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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(20)
補正予算頼みの防衛予算(その2)
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
防衛予算の連載も今回で20回目となりましたが、
これまで考えていたことを実際に文章にしてみて、
書いている本人が、防衛予算の酷い状況に唖然とし
ているというのが正直なところです。数字を比較し、
考えを整理することで、今まで見えていなかったも
のも見えてきます。今回の連載で、改めて気付かさ
れたことも多々あります。
約25年前、初めて陸幕に勤務したときから防衛予
算は厳しいという話がされていましたが、今と比べ
ると余裕がありました。小泉内閣での聖域なき構造
改革で防衛費の右肩下がりが始まり、民主党政権で
の22大綱の策定で予算構造の歪みが激しくなり、今
の状況に至っています。22大綱での予算構造の歪み
に関しては、22回目からの連載で詳しく解説します。
防衛省の内局、陸・海・空幕はじめ、各司令部や
部隊の末端に至るまで、全体の予算の不足を知恵と
努力、忍耐によって補おうとします。防衛省本省、
上級司令部は、一部に歪みや負担が偏らないように
上手く分散させます。部隊では創意工夫と我慢、個
人負担でしのぎます。
こうして、負担や歪みは少しずつ大きくなってい
きますから、自衛隊全体が厳しい状況に適応してそ
れが普通と意識されるようになります。現場部隊で
話を聞くと、問題が山積みなのにもかかわらず、あ
まり深刻さが感じられないのは慣れがあるからでし
ょう。
本連載で示した予算構造だけ見ても、現場部隊に
負担や歪みを生じているのは明らかですが、政策レ
ベルでは説得力がありません。現場の実態、現状を
説明しなければ理解されません。自衛隊では「でき
ません」が「禁句」のような空気があるため、現場
の実態が上に伝わりにくい構造になっています。
海上保安庁も自衛隊と同様な状況が続き限界に達
したため、「できないこはできない」ということを
正直に政策レベルに伝え、大幅に予算が増額された
実績があります。自衛隊も海上保安庁を見習うべき
時が来ているのだと思います。
▼補正予算頼みの防衛予算(その2)
防衛省所管の補正予算のうち、「自衛隊の安定的
な運用態勢の確保」以外はほとんどが災害対策(対
応)のための予算です。30年度では678億円、27年
度では494億円、26年度では616億円の予算が編成さ
れています。なお、29年度、28年度に関しては「自
衛隊の安定的な運用態勢の確保」の中に災害対処の
ための装備品の予算が組み込まれています。令和元
年度補正予算(案)にも344億円の予算が編成され
ています。
この予算の中には、自衛隊が災害派遣で活動する
ために必要な燃料や資機材、その輸送費、隊員の派
遣手当等の経費のほか、災害派遣で使用した装備品
の更新や被災した自衛隊の施設等の復旧のための経
費も含まれています。これらの予算は、自衛隊が災
害派遣で活動するために当然必要な予算ですから、
補正予算だけ見ると何も問題はないように思われま
す。
ところが、災害派遣で使用される装輪車両や施設
器材、通信器材を取得するための本来の防衛予算を
見ると、非常に大きな問題が内在していることに気
付きます。問題となるのが、31年度予算パンフレッ
トの47ページの表の下から4番目の欄、陸自の車両、
通信器材、施設器材等を取得するための344億円の
予算です。
この予算は、31年度はやや取り戻したものの、26
年度から30年度まで540億円、340億円、310億円、
221億円、194億円と典型的な右肩下がりとなってい
ます。10年前の21年度予算では779億円、15年前の
16年度予算では694億円ですから、本来、必要な経
費は700億円前後ということになります。自分の経
験では、10年前の車両、通信器材、施設器材等の損
耗更新についても必ずしも十分ではなく、老朽化し
た装備品を我慢しながら使っていました。700億円
とは、部隊が活動するのに最低限の予算ということ
です。
つまり、最近の防衛予算では、車両、通信器材、
施設器材等を取得するために最低限必要な予算さえ
編成されていないということになります。本来の防
衛予算だけであれば、車両、通信器材、施設器材等
の損耗更新がほとんどできずに、車両等の可動率が
低下し、陸自の部隊は災害派遣の活動にも支障がで
る状態になっていたことでしょう。
この、最低限必要な経費の1/3~1/2しか編成され
ていない車両、通信器材、施設器材等を取得するた
めの予算を補ってきたのが、災害対応のための補正
予算です。30年度の災害対策(対応)関連補正予算
678億円のうち、345億円が車両、通信器材、施設器
材等の損耗更新用予算となっています。つまり、実
際に車両、通信器材、施設器材等を取得するための
予算は、30年度では防衛予算の194億円+345億円=
548億円となります。
令和元年度の災害対策(対応)関連補正予算は344
億円ですが、そのうちの車両、通信器材、施設器材
等の損耗更新用予算は、40億円しかありません。31
年度(令和元年度)防衛予算の344億円に足しても
384億円です。
この金額は、部隊が活動するのに必要な最低限の
予算の700億円に比較すると、30年度で78%、令和
元年度に至っては55%です。パンフレットで31年度
防衛予算の目玉とされている宇宙関連経費896億円、
サイバー関連経費223億円、弾道ミサイル防衛関連
経費3,550億円に比較して、なんと少ない金額でし
ょうか。
これらの予算は、部隊が通常の活動をするために最
低限必要なものです。装輪車両がなければ、部隊の
移動も物資の運搬もできません。当然、最新式の装
備品が揃っていても部隊と物資が動かなければ作戦
はできません。しかも、自衛隊としては余力の任務
である災害派遣ですらできません。
車両、通信器材、施設器材等は、稼動時間が多く劣
化も激しい装備品です。最低限の損耗更新に必要な
予算の50~80%の予算では、老朽化して稼動できな
い装備品が急速に増えていきます。しかも、この数
字は補正予算で補った数字です。補正予算が数年編
成されなければ、災害派遣にすら支障を来すという
ことを防衛予算が明確に物語っています。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
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「不思議で面白い陸戦兵器」(並木書房)
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