『三島由紀夫と最後に会った青年将校』
西村繁樹著(元防衛大学校教授)
四六判260ページ
定価1600円+税
発行日 :2019.10
本体価格 ¥1600
https://amzn.to/355nVn6
「生きるとは死ぬことであり、死ぬことは生きるこ
とである」
「死を恐れる人は、精いっぱい生きていない人」
「武士道とは死ぬことと見つけたり」
「肝胆相照らす関係は一瞬でできる」
人間の真実を鋭く突く言葉です。
本著を読みおわった私の頭に浮かんだのは、
この言葉たちでした。
令和の御代に入り、
「三島事件」を知る人は本当に少なくなりました。
ノーベル文学賞を本当に受賞できるレべルにいた
天才・三島由紀夫は、昭和45年11月25日、
東部方面総監部で総監を人質にし、自衛隊に決起を
促す檄を飛ばした後、自身が主宰する「楯の会」の
メンバー・森田必勝とともに割腹自刃しました。
このできごとを「三島事件」と呼びます。
決起当日の11月25日には
三島を偲ぶ「憂国忌」が毎年行われています。
ことしも行われました。
あなたも参加されているかもしれません。
じつは今年は特別な企画が準備されており、
その席に出席するはずだった人がいました。
ところがこの方は直前に急逝されます。
今日ご紹介する本の著者、
故・西村繁樹さんです。
「三島に呼ばれたのかもしれない」
とおっしゃる方もいました、、、
西村さんは
「三島由紀夫に最後に会った青年将校」です。
「三島事件の真実の最後のピースを握る人」
とも言われていましたが、事件後は完黙を貫きます。
この本は、そんな西村さんが、はじめて三島との関
わりを語った書です。
ご自身の人生と三島との交流を振り返るなかで、
「三島はなぜ決起したのか?」という壮大な問いに
答える考察であり試みです。
「なぜ三島は決起したのか?」を自ら問いつづけた
ご自身の生涯をとおして、その実体験から「三島事
件」を考察しています。
西村さんは、三島との直接の交流を通じて
何を学び、何を得、自らの人生に何を活かしたので
しょうか?
全身全霊を打ち込み、ウソ偽りなく書かれた
「本気」「全力」「全て」を出し切った文章です。
だから文章に力みがなく、重さが消え、読み口が非
常に軽いです。めったに出会える本ではありません。
西村さんが、本著を通して人生の最期に成し遂げた
事跡の大きさを、読み返すごとに感じ続けています。
なんといっても、三島の魂の一番近くにいた人の一人
です。わたし自身、この本を通じて、
「やっぱりそうだったか!」
「なるほどそうか、、」
「えっ?」
となるところ多数でした。
ぼんやりしていた
「三島事件の本質」
にピントを合わせてくれました。
なかでも注目は、
第六章の「ビッグ・イフ(もしも、あのとき……)」です。
三島と西村さんの架空問答で、
西村さんでなければ絶対に書けない、
三島の魂にあったものの核心に迫る内容です。
もしかしたら、ここを読むだけでも本著を手に入れ
る価値はあるのではないか?とすら思います。
本著執筆の動機について西村さんは、
<本書執筆の動機は、五〇年前に何を思って三島に接
近していったのか、その「問い」に自分なりの答え
を出したいという強い思いがあったからである。資
料を狩猟する中で最も自分の気持ちにぴったり来た
のは森田必勝の次の言葉である。
「三島由紀夫に会って自分の考え方が理論化できた。
だから三島を一人で死なせるわけにはいかん」
私も森田と同様「三島由紀夫に会って国体と建
軍の本義を理解することができた。だから三島と共
に行動しなければならない」という気持ちになった。
その気持ちは徐々に醸成され、やがてどこかの時点
で三島に伝える機会をうかがっていたのである。そ
の思いを読者の皆様にあえてお伝えしたいと思う。>
[本文より]
と記されています。
また、「はじめに」では、
< 私は防衛庁(現在の防衛省)内局勤務中、上司の
岡崎久彦参事官(のちの駐タイ大使、故人)から
「君は『三島由紀夫と最後に会った男(自衛官)』
だそうだな」と問われた。自決の約一か月前の昭和
四五(一九七〇)年一〇月一八日、私は三島由紀夫
氏と会っている。三島氏は四五歳、私は二三歳で、
任官したての「青年将校」であった。(中略)
