配信日時 2020/01/17 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】世界の秘密兵器(5) 常軌を逸した発明「グレムリン」

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が出まし
た。今回はMP5です。

「MP5サブマシンガン」
L.トンプソン (著), 床井雅美 (監訳), 加藤喬 (翻訳)
発売日: 2019/2/5
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※大好評発売中


イラン問題への言及があります。

やはり今年はわが国にとり、
大激動大転換の時代に
なりそうです。

エンリケ


ご意見ご質問はこちらから
https://okigunnji.com/url/7/


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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編     

世界の秘密兵器(5)

 常軌を逸した発明「グレムリン」

Takashi Kato

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□トランプ・ツイッター(1月8日付)

 イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害作戦を
「非常識」とか「愚か」、なかにはもっと煽情的に
「第三次世界大戦の引き金」などと批判する論調が
あります。日本から見ると、敵国の要人やテロリス
ト個人に狙いを絞った「斬首作戦」は、銃が法律だ
った米国西部開拓時代の即決正義を連想させるので
しょう。しかし、ならず者国家の指導者やテロリス
トは、圧倒的な武力が自分の命に向けられるまで話
し合いに応じることはありません。他者の主張や信
仰はもとより、生存権すら認めない唯我独尊が独裁
者らの精神構造なのです。
 
 最高指導者ハメネイ師の腹を読み、B52戦略爆敵
機などを増派したうえで「イランの報復には倍返
しで報いる」と公言したトランプ大統領の「力によ
る平和」政策は見事に功を奏しました。イラン国内
から発射された10数発の弾道弾が基地内に着弾し
たにもかかわらず、米軍には死傷者がただの一人も
出なかった。トランプ氏はこれを「イラン首脳部が
意図的に対立激化を避けた」と読み、報復を追加経
済制裁に限定。矛を収めたのです。この一連の動き
に、わたしはキューバに配備されたソ連の核ミサイ
ルに、海上封鎖という「力」で毅然と対応し、核戦
争の危機を回避したケネディ大統領の政治手腕を思
い起こしました。

 戦後アメリカに植え付けられた「戦争罪悪感」と
「祖国を憎む倒錯の心理」そしてパックス・アメリ
カーナ(アメリカによる平和)依存ゆえに、日本は
国家存立のための武力行使にすら二の足を踏みます。
しかし、今回トランプ氏が鮮やかに示した「力によ
る平和」を日本も踏襲せざるを得ない状況が遠から
ずやって来る、とわたしは思います。
日本から戦う心を奪った国の指導者が、いま再び日
本に闘魂を伝授する・・・やはりトランプ氏はワイ
ルドカードです。

 今回のトランプ・ツイッター、キーワードは
salute。「敬礼する」「敬意を示す」と言う意味で
す。

No American or Iraqi lives were lost because
of the precautions taken, the dispersal of
forces and an early warning system that worked
very well. I salute the incredible skill and
courage of America's men and women in uniform.

「部隊の散開や効果的早期警戒システムのお陰で、
アメリカ人やイラク人に死者は出なかった。米軍の
全将兵の諸君、貴殿・貴女らの素晴らしい技能と勇
気に、わたしはここに敬意を示す」


▼常軌を逸した発明「グレムリン」

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の中の勝
ち」のごとく、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的
な破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を
手放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの
裏面が「抑止力」なのです。

「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。シリーズ再開5回目は空
中回収可能な低コスト・ドローン「グレムリン」に
焦点を当てます。

 国防高等研究計画局(Defense Advanced Research
Project Agency: DARPA)は新しい技術の軍用化を目
的とする米国防総省の機関です。固定観念に囚われ
ない新機軸を重視し、一見SF的とも思える自由度の
高い研究を行なうことで知られています。

