あなたは、自衛隊海外派遣の何を知っていますか?
あなたは、自衛隊海外派遣がわが国のなにを護った
かご存じですか?
あなたは、「積極的平和主義」のどこがどう不十分
なのか?がわかっていますか?
出来事だけはポツンと単体で何となく知っている。
しかし、自衛隊の海外派遣のものがたりを知る日本人
はほとんどいません。
自国がやってる自分事なのに、
どこか遠くの国で行われた、
自分とは関係ない他人事
という目で自衛隊海外派遣を見ている
もどかしさを感じるのは私だけではないでしょう。
1991年以来、40回にわたって行われている
(現在も)自衛隊海外派遣について、一般国民の記
憶に残るものがたりは「イラク派遣」のみといって
差し支えないでしょう。
もっといえば、
自衛隊海外派遣の本質を
きちんと把握している国民は、
関係者以外皆無に近い
と言って差し支えないかもしれません。
話に入る前に、、、
わが国が戦後に「国際社会の安定、平和維持」のた
め身を挺した歴史は、自衛隊創設前の「朝鮮戦争時
の掃海活動」に始まります。
まさに「戦場」に出動した「特別掃海隊」は、犠牲
者を出しながらも任務を完遂。国連軍の上陸作戦成
功に大きな寄与をしました。
この活動への参加が、サンフランシスコ講和条約の
早期締結=わが国の早期独立に多大な貢献をした事
実を知る国民はほとんどいません。
冒頭にここから触れられていることが、
私には非常にうれしいことでした。
戦後の我が国際社会の安定・平和維持への貢献は、
戦後すぐに始まっていたのです。
その後創設された自衛隊は、
「海外で展開しない組織」と決められます。
1991年まで、ひたすら国内で力を蓄えて発展し
てきました。
ところが湾岸戦争(1991)時の「カネだけ支援」を
国際社会からボロクソに叩かれたわが国は、
「もはや一国平和主義は通用しない」現実に直面。
国際的に極めて厳しい状況に置かれることになります。
冷戦終結という現実に初めて向き合ったわが国は、
国際社会の安定化に向けた実質的な貢献を求められ
る時代に入ったことにようやく気付き、自衛隊部隊
を現地に派遣することで解決を図りました。
これが、自衛隊初の海外派遣
「掃海部隊のペルシャ湾派遣」です。
この本には、そのきっかけが、
「米国の朝鮮戦争時の特別掃海隊の記憶」に
あったらしいというウラ話も書かれています。
本著は、
自衛隊が行った海外派遣について、現地に行った当
事者の方々が、なぜ、何を、何のために、どのよう
に行ったか?を簡潔にわかりやすく書いています。
あわせて、ポスト冷戦時代の国際社会で、わが国の
地位、名誉、存在感を保ちえた大きな理由の一つが
「海外派遣で発揮された自衛隊の姿」にあった現実
がひしひしと伝わってきます。
もし自衛隊がなかったら、世界における我が国の存
在感は見る影もないほど落ちぶれていたに違いない、
と身震いするほど、冷戦構造終結後のわが国はギリ
ギリの状況下にあったことが肌で感じ取れます。
自衛隊は「海外では展開しない前提」で作られた組
織だったため、海外で活動する訓練も想定も準備も
なく、新たに派遣される部隊はゼロから手探り状態
ではじめなければなりませんでした。
そのことへの視線がわが国ではあまりになさすぎる
気がします。
ここにあるのは、誰かも言っていた
「無知に伴う超人視」でしょう。
「軍や自衛隊はスーパーマンで何でもできる」
という錯覚を持っているのです。そこに流れる通奏
低音は「国際状況と軍事自衛隊への無知」です。
そんな状況下、最前線で海外の現実と直面し、対処
してきた軍人たちの「真実」「誠実」「実践」の
すがたを本著を通じてひとりでも多くの「自国のこ
とも他人事」という感覚に至った日本人にこの本を
届けたいです。
せめて「無知」から卒業した国民でありたい。
「自国のことは自分事意識」
「国防軍事自衛隊を自分事として考える姿勢」
「日本人が本来持っているバランス感覚」
を紡ぎ合わせて
「あるべき国防安保自衛隊態勢」を
「かたちとして残し、活かせる国」にしてゆきたい。
と思わせる、
本邦唯一と言ってよい
「自衛隊海外派遣通史」
です。
・海外派遣で一人の犠牲者も出していない理由は
自衛隊が営々と培ってきた3つの尺度で説明できます。
その尺度とは?
