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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは。エンリケです。
加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が出まし
た。今回はMP5です。
「MP5サブマシンガン」
L.トンプソン (著), 床井雅美 (監訳), 加藤喬 (翻訳)
発売日: 2019/2/5
http://okigunnji.com/url/14/
※大好評発売中
<英国の大衆は
1973年以降のオープン・ボーダー(開かれた国
境)体験で「人の出入りが自由な国は主権国家たり
得ず、自国言語も伝統も文化も失われる」ことを学
んだのです。>
とのことば、非常に重いですね。
また、<兵器の進化は諸刃の剣>とのご指摘も、
非常に重要であると思います。
物事は常に複眼で見なけりゃいけませんね。
エンリケ
ご意見ご質問はこちらから
https://okigunnji.com/url/7/
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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編
世界の秘密兵器(3)
常軌を逸した発明「対戦車ドローン」
Takashi Kato
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□読者の皆さんへ、
今年も『加藤大尉の軍隊式英会話』をご愛読いた
だきありがとうございました。
令和元年は日本の国体に関わる一連の儀式が
恙(つつが)なく執り行なわれ、幸先よい新時代の
幕開けとなりました。令和2年は米国の大統領選を
睨み、各国が国益をかけ熾烈な外交戦を繰り広げる
ものと思われます。再選を目指すトランプ氏がいか
なる対中国、対北朝鮮、対ロシア政策を展開する
か・・・日本の命運を左右するだけに目が離せませ
ん。
来年もトランプツイッターと兵器編を通じ、抑止
力と平和について考えていきます。引き続きよろし
くお願いします。
良いお年を迎えてください!
加藤 喬
雪化粧のワチューカ山脈を眺めつつ
アリゾナ州ハーフォードにて
□トランプツイッター 12月12日付
地球儀は英語でグローブ(globe)。「地球」や「世界」
という意味があります。ここから派生したグローバ
リズム(globalism)は、世界を「超国家共同体」と
見なす考え方のことです。多国籍企業が国境を越え
て利益を上げたり、自由貿易で世界経済が活性化し
たりするのが成果だと謳われましたが、同時に、生
産業が廉価な労働力を求めて中国や第三世界に流出
し、日本や欧米のモノ作り業界が空洞化する弊害も
産みだしました。
また、グローバリズムが提唱する「国境に妨げら
れない物や金、人の流れ」は、これらを制限するこ
とで成り立っている「国家」と相容れません。超国
家共同体である欧州連合 (EU) への移民流入と域
内での移動・居住の自由がこれを証明しています。
加盟国のドイツ、イタリア、オーストリア、ポーラ
ンド、ハンガリーなどでは、経済、文化、社会福祉、
医療および宗教面で受入国市民との摩擦を生み、移
民排斥運動が過激化しているのです。
ドーバー海峡を隔てたイギリスでも状況は変わら
ず、「雇用悪化を招き、治安を不安定にする」とし
て労働者階級が欧州連合主導の移民受け入れ政策に
反対。これに、選挙で選ばれていないEU官僚に国政
を左右される不満も加わって、2016年には「EU離脱
の是非を問う国民投票」が行なわれました。3年に
わたる優柔不断の政治を経て、つい先日「早期離脱」
を訴える保守党が圧勝したのは読者もご存知の通り
です。ちなみに保守党を率いるボリス・ジョンソン
首相は、その率直な物言いから「英国のトランプ」
として知られています。
今回のツイッターは勝利したジョンソン首相へ祝
意を表したものです。もろ手を挙げた賛辞に、2国
間貿易協議はもちろんのこと「国という枠組み」を
重んじる反グローバリズムの旗手という点でも英国
のトランプと意気投合している様子が覗えます。
欧米の主流メディアや高学歴のエリート層はトラ
ンプ大統領とジョンソン首相を「大衆迎合主義者」
として蔑視する傾向があります。しかし、国家の主
権である「国境保全」、「入国資格審査」そして
「受け入れ国に貢献する移民受け入れ」は多くの
人々が支持するところです。ことに英国の大衆は
1973年以降のオープン・ボーダー(開かれた国
境)体験で「人の出入りが自由な国は主権国家たり
得ず、自国言語も伝統も文化も失われる」ことを学
んだのです。来年1月末のEU離脱は「イギリスは主
権を回復し、独立国家としてのアイデンティティを
守り抜く」というグローバリズム否定宣言に他なり
ません。メキシコとのオープン・ボーダーを唱える
民主党急進左派に手を焼くトランプ氏にとって、ジ
ョンソン氏の勝利は頼もしい援軍の靴音と聞こえて
いるはずです。
ちなみにわたしは20代で米国に移民し、「身の
丈に合ったアメリカン・ドリーム」を追う機会を得
ました。したがって、移民制度というものを高く評
価しています。しかしそれは、受け入れ国の言語、
文化、伝統、風俗習慣に敬意を払い、かつ、ある程
度同化する意思を持った移民が前提となります。人
手不足解消のため性急に移民受け入れに舵をきった
日本・・・・有権者はこの前提を心に留めて置く必
要があります。
本日のトランプツイッター、キーワードは
strike a deal。「取引をまとめる」「合意する」を
意味する表現です。
Congratulations to Boris Johnson on his great
WIN! Britain and the United States will now
be free to strike a massive new Trade Deal
after BREXIT. This deal has the potential to
be far bigger and more lucrative than any deal
that could be made with the E.U. Celebrate Boris!
