配信日時 2019/12/25 20:00

【防衛予算から読み解く日本の防衛力(17)】防衛関係費(その14) 市川文一(元武器学校長・陸将補)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(17)

防衛関係費その14

市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに

 今年も、残すところわずかとなりました。1年が
過ぎるのもあっという間です。感覚的には1年の長
さが、だんだん短くなっていきます。本連載も、始
めてからあっという間の4か月でしたが、お付き合
い、ありがとうございました。来年も、よろしくお
願いします。

 今回はトランプ(カード)と1年の関係について、
雑学というかチョットした会話のネタを紹介します。
トランプとは本来、切り札のことですが、日本では
トランプというとカードそのものを示します。なぜ
トランプと呼称されるようになったのかはわかって
いないようです。最近ではトランプといえば米国大
統領ですね。

1年とトランプには共通する数字がいくつもありま
す。すぐに思いつくのが4です。1年には春夏秋冬
の四季があります。トランプにはクラブ、ダイヤ、
ハート、スペードの4つのマークがあります。

 四季の次は月です。1年は12か月ですが、トラ
ンプは13までの数字がありますから共通はなさそ
うですが、ジャック、クイーン、キングの絵札が1
2枚で12の数字も共通しています。

 月の次は週です。1年間は52週です。(プラス
1日ですが)トランプの枚数は52枚です。52の
数字も共通しています。

 月の次は日です。1年間は365日です。トランプ
52枚の数字をすべて足すと364になります。最後
は共通しないと思われるかもしれませんが、トラン
プにはジョーカーがあります。ジョーカーを足して
365です。365の数字も共通しています。ところで、
トランプのセットにはジョーカーが2枚入っていま
す。ジョーカー2枚を足すとうるう年の366になり
ます。

1年の四季、月、週、日の数字が、すべてトランプ
の数字で表せるという、チョット面白い話でした。

それでは、よいお年をお迎えください。

▼物件費の内訳(その4 陸・海・空自衛隊の予算)

 研究開発費と基地対策経費等を除く物件費のほと
んどが陸・海・空自衛隊の予算となります。研究開
発費は防衛装備庁の、基地対策経費等は内部部局の
予算となります。残念ながら、パンフレットでは陸・
海・空自衛隊の物件費は掲載されていません。掲載
されているのは、陸・海・空自衛隊の歳出予算です。
パンフレットの58ページになります。

 陸自が18,450億円、海自が12,247億円、空自が
11,012億円です。防衛予算の構造がわからない人が
この予算額を見ると、陸自が沢山の予算を使用して
いると単純に思います。予算の内容はわかりません
から、イメージだけが先行します。これに日本の島
国という地政学的イメージが重なり、今の予算のバ
ランスを変更して海・空重視にすべきだとなってし
まいます。

 本連載の読者であれば、この陸・海・空自衛隊予
算の内訳が「人件・糧食費」、「一般物件費」、
「歳出化経費」であり、歳出予算の40%を占める人
件費が予算のバランスに大きく影響していることに
気がつきますが、通常は数字だけが先行してしまい
ます。陸・海・空自衛隊で手当や階級構成が異なり、
1人あたりの人件費は同一ではありませんが、大き
く異なるわけでもありません。ほぼ、所属人員の割
合と考えて問題ありません。

 人員数は、パンフレットの49ページに掲載されて
います。陸上自衛官が140,155人、海上自衛官が
42,499人、航空自衛官が43,659人で、比率は、62%、
19%、19%となります。この数字は過去から大きく
変化しておらず(陸自の人員がやや減っている)、
3:1:1と覚えておくと良いでしょう。つまり、人件
費も3:1:1で、陸自の予算に占める人件費の割合は、
海・空自に比べて非常に大きいことがわかります。

 自衛官に加えて事務官20,903人の人件費が加わり
ますが、自衛官の所属人員にほぼ比例しますので、
この比率で陸・海・空自衛隊の人件費を求めると、
陸自が約12,900億円、海自と空自が約4,300億円とな
ります。つまり、陸・海・空自の物件費は、陸自が
5,600億円、海自が8,000億円、空自が6,700億円とな
ります。31年度は、海自と空自の予算バランスが極
端に崩れていますが、毎年の予算額を平均すると海
自・空自はほぼ同額で陸自の1.3倍前後になります。
30年度であれば、陸自が5,400億円、海自が7,100億
円、空自が7,400億円です。

いずれにしても、物件費を見るとすでに日本の防衛
費は海空重視になっていることがわかります。しか
も、奈良県を除く、全国の都道府県に駐屯地を置く
陸上自衛隊は、その維持管理にも実員と経費が必要
であり、これ以上の予算の削減は現実的には不可能
です。

今の防衛予算の総額を変えずに、防衛力を海・空重
視にするには陸自の予算を削減するほかはありませ
ん。陸自の予算を削減するためには、予算の多くを
占める人件費や駐屯地の維持管理経費を削減しなけ
ればならず、全国にある駐屯地の集約が必要となり
ます。しかし、災害が多発し、しかも、今まで予測
されなかった地域でも災害が発生するという昨今の
状況で、果たして駐屯地の削減が可能でしょうか。

国の防衛という観点だけから捉えれば、全国の駐屯
地を集約一元化することは可能でしょう。しかしな
がら、平素の災害派遣の態勢を考えるならば、駐屯
地の削減は駐屯地が所在する地域の災害対処のリス
クを高めることになります。どんな地域でも災害が
起こりうる時代に、そのリスクを負えという政治的
決断が日本の政府にできるでしょうか。

陸・海・空自衛隊の歳出予算額だけ見れば、中国の
海洋進出への対処や北朝鮮の弾道ミサイル防衛のた
め、そして新大綱で重視事項とされている宇宙、サ
イバー電磁波等への対応のために、陸自の予算が財
源になりそうですが、防衛予算の構造を理解すれば、
そんなことは不可能であることがわかります。

防衛予算の総額を変えないで、何かを重視しようと
すれば何かを犠牲にしなければなりません。今の防
衛の態勢を維持したまま、何かをプラスで重視した
いなら(宇宙、サイバー、電磁波等)、予算全体を
増やさなければできないことは明らかです。



(つづく)


(いちかわ・ふみかず)


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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。

2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
 https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出

 https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
  https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
 https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
  https://youtu.be/aEOhNJ3twN0

著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
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「不思議で面白い陸戦兵器」(並木書房)
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がある。


 
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