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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(15)
防衛関係費その12
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
最近の月刊誌『軍事研究』に小火器弾薬は輸入す
べきだという記事が掲載されていました。装備品を
輸入すべきという意見は過去から絶えることなく繰
り返されていますが、その最も大きな理由は価格で
す。記事では小銃弾の価格が諸外国の3倍と紹介さ
れていましたが、何年前の価格なのでしょうか。
最近ではメーカーの価格低減努力により、輸入弾
と遜色ない価格になっています。また、輸入弾には
欠品や不良品の混入が多いことについて、問題がな
いレベルと述べられていましたが、自衛隊の実射訓
練の実情を全くわかっていない指摘です。
確かに、実戦を考えれば問題のないレベルでしょ
うが、実弾を使った実射訓練では全く事情が異なり
ます。実射訓練では撃ち殻薬莢を全数回収します。
なければ出てくるまで捜索します。もし、「撃たれ
ていない実弾が悪意のある人に拾われたら」「隊員
が抜き取ったとしたら」という最悪の事態を想定し
ています。ところが、製造段階ですでに1発足りな
ければ、探しても100%出てきません。
日本のメーカーでは重量測定やX線撮影などによ
り、ほぼ100%の保証を提供しています。これを
海外メーカーに義務づけたら、価格は跳ね上がりま
す。品質に関しても何重ものチェック(最後は目視
検査)によりほぼ100%品質を保証しています
(世の中には絶対はありませんから、「ほぼ」を付
けていますが)。高いスキルを持った人の目視検査
は、機械の精度をはるかに上回ります。ここまでの
保障をした上での価格であることを認識すべきです。
日本では他国と国内での訓練環境が全く異なりま
す。在日米軍で事故があったときの対応が問題とな
るのは、日米での訓練環境の違いが異なるからです。
日本国内では、自衛隊の訓練事故に対して敏感です。
演習場も狭く、民家が隣接しているのも国民の不安
要素です。
また、日本人の国民性の問題もあります。自衛官は、
品質も当然のことながら、外観にも非常に神経を遣
います。これが、日本の訓練環境と相互作用して1
00%の信頼性を追求します。極端な話、薬莢のち
ょっとした傷でも気にします。これらのニーズにも
日本のメーカーは対応します。
装備品を国産にするのか輸入にするのかの議論では
価格のことしか取りあげられません。日本の特殊な
国内事情と装備品導入後の維持管理、継戦能力につ
いての分析は完全に欠落しています。
▼物件費の内訳(その2 修理費の不足)
自衛隊で使用する装備品は定期点検や定期整備以外
はすべて稼動する(故障していない)ことが基本で
す。家庭においても、車が故障して動かない、テレ
ビが映らない、エアコンが動かないまま放置されて
いるということは、特殊な状況です。生活に必要な
ものは壊れたら修理するか買い直します。ところが、
自衛隊においては装備品が故障しても修理して直る
のが1年越しとなることがあります。
装備品が故障した場合、通常、修理用の部品が必要
となります。故障した装備品をすぐに修理するには
部品を在庫として保有する必要があります。かとい
ってすべての部品を保有するのは経費と保管場所の
関係で非効率です。また、故障しやすい部位も限ら
れますから、よく使用される部品をしっかり管理し
て保有することで、故障した装備品の修復率を高く
します。
在庫管理の手法でABC分析がありますが、その中
に80:20の法則があります。修理部品の管理に
適用すると、20%の部品をしっかり管理して保有
すれば、故障した装備品の80%を修理できるとい
うことになります。当然、装備品の種類や保有する
数量、経過年数などによって数値は変わりますが、
1つの目安としては使える数値です。
つまり、20%の部品を常時保有し、装備品が故障
した際は保有部品で修理するのを基本とします。保
有する部品で修理できない、つまり保有していない
残り80%の部品が必要な場合は、そのつど調達す
るということになります。この調達に使用する経費
が一般物件費の「維持費等」約4,000億円のうちの
「修理費」約1,700億円です。一般物件費は歳出予算
のため、年度内に部品が入手できます。
これに対して、20%の常時保有する部品(以後、
保管部品と呼ぶ)や定期的に交換しなければならな
い部品は、新規後年度負担の修理費9,010億円(契
約ベースの物件費10,726億円から一般物件費の修理
費1,716億円をマイナスする)で前もって取得するこ
とが可能です。新規後年度負担の修理費は、計画整
備や定期整備、定期点検でも使用しますので20%
の保管部品を取得するためだけには使用できません。
当然、定期点検、定期整備が優先されます。
計画整備、定期整備、定期点検の違いですが、定期
整備、定期点検は法令で一定期間又は一定時間使用
したら点検、整備することが義務づけられているも
のです。生活で身近なものでは車の定期点検や車検
整備です。特に航空機の場合は、トラブルが、即、
飛行中の航空機の墜落につながるため、極めて厳格
に定められています。車両等の定期整備は整備期間
が短いため、通常、一般物件費が使用されます。計
画整備は、それ以外の数年~十数年ごとに行なう整
備です。
さて、ここで問題となるのが、一般物件費の「修理
費」1,716億円で、保有していない80%の部品がそ
のつど調達できるかどうかです。一般物件費で足り
ない場合は、新規後年度負担で調達するしかありま
せん。新規後年度負担で調達した場合は部品の入荷
が早くても次年度となり、長期間故障したまま放置
せざるを得ません。2国の場合、年度末の故障であ
れば次年度当初に部品が入荷でき一般物件費の場合
とほとんど変わらず修理できますが、年度初めの故
障であれば1年間修理することができません。これ
が3国であれば1~2年間修理できないことになり
ます。
現在、防衛省のホームページで確認できる年度予算
パンフレットは平成12年度版です。約20年前ですが、
一般物件費の「修理費」は1,785億円です。この20
年間で装備品は性能も機能も高まり、装備品が故
障したときの修理にかかる経費も上がると考えるの
が一般的ですが、予算額は変わっていません。
一方、新規後年度負担の「修理費」は4,825億円で
す。この20年間で2倍近くに増えています。単純に
考えると、20年間で装備品の修理にかかる経費が2
倍近くになっているということになります。防衛予
算の数字は誤魔化しがききません。一般物件費の
「修理費」が変化していないというのは、何か問題
があると考えるのが普通です。つまり、保有してい
ない80%の部品がそのつど調達できず、一部を新
規後年度負担で補っているため一部の装備品が長期
間稼動できない状態になっていると考えるのが妥当
でしょう。
現実にどの程度の装備品が稼動できない状態にあり、
日本の安全保障環境にどのような影響があるのか、
国の防衛上の秘密に抵触しない範囲でしっかりと議
論すべき問題です。
装備品の稼動状況については、「修理費」を増額す
れば、ほとんど問題が解決されます。防衛上の秘密
を理由に問題を放置することの方が、日本の安全保
障に与える影響ははるかに大きいことに早く気づく
べきです。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
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