”
「ボリス・ジョンソン、選挙圧勝おめでとう!EU離
脱後、これで米英は巨額の貿易交渉を自由に締結で
きるようになる。欧州連合とのどんなビジネスより
スケールが大きく、かつ儲かる取引になる可能性を
秘めている。勝利を祝え、ボリス!」
▼対戦車ドローン
兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀
を抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の中の
勝ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的
な破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を
手放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの
裏面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。シリーズ再開3回目は、
小型で安価な対戦車ドローンに焦点を当てることに
します。
兵器は新旧の技術を組み合わせることで進化し破壊
力を増してきました。
1914年に第1次世界大戦が勃発すると、黎明期
の飛行機はまず偵察に使われました。任務に向かう
敵同士のパイロットがすれ違いざま手を振りあった
優雅な時代はじき終わり、当時すでに実用化されて
いた機関銃で撃ち合うようになったのです。
1970年代から本格的に実戦投入されるように
なったドローンですが、最近の小型化および高性能
化には目を見張るものがあります。市販モデルでも
自動姿勢制御モードで高画質の写真やビデオを撮る
ことができ、これは照準機能に転用できます。モー
ターを高出力化して軽量の武器を載せれば攻撃ドロ
ーンの出来上がりです。
本ビデオに登場するのはベルラーシ軍が開発中の
対戦車クワッドコプター。粗雑な外見からプロトタ
イプだと思われます。同国は旧ソ連の共和国だった
ため入手が容易なソ連製対戦車擲弾発射機RPG-26
を搭載しています。RPG-26には440ミリの均質
圧延鋼装甲を貫通する性能がありますが、劣化ウ
ランやセラミックスなどの複合装甲で守られた主
力戦車を正面から撃破するには威力が足りません。
しかし、戦車の装甲は重量を抑えるため砲塔上部
や車体後部は薄くなっています。これらの脆弱部
分を狙い撃ちすれば、砲塔内の乗員を殺傷したり
エンジンを使用不能にしたりすることは可能かも
しれません。
ちなみに、現用の欧米主力戦車は1両で7~8億
円もする高価な兵器です。これに対し、小型ドロー
ンと使い捨て対戦車擲弾発射機は1セットで数十万円
程度ではないかと思います。国防費が潤沢でない国
でも数を揃えることができる訳です。高額な戦車を
投入する側からすれば、安価な無人ドローンによっ
て「割に合わない損害」をこうむる恐れがでてきま
す。当然、育成に長い時間と多大な費用がかかる戦
車兵と、高額な戦車の実戦投入には慎重にならざる
を得ません。この意味では、安価な対戦車ドローン
にはかなりの抑止効果があると言えます。
しかしそう遠くない将来、遠隔操作の戦闘ドロー
ンが「戦場の無人化」を引き起こし「戦争の敷居」
を低めてしまう状況も考えられます。抑止力を考え
る上でも、兵器の進化は両刃の剣であるようです。
教材ビデオ:
https://www.youtube.com/watch?v=fZvTuNKTW8M&t=648s
(イントロダクションは10:32から始まります)
基本語彙 (カタカナ発音表示はおおざっぱなものです)
Belarus(ベルラーシ)旧ソ連崩壊に伴い独立した
東欧の共和国。
Quadcopter(クワッドコプター)プロペラが4つある
ドローン
Drone(ドローン)無線操縦航空機
シナリオ(11:32から始まります)
The Armed Forces of Belarus have demonstrated
a new quadcopter drone that can carry a tank
killing rocket launcher which carries an RPG-26
single shot rocket that is remotely fired by
the drone operator.
(ベラルーシ軍は対戦車ロケット発射器付き新型ク
ワッドコプターのデモ飛行を行なった。操縦者が遠
隔操作で発射するRPG-26対戦車擲弾を搭載している)
(クワッドコプターのビデオは11:48まで続きます)
英語一言アドバイス:
quadcopterは quad「4つ」とcopter「ヘリコプター」
を繋げた合成語です。4発ヘリと訳しても良いでしょ
う。
発音サイト: quadcopterの発音
https://www.youtube.com/watch?v=2uc4xpV5KQ8
参考サイト
ベルラーシ共和国
https://en.wikipedia.org/wiki/Belarus
(同サイトの日本語版に移行してください)
クワッドコプター
https://en.wikipedia.org/wiki/Quadcopter
(同サイトの日本語版に移行してください)
RPG-26
https://en.wikipedia.org/wiki/RPG-26
(同サイトの日本語版に移行してください)
トップアタック(装甲の薄い戦車上部を狙う)対戦車ミサイル動画
https://www.youtube.com/watch?v=E1VWPOpYbQI
加藤喬(たかし)
●著者略歴
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃(近刊)』(いずれも
並木書房)がある。
追記
「MP5サブマシンガン」
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『AK-47ライフル』
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『M16ライフル』発売中♪
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『ガントリビア99』発売中!
https://www.amazon.co.jp/dp/4890633456/
『アメリカンポリス400の真実!』発売中
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『チューズデーに逢うまで』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063326X
『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320
オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
きょうの記事への感想はこちらから
⇒
https://okigunnji.com/url/7/
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac"
と表現します。
『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
加藤 喬
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最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
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そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。
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