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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(16)
防衛関係費その13
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
先々週の15回目の連載で、「軍事研究」12月号の
「小火器弾薬は輸入すべき」という記事に対する反
論をしました。「軍事研究」の読者が本メルマガの
読者であれば前回の記事で認識を変えることができ
るでしょうが、本メルマガ読者以外は、この「小火
器弾薬は輸入すべき」という主張が正しいと勘違い
してしまうでしょう。
過去にも、各種媒体に「小火器弾薬や小火器は輸入
すべき」という意見がたびたび掲載され、これが正
論のようになってしまったという現実があります。
防衛省と財務省との予算編成の調整でも、小火器弾
薬や小火器は輸入にすべきか国産のままがいいのか
の議論が何度となく繰り返されてきました。これも、
各種媒体での「小火器弾薬は国産にすべき」という
主張が少なく、「小火器弾薬は輸入すべき」との主
張が一方的に繰り返されてきたことが大きな要因と
なっているのは間違いありません。
小火器弾薬を国産にする必要性は、実際に弾薬を扱
った者でなければわからないことが多々あります。
つまり、自衛官OBでなければ実感としてわからな
い分野です。これらを、しっかりと伝えていくのも
我々の責任であると思われます。そこで、本メルマ
ガだけではなく「軍事研究」にも反論を投稿するこ
ととしました。反論の内容については、先々週のメ
ルマガの記事を核として大幅に加筆しました。
実際に掲載されるかどうかは編集部の判断となりま
すが、投稿した事実については本連載の読者にお伝
えしようと考えました。
▼ 物件費の内訳(その3 装備品の取得経費と修理費)
物件費(契約ベース)は、人件費以外の買い物予
算です。パンフレットではグラフ3です。31年度予
算では、総額が33,821億円で、そのうち、防衛装備
品(兵器)の金額は装備品等購入費7,017億円、航
空機購入費3,432億円、艦船建造費1,724億円の合計
12,173億円となります。
艦船も航空機も防衛装備品に含まれますが、わか
りやすいように外出しにされています。艦船、航空
機以外の装備品等は、火器(戦車、火砲、戦闘車等)、
車両、弾薬、誘導弾、通信機材、施設機材等です。
それぞれ、陸・海・空自衛隊の予算の合計ですから、
装備品等購入費が陸自の予算、航空機購入費が空自
の予算、艦船建造費が海自の予算ではありません。
たとえば、航空機は陸・海・空自衛隊が保有してお
り、弾薬や誘導弾も陸・海・空自衛隊で使用します。
これに対して、防衛装備品を維持管理する修理費
は10,726億円です。防衛装備品は、一般に使用され
る自動車や家電製品に比べると過酷な環境で使用さ
れるため故障しやすく交換部品も高額なことから、
維持管理に多額の経費が必要であることは間違いあ
りませんが、本体の購入費用と維持管理に必要な経
費がほぼ同額であるのは異常な状態です。
この状況は、以前から常態化されています。5年
前の26年度予算では防衛装備品の購入費9,565億円
に対し修理費が8,794億円、10年前の21年度予算で
は防衛装備品の購入費7,224億円に対し修理費が8,8
86億円、15年前の16年度予算では防衛装備品の購入
費9,001億円に対し修理費が7,090億円、20年前の11
年度予算では防衛装備品の購入費8,113億円に対し
修理費が6,648億円です。17年度から22年度の間は
購入費と修理費が逆転しています。
30年前の平成元年度は、防衛装備品の購入費
10,207億円に対し修理費が4,400億円ですから、30
年前はまともな状況であったことがわかります。装
備品が高性能化して維持管理に必要な経費が増加す
るのに防衛費は増額されないため、装備品購入のた
めの経費を削って修理費を増額した結果が現在の状
況です。装備品購入費を減らすことにより古い装備
品を長期間使うことになります。装備品が古くなれ
ば故障も増え、ますます修理費が必要となります。
完全に負のスパイラルに入ってしまっています。
このような状況を改善するためには、装備品を稼
動させないか、防衛費を増やすしか方法はありませ
ん。防衛省内では、以前から、装備品の取得等に関
しての合理化・効率化(装備品単価の低減や定期整
備のコスト低減等)を図り、この負のスパイラルを
改善しようとしていますが、根本的な問題解決には
至っていません。それは、現在の防衛予算の内訳を
見れば明らかです。
確かにここ数年は、修理費が装備品購入費を上回
ることはなくなりましたが、平成元年のように修理
費が装備品購入費の半分以下にするためには大幅な
防衛費の増額なくしては、あり得ません。また、前
回も説明しましたが、このような予算構造(装備品
の購入費と修理費が同額)でも修理費は不足してい
ます。
前回指摘したのは、装備品が故障してもすぐに直す
ために必要な一般物件費の修理費が不足していると
いうことです。ただし、一般物件費の修理費の不足
は新規後年度負担で補うことになり、新規後年度負
担の「修理費」が圧迫されます。つまり、新規後年
度負担の修理費が圧迫されると定期点検や定期整備
が先送りになり装備品の不可動期間が延びます。
しかも、ここ数年で新しい装備品を次々に導入して
います。オスプレイや、F35、イージスアショア、
グローバルホークなど高性能な装備品が大量に導入
されています。これらの装備品を維持するためには、
多額の修理費が必要となります。特に、航空機やシ
ステム装備品は定期点検や定期整備が必須です。現
在の修理費が不足している状態にさらに拍車がかか
るでしょう。
たとえば、陸自が導入したオスプレイの維持管理に
必要な修理費は、オスプレイ導入前の陸自の航空機
を全て維持管理するのに必要な修理費と同額程度が
必要だと言われています。オスプレイの導入に伴い、
他の航空機が全てなくなるわけではありません。つ
まり、オスプレイ導入後は、陸自の航空機の修理費
を1.5~2倍にしないと航空機が稼動できないという
ことです(オスプレイ導入に伴い削減する航空機の
数により変化する)。
デフレ・スパイラルに入った日本経済が、なかな
か負のスパイラルから抜けられなかったように、装
備費購入費と修理費の関係を変えることも簡単では
ありません。安倍政権が、3本の矢として日本経済
に強力なカンフル剤を打ったように、防衛費の大幅
な増額なくして、負のスパイラルから抜け出ること
はできないでしょう。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
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がある。
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