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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんにちは、エンリケです。
「我が国の歴史を振り返る
―日本史と世界史に“横串”を入れる―」
は66回目です。
毎回毎回目からうろこの記事が続きます。
中でも今回の記事は白眉ではないでしょうか?
WW2前夜の欧州状況を、
これほど簡潔に
これほどわかりやすく
これほど正鵠を射た形で
これほど真実を描いた
記述はないと思いますね。
歩きながら、
休みながら、
通勤の行きかえりの電車の中で、
スマホをながめながら
出勤前、仕事前の朝のチェックのひと時に
ホッと一息ついた就寝前のひと時に、
PC、スマホを眺めながら、、
「正確な」「真実の」歴史状況が
いますぐ頭に入るなんて!
何と画期的なのでしょう!
スミマセン、
興奮のあまり
長くなってしまいました。
さっそく宗像さんの本文をどうぞ
こんな歴史を学生時代に学びたかったです。
すごいです。
エンリケ
追伸
戦後日本で吹聴され、歴史の真実を固く覆ってきた
「歴史常識」が粉々に粉砕される悦びも大きいですね。
ご意見・ご感想はコチラから
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我が国の歴史を振り返る
─日本史と世界史に“横串”を入れる─(66)
危機迫る“欧州情勢”
宗像久男(元陸将)
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□はじめに(“些細な出来事”について)
歴史を研究しますと、はじめは“些細な出来事”
(と思ったこと)がその後の“壮大な歴史のうね
り”に発展することがよくあることに気がつきま
す。「事の始まりとはこのようなものか」といつも
考えさせられますが、最近の“些細な出来事”を取
り上げてみましょう。
11月24日、香港区議会の選挙があり、民主派
が8割超の圧倒的勝利を獲得しました。当事者たち
が「これはデモでなく、中国から自由を守るための
戦争だ」とする一連のデモ騒動が多大な犠牲を払い
つつここまで発展してきたのです。しかし、香港区
議会の権限は限定されており、予算の審議権もあり
ません。行政長官の選挙でも職業別団体や立法会枠
が大半を占め、数で言うと区議会枠はわずか約1割
にしか過ぎないとのことで、香港の統治体制に変化
を与えるまでには至らないようです。
それでも、「この先はどうなるのだろう」と思案
していた矢先、中国の新疆ウイグルの「職業技能教
育訓練センター」(収容所)に関する共産党の内部
文書が流出したというニュースを見つけました。1
00万人以上のウイグル人が強制収容されていると
いわれる同センターにおける人権無視の思想教育な
どについては、これまで何度も批判されていました
が、この内部文書によって、ウイグル人監視のため
にAIネットワークなどの事実が明らかになりまし
た。
問題の深刻さは、それら事実の暴露に加え、内部文
書が流出したことにあるのは明白です。さっそくウ
イグル自治区政府は「完全な捏造だ」と否定してい
るとのことですが、当局の慌てぶりが目に浮かぶよ
うです。
「ウイグルの次は香港人改造か」とささやかれて
いた折、米国においては、上下院両院ともに与野党
が一致して通過させた「香港人権民主法」案にトラ
ンプ大統領が署名し、同法が成立しました。香港の
人権侵害に強い警告を発している同法に対して、当
然ながら、中国は「断固として反撃」と猛反発して
おります。
米中には貿易協議もあり、それへの影響も含め、
香港問題は今や米中問題に発展しつつあります。双
方が相譲れない「人権」が焦点であり、“人類の未
来をかけた戦い”に発展する可能性もあります。よ
って、引き続き緊張感をもって注目し、可能な対策
を今から講じておく必要があるとだれもが考えるの
ではないか、と私は思います。
しかし、我が国の政治家の先生方やマスコミは違い
ます。前回紹介しました韓国、最近の北朝鮮の挑発、
さらにはこれら米中の動きなど、歴史の大きなうね
りに発展しそうな事象が起きていることに目を閉じ、
耳をふさぎ、日々何を議論しているのか、そして何
を煽っているのかと繰り返すだけでも呆れます。こ
のような状況下では、仮に近未来に周辺国に何かが
起きた際に最も慌てふためくのは我が国であろうこ
とは明白でしょう。
その際に、「政府は何をしていたのか」などと自分
たちがやっていたことを棚に上げた無責任な発言は
決して許さず、二度と国会に送ることなどないよう
な“賢い国民”でありたいものです。
▼危機迫る“欧州情勢”
我が国が「支那事変」の泥沼に陥り、身動きが取
れない状況になっていた頃、再び戦争の危機が迫っ
ていた欧州情勢に触れておきましょう。まさに欧州
においては、第1次世界大戦もそうでしたが、第2
次世界大戦においても、はじめは“些細な動き”が
やがて大戦にまで発展したのでした。これら一連の
動きから様々な教訓を学ぶことができると考えます。
ナチス・ドイツが1935年に「ヴェルサイユ体
制」を破棄して再軍備を宣言し、37年に、非武装
地帯と定められていたラインラント進駐を断行した
ことなどは前回触れましたが、38年には、「サン
=ジェルマン条約」(第1次世界大戦後の1919