・最も危険なエリアで掃海を行ったペルシャ湾派遣
部隊は●●●日にわたり●万●千海里の機動を行っ
て●●個の機雷を処分しました。
・覇権を志願した他員たちの鳥肌が立つような感動
エピソードも満載!
・各著者が共通して言っていたのが「国民の●●と
●」が作戦成功の重要な柱の一つだった、というこ
とでした。これはイマスグひとりでできることです、
積極的に実践しようと思いました
といった、読まずにおれない話が、
綺羅星のごとく描き出されています。
まえがき、あとがきは桜林美佐さんが書かれています。
「国際社会安定化のための集団安全保障活動とわが
国」と名付けて差し支えないレベルの、重要な教え
が散りばめられています。実に読み甲斐があります。
・PKO活動の内容は変化しているのに、わが国の原則
は何も変わっていない
・自衛隊海外派遣は平和を乱すものを阻止し、平和
を構築する当事者たるためのもの。
・わが国は、国連PKO参加国の教科書と言ってよい
「工兵マニュアル」作成の議長国で陸自施設部隊が
中心的役割を担っている。
・憲法9条が「世界平和を守るための国連集団安保
措置」にわが国が参加する際の枷となっている現実
・自国を守るための法整備はある程度完了したが、
「積極的平和主義に基づく海外派遣」については不
十分。
・法解釈問題があれやこれや出ているが、決断を迫
られたときの国民の心の準備、政治判断は現実に追
いついていない
・集団安保に関する国内の議論はあまりにお粗末。
・自衛隊・軍が果たす役割は大きく変わっており、
孤立主義では自国存立すら危うくなる。
といった、
いま私たちが傾聴すべきことばが散りばめられてい
ます。
こんな「自衛隊海外派遣通史」の内容は次のとおり
です。
□目 次
監修者のことば 桜林美佐(防衛問題研究家) 1
自衛隊の海外活動派遣実績(2019年9月現在)26
自衛隊の海外活動派遣先(2019年9月現在)30
序 平時の自衛隊の主任務になった「海外活動」32
海上自衛隊掃海部隊ペルシャ湾派遣
総行程1万4千海里、自衛隊初の海外活動
第14掃海隊司令(当時)森田良行 37
陸上自衛隊施設部隊カンボジアPKO派遣
試行錯誤しながら無事故で任務達成
第1次カンボジア派遣施設大隊長(当時)渡邊隆 47
モザンビーク国際平和協力業務
隊員の知恵とコミュニケーション力で業務遂行
モザンビーク派遣輸送調整中隊長(当時)中野成典 53
ルワンダ難民救援国際平和協力業務
好評だった「日本流」の救援活動
ルワンダ難民救援隊長(当時)神本光伸 59
ゴラン高原PKO(その1)
離散家族の絆もつないでいたUNDOF
第1次ゴラン高原派遣輸送隊長(当時)佐藤正久 65
ゴラン高原PKO(その2)
わが心の故郷「ゴラン高原」
第3次ゴラン高原派遣輸送隊長(当時)本松敬史 71
ゴラン高原PKO(その3)
司令部要員として悪戦苦闘した1年間
第1次UNDOF司令部派遣要員(当時)軽部真和 77
東ティモールPKO
多機能型PKOとして国造りを支援
第3次東ティモール派遣施設群長(当時)田邉揮司良 82
イラク人道復興支援(その1)
現地の人々の目線でものを見る
第1次イラク復興業務支援隊長(当時)佐藤正久 89
イラク人道復興支援(その2)
自衛隊の活動に寄せられた歓迎と感謝
第1次イラク復興支援群長(当時)番匠幸一郎 96
イラク人道復興支援(その3)
徹底した訓練で培った自信と謙虚さを持って
第4次イラク復興支援群長(当時)福田築 101
イラク人道復興支援(その4)
航空自衛隊輸送航空隊、初の脅威下の運航
第1期イラク復興支援派遣輸送航空隊司令(当時)新田明之 107
イラク人道復興支援(その5)
復興支援を通じて「イラクに残してきたもの」
第3次イラク復興業務支援隊長(当時)岩村公史 112
イラク人道復興支援(その6)
イラク人による「自立的な復興」への橋渡し
第5次イラク復興業務支援隊長(当時)小瀬幹雄 118
イラク人道復興支援(その7)
イラク・サマーワから全員無事帰還
第10次イラク復興支援群長(当時)山中敏弘 123
イラク人道復興支援(その8)
戸惑いながらも派遣輸送航空隊の撤収
イラク復興支援派遣撤収業務隊司令(当時)寒河江勇美 128
南スーダン国際平和協力業務
中央即応連隊の信条をもって任務遂行