ところで、厳密にいうと私は三島氏と最後に会っ
た自衛官ではなかった。資料を調べていくうちに、
私のあとでお別れの意味で、山本舜勝陸将補(当時)
と菊地勝夫一尉(当時)に三島氏は会っている。た
だし、一〇歳以上も離れた二人との年齢差を考慮し、
最後に会った「青年将校」と自任させていただく。
とはいえ、私の場合、三島氏から、世話になっ
たとお礼を言われるほど数多い付き合いはしていな
い。最後に会ったときの会食もお礼の意味という雰
囲気ではなかった。だから山本氏や菊地氏と同等の
意味で「最後に会った自衛官」に並べられないので
ある。私が試行錯誤しながら三島氏に接近していた
思いを三島氏の霊にぶつけたのが、第六章の「ビッ
グ・イフ!(もしも、あのとき!)」である。山本
氏も菊地氏もすでに鬼籍に入られた。私は自衛官最
後の語り部となったのかもしれない。>
と書かれています。
では、画期的な
「三島事件の核を伝える書」
の内容をみていきましょう。
目 次
はじめに 1
第一章 三島のクーデター論 13
自衛隊若手幹部に「クーデター」の働きかけ 13
単純で初歩的な三島のクーデター論 16
「すべて墓場まで持って行く」22
「自衛隊がクーデターを起こすことは決してありません」24
揺れる三島の「クーデター論」28
第二章 山本一佐と三島の複雑な関係 33
三島の祖国防衛隊構想と治安出動 33
山本の情報訓練にかける三島の意気込み 38
反革命宣言─三島の「戦略転換」40
砕け散った三島の夢 46
決起がなぜ一一月二五日だったのか 53
自衛隊に対する三島の絶望 59
山本は三島に何を教えたのか? 61
「期待はずれの教官」65
第三章 三島事件か森田事件か 71
六月以降、主導権は森田から三島へ 71
三島の決心で計画は進んだ 78
第四章 三島由紀夫との出会い 81
日本軍人にあこがれて防大受験 81
勇気づけられた祖父のひと言 85
「西村という弁の立つやつがいる」87
制服姿で大学紛争をめぐり議論を戦わす 90
三島由紀夫との初めての出会い 94
三島の防大講演 98
幹部候補生学校で同志に出会う 104
自衛隊の治安出動訓練 110
テイヤール思想と三島思想 114
第五章 自衛隊は何を守るか 117
「任務至上主義はニヒリズム」117
「少尉」任官直前に三島を訪ねる 123
「未来」という言葉を嫌った三島 127
「自衛隊は何を守るのかね」131
危惧は的中した 136
第六章 「直接会って話をしよう」140
大作家にぶつけた手紙 140
「直接会って話をしよう」148
「制服を脱いでくるように」155
痛恨の一〇月一八日 161
われわれには「焦り」がある…… 168
ビッグ・イフ(もしも、あのとき……)174
第七章 事件後の事情聴取 184
三島由紀夫、決起す 184
三島自決の衝撃 191
警視庁、警務隊の事情聴取 194
中隊員を集めて「精神教育」197
三島事件を肯定する者、否定する者 200
新隊員を引率して皇居参賀と靖國参拝 206
消えぬクーデターの風聞 210
第八章 三島の防衛論 214
米国「ランド研究所」で戦略を研究する 214
陸幕防衛班で対ソ抑止戦略を主導 221
現実離れした三島の「国土防衛軍」224
自衛隊はアメリカの傭兵か? 228
先進的な三島の「国連警察予備軍」構想 231
三島由紀夫の「憲法改正論」234
私の憲法改正論─国連集団安全保障 236
おわりに 244
引用文献/参考文献 246
解題にかえて─
もう一人の青年将校(森川啓二)248
二人の脇侍 248
客人としてわれわれを遇してくれた 250
今だからわかる「部下をかわいいと思う中隊長の危ういところ」251
三島氏がバルコニーから観ていた世界 255
[三島氏と筆者の面談・交流]
昭和四三年七月、防大四学年の西村学生、滝ヶ原分
屯地で初めて三島氏と面談。
昭和四三年一一月二〇日、三島氏の防大講演会後、
校長応接室で二回目の面談。
昭和四五年三月二日、BOC(幹部初級課程)入校
中、滝ヶ原分屯地で体験入隊中の三島氏と面談。
同年三月二四日、同分屯地にて三尉任官を三島氏に
報告。村上一郎著『北一輝論』を恵贈される。
同年四月一一日、三島邸に招待され、三島・森田両