戦場の無人化を推進するDARPAが実用化に向け試験を
続けているのが「グレムリン」と呼ばれる空中回収
型ドローンです。ソレイマニ司令官空爆に用いられ
たリーパーなど現用ドローンは大型かつ高価なもの
が多く、作戦地域のそばに基地が必要です。この点、
軽量小型のグレムリンなら、母機役の爆撃機や輸送
機、または戦闘機から投下し、任務終了後はグレム
リン回収に特化した母機に収納するので滑走路は不
要。世界中のあらゆる係争地に迅速に出動できるわ
けです。

また、任務に最適化したセンサーや武装を選べるた
め、偵察から攻撃まで1機でこなす大型ドローンよ
り使い勝手のいいシステムになっています。発進時、
回収時とも母機は安全な空域に留まりますから、敵
戦闘機や地対空ミサイルの攻撃を受ける心配がない
のも大きな長所です。

編隊を組んで飛来する無数のグレムリンに対し、数
に限りがある有人迎撃機を差し向けたり、高価な対
空ミサイルで迎え撃ったりするのは対費用効果面で
割に合いませんし、撃ち漏らしも避けられません。
とすれば、グレムリンを多数装備した相手に対する
開戦は慎重にならざるを得ず、これを抑止効果と見
ることもできます。同時に、グレムリンのような無
人機が係争国すべてに普及すれば、リスクを顧みな
い作戦が立案される恐れも出てきます。戦場の無人
化が戦争の敷居を低くしてしまう可能性は、そう遠
くない将来、現実のものになります。兵器を抑止に
使うか戦争挑発に用いるかはひとえに人間次第・・・
ということになろうかと思います。


教材ビデオ:
https://www.youtube.com/watch?v=fZvTuNKTW8M&t=648s

 (グレムリンのイントロダクションは12:50か
ら始まります)


基本語彙 (カタカナ発音表示はおおざっぱなもの
です)
Gremlin(グレムリン)高空を飛ぶ飛行機にいたず
らをするとされる伝説上の生き物。本ビデオでは
軽量小型で安価な軍用ドローンを指す。
Hook(フック)引っかける
Haul(ホール)運ぶ 内部に入れる
Refurbish(リハービッシュ)修理・再調整する
Refuel(リフューアル)燃料補給する

シナリオ (13:50から始まります)

The Gremlins are then hooked, powered off and
then hauled abroad the aircraft.

(次いでグレムリンはフックで固定されたうえエン
ジンを切り、母機内に収納される)

 They can be quickly refurbished, refueled,
perhaps receive an armament swap and then be
ready for another mission within 24 hours.

(グレムリンは迅速に修理・再調整が可能で、武装
を取り換えることもできる。24時間以内に新たな
任務の準備が完了する)

(グレムリンのビデオは14:10まで続きます)


英語一言アドバイス: refuelは re(再)+fuel
(燃料)=燃料補給 です。エアタンカーによる空
中給油は air-to-air refueling と言います。

発音サイト: refuelの発音 https://www.google.co.jp/search?sxsrf=ACYBGNSXf7qwK0KyPK5fAPr3_DDl_EYYxg%3A1578696521389&source=hp&ei=Sf8YXtPiFZSs0PEP7ImVqAE&q=refuel&oq=refuel&gs_l=psy-ab.12..0l10.1057.2369..5963...1.0..0.110.616.3j3......0....1..gws-wiz.......0i131j35i39.Hv-Q8xYOXik&ved=0ahUKEwiTq_TqjvrmAhUUFjQIHexEBRUQ4dUDCAc


参考サイト:
米国防総省国防高等研究計画局https://en.wikipedia.org/wiki/DARPA
(このサイトの日本語版に移行してください)

米国防総省国防高等研究計画局のグレムリンに関す
るサイトhttps://www.darpa.mil/program/gremlins

ダイネティックス社のグレムリン広報ビデオ
https://www.military.com/video/aircraft/pilotless-aircraft/gremlins-airborne-launch-recovery-unmanned-aerial-systems/5785084092001



(かとう・たかし)






●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃(近刊)』(いずれも
並木書房)がある。
 
 
追記
「MP5サブマシンガン」
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『アメリカンポリス400の真実!』発売中
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『チューズデーに逢うまで』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063326X
 
『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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