが起きます。
1969年、北朝鮮のMiG-21が米海軍のEC-121偵察機を
日本海で撃墜しました。撃墜地点は北朝鮮の清津か
ら160km沖の日本海(北緯41度28分00秒 東経131度
35分00秒)であり、明らかに公海上でした。北朝鮮
のように、場合によっては国際法などまったく気に
しない国は、このような無法なことを平然とやりま
すから、公海上を飛行しているといっても油断はで
きません。

1977年に、北朝鮮は「軍事境界水域」の存在を公表
しました。これは「領海の基線から50海里以内を軍
事境界線区域内とし、水上・水中・空中における外
国人・外国軍用艦船・外国軍用飛行機の行動を禁止
する」と規定しています。このような勝手な領域の
設定は国際法では認められません。


(つづく)


(にしやま・くにお)


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□著者略歴

西山邦夫(にしやま・くにお)
1936年生まれ。防衛大学校卒(4期・空)。
情報関係略歴:航空幕僚監部調査2課収集1班長、航
空総隊司令部情報課長、陸幕調査別室主任調整官、
航空自衛隊幹部学校主任教官。著書に『肥大化する
中国軍(空軍部分を執筆)』(晃洋書房、2012年)、
『中国をめぐる安全保障(空軍部分を執筆)』(ミ
ネルバ書房、2007年)。研究論文に『中国空軍の戦
力構成とドクトリン』『中国空軍のSu-30MKKとイン
ド空軍のSu-30MKI』『韓国空軍の増強と近代化』
『中露合同軍事演習』『中国の主要航空兵器の装備
化実績と将来予測』『中国空軍の戦力とドクトリン』
『チベットにおける中国の軍事態勢整備』など多数。


 
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