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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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ことし最初の
「防衛予算から読み解く日本の防衛力」です。
実員と定員の違い
を知る国民、政治家は少ないです。
そのことへの正確な理解を持ち、
危機感を覚える人はその中のまた一部です。
ある意味、国家国民が国防力の現実を質だけ
でなく量的にも、正確に把握できていないわ
けです。
精神力だけで解決できる課題ではないにも
かかわらずです。
自衛隊はスーパーマンの集まりではありません。
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エンリケ
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(18)
防衛関係費その15
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
明けましておめでとうございます。本年もよろし
くお願いします。昨年9月から始まった本連載も来
月1週目の21回で防衛予算の解説は終了し、いよい
よ、大綱、中期防、年度予算の繋がりの中で日本の
防衛力整備の本質的な問題を明らかにしていきます。
すでに、今までの解説の中で、防衛予算が多くの問
題を抱えていることに触れてきましたが、それらを
踏まえた上で問題の核となる部分を掘り起こします。
ご期待ください。
令和2年は、新年早々から米国のイラン空爆で先
行き不安な幕開けとなりました。「イスラム原理主
義のイラン」対「自由民主原理主義の米国」という、
原理主義国どうしの対立は解消されることはありま
せん。日本は米国との同盟関係にあるため、米国が
正義というステレオタイプの思考に陥りがちですが、
不寛容な国家という視点で見ると米国は世界的にも
中国、ロシアと並ぶトップ3といえます。
三国には、自国の国益に抵触する条約には加盟せ
ず、国家間の争いは軍事力で解決することも辞さな
いといった共通点があります。とにかくわがままな
国です。トランプ大統領になってから、その特徴が
際立ちます。
結果的には、イランの報復もメンツを保つための形
だけのもので、しかも、民航機撃墜で対米どころで
はなくなっています。また、トランプ大統領は金の
儲からない戦争には消極的ですから、今後も全面戦
争の可能性は低いと思われますが、原理主義の対立
だけに予断は許しません。
かたや、日本としては令和を象徴する東京オリン
ピックというビッグイベントを控えているだけに、
政府首脳も迷惑極まりないと思っているでしょうが、
米国のやることには「だんまり」を決め込むのはい
つものことです。もし、全面戦争ともなればオリン
ピックどころではありません。景気も後退している
なか、中東に石油を依存する国としては経済的なダ
メージも深刻です。日本の外交力も力をつけてきま
したが、対米に関しては相変わらずです。
▼自衛官の定員と実員
自衛官の定員と実員が別々に管理されていること
は、ほとんど知られていません。常識的には、定員
どおり実員が充足されて定員=実員となっていると
考えるのが当然でしょうが、自衛隊においては、過
去、自衛官の定員と実員が一致したことはありませ
ん。自衛隊においても事務官については、定員と実
員が一致しています(退職や免職で定員が欠けるこ
とは当然あります)。
ちなみに、自衛隊は全て自衛官で構成されている
との勘違いが結構ありますが、自衛隊は自衛官と事
務官で構成されています。陸・海・空自衛隊にも事
務官はいます。第一線部隊と呼ばれる戦う部隊には
事務官はいませんが、学校や補給処等に事務官が配
置されています。事務官は武器が使用できませんが、
武器を使用することのないポストであれば事務官を
配置することができます。
事務官については、自衛隊員としての宣誓があり
ますが、給与や身分等は他の省庁と事務官とほぼ同
じです。定員と実員の管理も同じで、他省庁も含め
て事務官は原則、定員=実員です。ところが、自衛
官に関しては定員と実員が別々に管理されているの
が当然のようになっています。
31年度であれば、自衛官の定員は陸上自衛隊150,777人、
海上自衛隊45,356人、航空自衛隊45,923人、その他
の共同部隊や情報本部等の自衛官を合計して、陸・
海・空自衛官を併せて247,154人です。実員に関して
は前回紹介したとおり、陸上自衛官が140,155人、海
上自衛官が42,499人、航空自衛官が43,659人で、合
計で226,313人です。充足率は91.6%で、20,841人が
不足しています。
充足率が90%以上あれば問題ないと思われるかも
しれませんが、組織、部隊によって充足率が異なる
ため、100%の充足率の組織もあれば80~70%程度
の充足率しかない部隊があります。例えば、陸上・
海上・航空幕僚監部をはじめとした上級司令部は、
恒常的に業務をしなければならないため100%の充
足がなければ業務が遅滞します。上位組織の業務が
遅延すると下位の組織になるほどその影響が大きく
なりますから、上位組織の充足を高める必要があり
ます。
本連載のテーマである予算関連の業務や日米共同
訓練や海外での訓練等は毎年、恒常的にあるため定
員どおりの実員が必要で、新規の業務が追加された
場合などは定員以上の実員を配置しないと仕事が進
捗しません。また、災害派遣や国際貢献などの任務
は、計画作成から撤収後の教訓整理や計画への反映
等司令部の業務は長期間にわたります。どうしても、
指揮・統制機能を持つ組織の充足は高める必要があ
ります。
上位組織の充足を100%、必要な場合は100%以上
にした場合、結果として下位組織、つまり第一線部
隊にしわ寄せがきます。自衛官の定員と実員の乖離
は第一線の現場部隊の恒常的な人手不足を招いてい
ます。第一線部隊とは、実際に災害派遣に出動する
部隊であり、国際貢献に派遣される部隊です。訓練
をするにしても、一部の組織が欠けた状態になりま
す。つまり、自衛隊は常に不完全な状態で活動して
いるということです。
通常の戦闘において、3割の損耗で戦闘不能と言わ
れています。つまり、今の自衛隊は戦闘する前から
戦闘不能な部隊が存在するということになります。
災害の多発や弾道ミサイル脅威等に対応するため、
自衛隊に対しては以前に比べて高い即応性が求めら
れています。それにもかかわらず、定員と実員が乖
離した状態が恒常的で当たり前となっています。自
衛隊が国民の期待に応えるためにも定員と実員の一
致は急務です。
「宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域にお
ける能力の獲得・強化」や「海空領域における能力、
スタンド・オフ防衛能力、総合ミサイル防空能力、
機動・展開能力の強化」を謳い、最新鋭の装備品を
導入しても人がいなければ運用できません。しかも、
装備品を維持管理するための経費も枯渇状態にあり、
自衛隊も「張り子の虎」となりつつあります。
実員を10%増加するには人件費を10%増加する必
要があります。人件費は歳出予算ですから、必ず国
会での議論となり報道でも話題となります。人件費
の10%は約2,000億円ですから、最近の防衛費の増加
分を含めると約2,500億円の増額、5%のプラスです。
ここ数十年間でも最大の増額となります。
最近は自衛官の募集が厳しく1年で増員するのは困
難ですが、定員=実員という方針を早急に決議し、
速やかに自衛隊の態勢を整備すべきです。このよう
な議論は、本来、大綱や中期防で行なうべきですが、
大綱、中期防が策定されたばかりという時期的問題
と大綱、中期防は閣議決定までしかされないという
手続き的問題を前提とするなら、国会で防衛費5%増
を決議することが最も現実的です。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
市川さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
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