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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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きょうの
「防衛予算から読み解く日本の防衛力」は、
「補正予算頼みの防衛予算」がはじまります。
国家の幹といって差し支えない防衛予算が、
補正予算という名の「緊急ばんそうこう」なし
で機能しえない現実。
こういう現実を知ると、
防衛予算の数倍増は、現状を維持するためだ
けにも至極当然の話と分かるはずです。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(19)
補正予算頼みの防衛予算(その1)
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
米国のイラン空爆で先行き不安な幕開けとなった
1月6日の東京証券取引所での大発会(年始の取引)、
中東での全面戦争を懸念して株価は大幅安となりま
した。ほとんどの銘柄が値を下げる中で、ストップ
高の銘柄があります。(株価の値幅は制限がされて
おり、ストップ高とは価格上限で価格が止まってし
まうこと)豊和工業と細谷火工です。
これらの株は防衛株といわれており、紛争などが
起こると値上がりします。現状では、日本は海外に
武器を輸出していないため、海外で紛争があったか
らといって防衛関連企業の売り上げが上がるわけで
はありません。しかし、なぜか株価は上がります。
株価の変動は不確定予想が多く、IA株や5G株と
いわれる他の業種でも同様のことが起こります。会
社名や主要製品だけで判断されることがあるからで
す。
確かに株価の騰落は理由がわからないことが多く
ありますが、防衛株という確かな理由で海外紛争に
より株価が上昇するというのは、日本国内における
防衛産業に対する理解の低さがうかがえます。確か
なことはいえませんが、武器輸出規制の緩和により、
すでに日本が武器を輸出していると勘違いしている
人も多いのかもしれません。当然、豊和工業と細谷
火工が何を製造しているかを知って、1月6日に株を
買っている人はほとんどいないでしょう。
豊和工業は小銃などを製造しているため、もし日
本が武器を輸出しているなら紛争により売り上げが
上がる可能性はありますが、細谷火工は訓練で使用
される火工品といわれるものの製造がほとんどです。
紛争とは無関係です。当然、投資家(投機家)の知
識レベルの問題ではありますが、国内の防衛産業に
対する様々な誤解が根底にあると思われます。
▼補正予算頼みの防衛予算(その1)
この項目で年度予算の解説も最後となります。こ
こまでの説明を理解すれば、防衛予算については誰
とでも自信を持って議論できます。幹部自衛官でも
ここまでの内容を理解している人は少数です。当然、
マスコミや言論界も含め、一般の人であれば皆無に
近い状態だと思われます。
反対に、ここまでの知識がなくても防衛問題を語れ
るということでもありますが、予算を知らないと具
体的な議論にまでは踏み込めません。防衛問題に関
して、必要性しか議論されてこなかったのは防衛予
算に関する知識が不足していたことも大きな要因だ
と思われます。
年度予算パンフレットの最後のページに、「平成3
0年度2次補正予算案(防衛省所管)の概要」があ
ります。補正予算とは年度当初の予算では対応でき
ない事態が生じたときに、編成される予算です。最
もわかりやすいのが災害対応のための予算です。災
害は年度当初に予測できませんから、発災の後に復
旧、復興のための予算が編成されます。
また、リーマンショックのような日本全体に及ぼす
経済的な打撃を被った場合にも、景気対策のための
補正予算が編成されます。ここ数年は、毎年のよう
に大規模な災害が発生するため、災害対策のための
補正予算が毎年編成されています。この補正予算の
うち、パンフレットの最後のページで、防衛省にお
いて使用する3,998億円の説明がされています。
通常の予算編成は次年度の予算ですから、30年度に
は31年度の予算を編成します。しかしながら、補正
予算については災害復旧のように緊急を要するもの
ですから、30年度に30年度の予算を編成します。通
常の30年度予算は29年度に編成されています。29年
度に編成した30年度予算では、当然、災害に対応す
る予算は編成されておらず、災害復旧はできません。
パンフレットの2次補正予算案の表題のとおり1次補
正予算もあります。1次補正予算は前年度の30年度
の欄に掲載されています。547億円です。2次補正予
算も30年度予算ですから、30年度の欄に掲載されて
います。年度予算パンフレットに2次補正予算のみ
掲載しているのは不親切だと思いますが、制作者の
意図はわかりません。
さて、防衛予算は年度で編成される予算以外に毎年
のように補正予算が編成されています。30年度は
4,545億円、29年度は2,345億円、28年度は2,167億円、
27年度は1,966億円、26年度は2,582億円と毎年2,000
億円前後の補正予算が編成されています。この額は、
年度に編成される物件費の6~7%にあたります。30
年度の補正予算では10%を超える額となっています。
最新の令和元年度補正予算(案)も4,287億円です
から10%を超えています。
確かに、災害派遣があれば通常の防衛予算以上の経
費が必要となります。災害派遣で器材を使えば、故
障したり損傷したりします。そうした器材を更新す
るための経費は年度の予算には計上されていないた
め、補正予算で補う必要があります。防衛省として
補正予算を編成するのは当然なことです。
しかし、31年度の予算パンフレットの最後のページ
にも掲載されているとおり、30年度の補正予算4,545
億円のうち、「自衛隊の安定的な運用態勢の確保」
のために3,822億円が計上されています。素直にこ
の補正予算を解釈すると3,822億円の補正予算を編成
しないと、自衛隊の安定的な運用態勢は確保できな
いということになります。
29年度の補正予算2,345億円は、全額が「自衛隊の
安定的な運用態勢の確保」のための予算です。28年
度の補正予算では2,167億円のうちの1,706億円、27
年度の補正予算では1,966億円のうちの526億円、26
年度の補正予算では2,582億円のうちの457億円が
「自衛隊の安定的な運用態勢の確保」のための予算
です。最新の令和元年度補正予算(案)では、2,327
億円です。
最近では、毎年、「自衛隊の安定的な運用態勢の確
保」のために補正予算が編成されています。しかも、
その額は毎年増加しています。これは、明らかに異
常な状態です。「自衛隊の安定的な運用態勢の確保」
は、通常の防衛予算で確保しなければならない予算
です。ところが、防衛予算の増額に対する各方面か
らの抵抗があるために、十分な予算が編成できずに
補正予算で対応しなければならなくなっているので
す。
予算の数字は誤魔化すことはできません。30年度の
防衛予算を例にすると、現実には3,822億円が不足
しており補正予算でなんとかまかなっているのです。
26年度から30年度までの5年間では、8,856億円の補
正予算が編成されています。5年間で1兆円近い防衛
予算が不足しており、補正予算がなければ、日本の
安全保障に影響を与えた(将来与える)可能性があ
ったという現実を政治家、言論界、マスコミは認識
しなければなりません。
補正予算は大規模災害や経済危機などの緊急な事態
に対応するために編成するものです。「自衛隊の安
定的な運用態勢の確保」は、本来、恒常的な予算編
成で対応すべき事項であり、これを補正予算で補う
と最低限の予算編成しかできません。真に安定的な
運用態勢を確保するには、この数倍の予算が必要な
はずです。この補正予算頼みの防衛予算の実態を認
識するだけでも、防衛予算の大幅な増額が必要であ
ることは明らかです。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
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