配信日時 2019/12/06 08:00

(最終回)【短期連載・日露戦争海戦史概説(後編)】「黄海海戦と日本海海戦」長南政義(戦史研究家)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
合わせは以下よりお気軽にどうぞ
 
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WEB http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは、エンリケです。

きょうの配信でこの連載は終了です。

最後は「日露戦争海戦史概説後編 黄海海戦と日本
海海戦」です。

お忙しい中、貴重なコンテンツを提供くださった
長南さんに心より感謝申し上げます。
ありがとうございました。

さっそくどうぞ。


エンリケ


長南さんへの感想や疑問・質問やご意見は、
こちらから⇒ https://okigunnji.com/url/7/

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短期4回連載(最終回)
日露戦争海戦史概説(後編)

黄海海戦と日本海海戦

長南政義(戦史研究家)
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□はじめに

 こんにちは。戦史学者の長南政義です。12月に
入り今年もあとわずかですね。今年は、新史料と軍
事学的知見を駆使して児玉源太郎の生涯を詳述した
6月発売の『児玉源太郎』(作品社)と、11月に
数年ぶりに増刷された『新史料による日露戦争陸戦
史』(並木書房)を刊行しました。みなさまのおか
げで、二冊ともにアマゾンの日本史「明治・大正時
代」部門の1位を獲得できました。応援いただいた
みなさまには心より御礼申し上げます。

『児玉源太郎』
 長南政義(著)
 作品社(発行)
 427ページ
 ⇒ https://amzn.to/34NByrU

『新史料による日露戦争陸戦史 覆される通説』
 長南政義(著)
 並木書房(発行)
 A5判上製/函入り/772ページ
  ⇒ http://okigunnji.com/url/65/

 また、拙著『新史料による日露戦争陸戦史』です
が、東京大学大学院教授の加藤陽子先生の新著『天
皇と軍隊の近代史』(勁草書房)第1章3節「日露
戦争研究の現在」で、「近年の注目すべき研究」と
いう評価を戴きました。拙著を機に、日本の学界で
これまで学問視されてこなかった戦史研究に対する
認識が改まり、研究が活発化することを願っていま
す。

 本連載は今回で終了となりますが、ご愛読いただ
きましたみなさまには心より感謝申し上げます。ま
たの機会にお目にかかれること楽しみにしています。

 では、今週の記事に入りたいと思います。


▼黄海海戦と日本海海戦

日本軍を悩ませたのが、イェッセン海軍少将率いる
ウラジオストック巡洋艦隊が展開した神出鬼没の通
商破壊作戦である。ウラジオストック巡洋艦隊によ
る通商破壊作戦により、後備近衛歩兵連隊の将兵を
乗せた「常陸丸」が撃沈され、攻城砲兵司令部が乗
る「佐渡丸」が撃破されるなど、日本の船舶に大き
な被害が出ていたのだ。

ウラジオストック巡洋艦隊撃破の任務に就いていた
のが上村彦之丞率いる第2艦隊であったが、悪天候
などの理由から敵艦隊をなかなか捕捉できなかった。
そのため、上村艦隊は「露探〔ロシアのスパイ〕艦
隊」だとか、「濃霧を理由にするが濃霧を逆に読め
ば無能ではないか」などと国民から非難された。

だが、8月14日、上村は蔚山沖海戦でウラジオス
トック巡洋艦隊を撃破することに成功した。蔚山沖
海戦に先立つ8月10日には、聯合艦隊が黄海海戦
で旅順艦隊を撃破したものの、丁字作戦の失敗もあ
って旅順艦隊に逃げられてしまい敵艦隊を撃滅する
に至らず、聯合艦隊は旅順口封鎖を継続し、第3軍
は旅順強襲攻撃を強行しなければならなかった。な
お、聯合艦隊司令部は黄海海戦の教訓を日本海海戦
に活かしている。

10月14日にリバウ軍港を解纜(かいらん)した
バルチック艦隊が、明治38年1月頃には日本近海
に到着し旅順艦隊と合流すると、海軍は予想してい
た。バルチック艦隊到着前に聯合艦隊は艦船を修理
し乗員を休養・訓練させる必要があり、御前会議に
おいて旅順攻略の期限が12月10日頃までと決定
された。そのため、準備不足にもかかわらず第3軍
は旅順攻略を急がされた。

第3回総攻撃でも旅順は陥落しなかったため、聯合
艦隊参謀秋山真之は、「総攻撃不成功の上は最早2
03高地占領の外、他に策無し」とまで述べている。
第3軍司令部は東北正面堡塁攻略から203高地攻
略に方針を一時的に転換して203高地を占領し、
旅順艦隊の撃滅を確実にすることに成功した。

聯合艦隊は、ウラジオストックを目指すバルチック
艦隊の航路として、対馬海峡経由、津軽海峡経由、
宗谷海峡経由の3つを想定していた。聯合艦隊の会
議は北上論に傾きかけたが、第2艦隊参謀長藤井較
一の強い主張により北上が中止され、聯合艦隊はバ
ルチック艦隊捕捉に成功し、天候により連繋水雷攻
撃策が中止されるなどしたものの、上村彦之丞の独
断や黄海海戦の失敗の教訓化もあり、水雷艇3隻損
失のみでバルチック艦隊をほぼ壊滅(聯合艦隊は戦
艦6隻・装甲巡洋艦2隻を含む16隻を撃沈、バル
チック艦隊38隻中目的のウラジオストック到着艦
は3隻)させることに成功した(日本海海戦)。

そしてこの日本海海戦の完勝が講和の契機を作出し
た。この後も陸上戦闘は継続したが、日露戦争は海
戦により始まり海戦で終わったと言っても過言では
ないのである。


(おわり)


(ちょうなん・まさよし)


『新史料による日露戦争陸戦史 覆される通説』
 長南政義(著)
 並木書房(発行)
 A5判上製/函入り/772ページ
  ⇒ http://okigunnji.com/url/65/


長南さんへの感想や疑問・質問やご意見は、
こちらから⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 


長南政義(ちょうなん・まさよし)
戦史研究家。宮城県生まれ。國學院大學法学研究科
博士課程前期(法学修士)及び拓殖大学大学院国際協
力学研究科安全保障学専攻(安全保障学修士)修了。
國學院大學法学研究科博士課程後期単位取得退学。
論文に「史料紹介 松川敏胤の手帳・年譜―満洲軍
参謀松川敏胤が語った日露戦争「日露戦争ノ勝敗ヲ
逆睹シタルヤ」―」『國學院法研論叢』第36号(國
學院大學大学院法学研究会、2008年)、「史料紹介
 陸軍大将松川敏胤の手帳および日誌―日露戦争前
夜の参謀本部と大正期の日本陸軍―」『國學院法政
論叢』第30輯(國學院大學大学院、2009年)、「陸
軍大将松川敏胤伝 第一部 ―補論 黒溝台会戦と
松川敏胤~満洲軍総司令部の不覚~」『國學院法研
論叢』第38号(2011年)など多数。
著書に『坂の上の雲5つの疑問』(並木書房、2011年、
共著)、伊藤隆・季武嘉也編『近現代日本人物史料
情報辞典』3巻・4巻(吉川弘文館、2007年、2011年、
共著)、『復刻版 日清戦況写真』(国書刊行会、201
3年、解説)、『日露戦争第三軍関係史料集 大庭二
郎日記・井上幾太郎日記で見る旅順・奉天戦』(国
書刊行会、2014年、編集)、『児玉源太郎』(作品
社、2019年)がある。



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