南スーダン第1次派遣施設隊隊長(当時)坂間輝男 134
トルコ共和国地震国際緊急援助活動
海自初の自衛艦による仮設住宅輸送
トルコ共和国派遣海上輸送部隊指揮官(当時)小森谷義男 141
インドネシア国際緊急援助活動
陸自と救援物資の輸送を完璧にこなす
インドネシア国際緊急援助海上派遣部隊指揮官(当時)佐々木孝宣 147
パキスタン大地震国際緊急援助活動
救援物資とともに真心も届ける
パキスタン・イスラム共和国国際緊急航空援助隊長(当時)堀井克哉 152
ハイチ国際平和協力業務(その1)
他国のモデルになった日本隊
ハイチ派遣国際救援隊長(当時)山本雅治 157
ハイチ国際平和協力業務(その2)
ハイチの未来のために日本隊が残したもの
ハイチ派遣国際救援隊(第7次要員)隊長(当時)菅野隆 163
ハイチ国際平和協力業務(その3)
派米訓練から緊急空輸の実任務へ転用
航空自衛隊ハイチ国際緊急援助空輸隊長(当時)武部誠 173
海賊対処活動(その1)
不安とストレスの中、初の海賊対処任務
第1次派遣海賊対処行動水上部隊指揮官(当時)五島浩司 178
海賊対処活動(その2)
海賊行為を抑止できた目に見える成果
第1次派遣海賊対処行動航空隊指揮官(当時)福島博 186
インド洋における補給支援活動
情報収集部隊としての初任務を達成
海上自衛隊第6護衛隊司令(当時)宮﨑行隆 192
執筆者略歴(掲載順)199
「あとがき」にかえて
積極的平和主義と新時代の自衛隊の役割 桜林美佐 205
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
防衛問題研究家。日本大学芸術学部放送学科卒。
TV番組制作などを経て防衛・安全保障問題を研究・執筆。
2013年防衛研究所特別課程修了。<p>防衛省「防衛生
産・技術基盤研究会」、内閣府「災害時多目的船に
関する検討会」委員、防衛省「防衛問題を語る懇談
会」メンバー等歴任。安全保障懇話会理事。国家基
本問題研究所客員研究員。
『誰も語らなかった防衛産業』『日本に自衛隊がい
てよかった』『自衛官が語る海外活動の記録(監修)』
など著書多数。
公益社団法人 自衛隊家族会
「自衛隊員の心の支えになりたい」との親心から
自然発生的に結成された「全国自衛隊父兄会」が
1976年「社団法人」、2012年に「公益社団法人」と
して認可され、2016年に「公益社団法人自衛隊家族
会」と名称変更。現在、約7万5千人の会員が国民の
防衛意識の高揚、自衛隊員の激励、家族支援などの
活動を全国各地で活発に実施中。防衛情報紙『おや
ばと』を毎月発行、総合募集情報誌『ディフェンス
ワールド』を年1回発行。
いかあでしょうか?
通読して感じるのは
「海外派遣でもっとも強力な核心のパワーとなった
のは、自衛隊が培ってきた「日本らしさ」だった」
ということです。
「自衛隊が信じてきたことは間違いなかったことが
証明された」
という言葉に代表される「日本人が大切にしてきた
見えない大切なもの」を守り、ひたむきに実践して
きた自衛隊のベクトルは間違っていなかったという
ことです。
あわせて思ったのが、戦後わが国が何を失ったか?
です。海外派遣時に発揮された自衛隊の姿こそが、
実は本来の日本の姿なのではないでしょうか?
自衛隊は「日本」のスタンダードを発揮している組
織なのではないでしょうか?
派遣先、国際社会から、
そんな自衛隊が「例外なく」「高い評価」を得てい
る現実を、国民はもっともっと知る必要があります。
日本人必読の書です。
おススメです。
「自衛官が語る海外活動の記録」
自衛隊家族会 (著), 桜林 美佐 (監修)
並木書房
2019/12/18発行
https://amzn.to/2ZhIV8U
エンリケ
追伸
本著の全貌を簡潔に描いたガイド的存在の「序章」
も実に素晴らしいです。全体のバランスが取れた本
で、写真や図表も充実していますよ。
今話題の「ペルシャ湾自衛隊派遣」を考える上で
国民がまず知っておかなきゃいけないことが書か
れている本です。海外派遣の当事者が自ら記した
この本を読まずに自衛隊海外派遣を語り、考える
ことは、もはやできません。
「自衛官が語る海外活動の記録」
自衛隊家族会 (著), 桜林 美佐 (監修)
並木書房
2019/12/18発行
https://amzn.to/2ZhIV8U