氏と食事。
同年五月と六月に三島氏に電話するも次回の面会は
叶わず。八月下旬、三島氏に軍民会合(討論会)の
参加を訴える手紙を送る。
同年九月二三日、三たび電話。三島氏から「直接会
って話をしよう」「制服は脱いで来るように」と言
われる。
同年一〇月一八日、決起直前の三島・森田両氏と東
銀座の鍋料理屋で面談。
西村繁樹(にしむら・しげき)
1947年大阪府生まれ。防衛大学校本科第13期(電気工
学専攻)卒業後、陸上自衛隊入隊(野戦特科)、第1
特科連隊、陸上自衛隊調査学校、防衛庁内局、ランド
研究所客員研究員、ハーバード大学国際問題研究所客
員研究員、陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班、陸上自
衛隊幹部学校戦略教官室教官、同副室長を務めて、平
成13年(2001)自衛官(1等陸佐)から文官に転官、
その後、防衛大学校において戦略教育室教授を務め、
2012年3月定年退官。現在、公益財団法人「偕行社」
参与。著書に『SDI 戦略防衛構想-"スターウォーズ"
とは何か』(教育社)、『日米同盟と日本の戦略-ア
メリカを見誤ってはならない』(PHP研究所 共著)、
『「戦略」の強化書』(芙蓉書房出版 編著)、『防
衛戦略とは何か』(PHP研究所)。
三島事件については
思想、文学、心理的アプローチがほとんどで、
国体・国防方面からのアプローチを
ほとんど見ません。
そのせいか、
氏の行動についてバランスの取れた評価がなされて
いるとはとても言えない現状です。
「意味不明」「触れてはならないタブー」と
「右翼がしでかしたおどろおどろしいできごと」と
いう感じで片付けられており、どこかネガティブで
不自然さが付きまといます。
ところが、憂国忌は毎年欠かさず行われています。
ここには、我が国では数少ない優れた知識人がけっ
こう参加しているのですよ。
なぜなんでしょう?
三島を見るスタンスのバランスが非常に悪い。
そんな思いがずっと付きまとっていました。
これは、
「三島の決起」に関する核となるものが、
今に至るもきちんと伝わっていなかったからではな
いでしょうか?
「あやふやな伝聞」
「あやふやな思い込み」
「あやふやな類推」
「あさはかな発想」が
三島事件評価の元になっているからではないでしょ
うか?
わたしにとって、三島事件最大の謎は
「なぜ最期の舞台が自衛隊だったのか?」
でした。
その謎が、この本を読むことで完全に解けました。
他の部分で、
私と同じ思いを味わえる人は
たくさん出るはずです。
本文に続く
西村さんと防大同期で終生の友・森川さんの
「解題にかえて」も実に読み応えがあります。
「歎異抄」「豊饒の海」というキーワードを用いた
三島事件分析は、実に核心を衝く内容です。
三島は、バルコニーで檄を飛ばしていたとき、
一体何を見ていたのでしょうか?
その風景も実に見事に表現されており、読み手に迫
ります。
もしかしたら本著は、
三島の魂を受け継いだ西村さんの魂を、
その友が見事につないだ「むすび」の書といえる
のかもしれません。
私にとっては、
2019年最大の現代史発掘の書でした。
ぜひお求めください
おススメです。
最後になりましたが、
11月13日に急逝された西村繁樹さんの
ご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
『三島由紀夫と最後に会った青年将校』
西村繁樹著(元防衛大学校教授)
四六判260ページ
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発行日 :2019.10
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エンリケ
追伸
三島が決起を通して伝えたかったことは
一体何だったのか?
最後の語り部が語っています。
知りたい人は必読です。
三島事件最後の語り部として
人生を全うされた西村さんの
遺著です。
『三島由紀夫と最後に会った青年将校』
西村繁樹著(元防衛大学校教授)
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