配信日時 2019/12/23 08:00

【桜林美佐の美佐日記(57)】太刀洗平和記念館─山本少尉のB29体当たり攻撃

こんにちは、エンリケです。

「太刀洗飛行場100周年」
ということです。

初めて聞きました。
軍事にまつわるこの種の行事は、
各時各地各処にあるのでしょう。

こういう顕彰を
忘れず大事にする日本人で
あり続けたいです。

ことし最後の「美佐日記」。
さっそくどうぞ。

エンリケ


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桜林美佐の「美佐日記」(57)

太刀洗平和記念館─山本少尉のB29体当たり攻撃

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は今回で57回目です。

 現在の住まいのほど近くにある筑前町立太刀洗平
和記念館、ここは旧陸軍太刀洗飛行場跡で、あの
『特幹の歌』に歌われたように数々の特攻機を送り
出した場所です。

 この平和記念館には、実は何年も前に一度訪れた
ことがあり、なかなか不便な場所だけに、再び観る
機会はないのだろうなと思っていたのですが、まさ
かこうして目と鼻の先のような場所に住むことにな
るとは夢にも思いませんでした。

 今年は太刀洗飛行場100周年という年で、その
ような記念すべき時期にここに住んでいることは得
難いことだと思っています。

ここには「回天制空隊」の山本少尉についての展示
があります。制空隊というのは、大戦の末期にB2
9爆撃機による空襲が激しくなり、それに体当たり
して撃墜せんとした部隊のことです。

 場所によっては「震天(してん)制空隊」と呼称
された部隊もあったようです。

B29は高度1万メートル近くでも高速で安定した
飛行ができたということですが、この高度にはわが
方の高射砲は届かず、また戦闘機もここまでの高度
では安定飛行ができませんでした。

 高性能で高出力エンジンを備え、当時では最新技
術の「与圧」(機内を密閉し圧力をかけることで地
上と同じ温度を維持する)が取り入れられていたこ
とからB29の搭乗員は軽装で地上とほとんど変わ
らない状態での作戦遂行が可能だったようです。

 これら制空隊の戦果としては、大半はB29の防
御火器が強固なものである上に、高高度のB29に
接近することすらままならない場合が多く、体当た
りに成功してもB29が墜落しないこともあったと
いいます。

 2回の体当たりを受けても墜落せずに生還した機
体もあったのだそうです。

 連日の空襲に苦しみ、そんな破れかぶれの作戦で
日本本土を守るしかなかった昭和20年4月18日、陸
軍飛行第四戦隊の山本三男三郎(みおさぶろう)少
尉(当時23歳・新潟県佐渡島出身)が、二式複座
戦闘機「屠龍(とりゅう)」で現在の福岡市東区に
ある雁ノ巣(がんのす)飛行場から飛び立ち、特攻
を敢行しました。

 山本少尉は福岡県・小郡市の上空でB29の編隊
を見つけると通常火器で応戦した後、編隊の最後尾
の1機に体当たりします。

 山本少尉はパラシュートで脱出しましたが、途中
で米機の機銃掃射を受け、久留米市の陸軍病院に運
ばれます。

意識が遠のくなか「Bは落ちたか?」「山本の勝利
か?」と何度も繰り返し、とうとう絶命したといい
ます。

 事実、B29は空中分解し、民家に墜落、民家の
防空壕に退避中の家族など住民6人が死亡し、B2
9の搭乗員11人全員も戦死しました。

そのうちのひとりは若い女性の通信士で、発見した
地元の人たちは大変なショックを受けたそうです。

ご遺体は小郡の公共墓地に埋葬されたといいます
(戦後、米軍により回収されたと思われます)。

太刀洗平和記念館には、亡くなった米軍側の兵士た
ちの遺影も鎮魂の部屋に展示されていて、山本少尉
のご遺族は記念館を訪れるたびに米兵の遺影の前に
も花束を供えていくということでした。

 B29が墜落した場所は、車でよく通っていまし
たが、記念館でこの史実に触れるまで、このような
ことがあったとは全く知りませんでした。まだまだ
九州での発見が続きそうです。

 さて、今年の美佐日記はこれでおしまいです。ま
た来年にお会いしましょう!
 皆さまにとって新しい年が素晴らしいものとなり
ますように! 良いお年を!


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る「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊幸 元海
将に解説して頂きます。

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(つづく)



(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリ
ーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(PH
P研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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(代表・エンリケ航海王子)
 
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