年、連合国とオーストリアの間で結ばれた条約)に
よって禁止されていたオーストリアとの併合を実現
します。ヒトラーが“ドイツの生存圏”主張し、次
々にそれを実行していくのです。
この間、英仏は、欧州に圧力を強めつつあったソ
連・共産主義の脅威に対してドイツが矢面になって
対抗してくれることを期待して、有名な“宥和政策”
をとることに終始します。
まさに、敗戦国ドイツに広大な領土割譲と多額な賠
償金を背負わせた「ヴェルサイユ体制」がソ連・共
産主義の出現とヒトラーの巧みな戦略の前にもろく
も崩れ去ろうとしていたのです。
第2次世界大戦までの道程を考える時、必ずと言っ
ていいほど、イギリスのネヴィル・チェンバレン首
相が宥和主義者として “やり玉”にあがりますが、
彼は彼なりに欧州の平和を真剣に考え、包括的な安
全保障を実現しようとしていたといわれます。当然
と言えば当然です。欧州の人々は第1次世界大戦の
経験から極端に戦争を嫌っていましたし、当時のイ
ギリスはドイツに対していかなる脅威も感じていな
かったのです。
1938年、ナチス・ドイツに脅威を感じたチェ
コスロバキアが動員します。当時のチェコ陸軍は4
3個師団、そのうち35個師団が近代兵器によって
高度に機械化されていました。これに対して、ドイ
ツ軍は歩兵が23個師団、機甲化・騎兵など5個師
団、しかもその大部分は訓練課程を修了していない
兵士たちからなり、予備兵の中にも使い者になるも
のがほとんどいない状態でした。つまり、ドイツに
はチェコ戦を戦う能力がないのは明らかで、チェコ
の動員がヒトラーの攻勢を踏み留ませる結果となり
ました。
このチェコの強硬姿勢とヒトラーの自制という構図
が全く逆のメッセージを国際社会に与えることにな
ります。戦争の発生を回避するために、チェンバレ
ンはあらゆる外交ルートを通じて、ドイツを懐柔す
るとともにチェコに柔軟姿勢をとるよう求めます。
具体的には、懲罰的にドイツからとりあげ、チェコ
スロバキアに与えたとして「ヴェルサイユ体制」の
“不正の象徴”といわれたズデーテン地方をドイツ
に戻すようチェコを脅迫するのです。
その背景には、第1次世界大戦の戦後処理を巡って、
ドイツに対するイギリスの同情のようなものがあっ
たともいわれますが、フランスは、ドイツへの同情
よりも新たな戦争が起こり、再び戦争によって国土
が蹂躙される恐怖が上回ったのでした。
当時のフランスは、70師団以上を動員できる能力
があり、ドイツを恐れることはなかったのですが、
第1次世界大戦の戦いの失敗や成年人口の半数が死
傷した戦争の記憶がフランスを臆病にさせたのでし
た。
チェコは、英仏の圧力によって、軍事的優位にあ
るにもかかわらずズデーテン地方の「自治案」を呑
みます。しかし、ヒトラーは、チェンバレンに対し
て「自治案では問題にならない。直ちに占領し、割
譲しなければならない」と要求したのです。
チェンバレンがこの時点でヒトラーの邪悪さを見
抜き、英仏がチェコ側に立って軍事行動に出れば、
ドイツは一撃のもとに粉砕され、第2次世界大戦は
起こらなかったに違いありません。
しかし、チェンバレンはさらなる“妥協の道”を
探り始めます。チェコ、フランス、イギリスが動員
を始める一方で、こともあろうに、イタリアのムッ
ソリーニに仲介を求め、「ミュンヘン会議」(19
38年9月)を開催します。ここで、「これ以上領
土要求をしない」との約束を交わす代償としてヒト
ラーが望むすべてを与え、会議への参加を許されな
かった哀れなチェコに与えるべき妥協を容赦なく取
り上げてしまいます。
この結果、ヒトラーは、ズデーテン地方を割譲しま
すが、英仏の権威低下を目前にして、ポーランドと
ハンガリーがドイツにすり寄る姿勢を見せ、ハイエ
ナのようにチェコから領土をかすめ取ろうとします。
こうして、1939年3月、ヒトラーは、ポーラン
ドとハンガリーと組んでチェコを解体させ、35個
師団余りの敵兵力を消滅させたばかりか、チェコの
重工業を手に入れることによってドイツ軍の装備を
飛躍的に向上させたのでした。
フランス首相のエドゥアール・ダラディエは、「ミ
ュンヘン会議」を終え、暗澹たる気分で帰国の途に
つくと、(戦争を回避したとして)国民の思いがけ
ない熱狂的な歓迎を受けます。「愚か者どもめ、自
分たちが何を歓呼しているかも知らないで」とつぶ
やいたと伝わっています。それから1年も経たない
うちにパリは陥落します。
▼第2次世界大戦勃発
英仏が自らの手で同盟国を抹殺して差し出す様子を
見て、「頼りにならない」ことに最も失望したのは
スターリンでした。英仏と同盟交渉を進めながら、
ナチス・ドイツとも秘密交渉を開始します。ヒトラ
ーは、我が国との同盟交渉もそうでしたが、“利益
になる条約なら誰とでも結ぶ意思”を持っていまし
た。
他方、チェンバレンは、チェコの消滅を機に突然、
“対独強硬路線”に転換します(今日でもその理由
が不明といわれています)。39年3月末、ヒトラ
ーは、ポーランドにダンツィヒ(現グダニスク:旧
ドイツの飛び地)回廊を要求しますと、イギリスは、
ポーランドと同盟条約を結び、ポーランド防衛の意
志を示します。
当時のポーランドもまた、ヒトラーの犠牲になるよ
うな小国でなく、領土的野心もある大国でした。ヒ
トラーは対ソ連戦略のために真剣にポーランドと同
盟を結ぶ用意があり、ダンツィヒという両国の懸念
を処理しようとしていただけといわれます。他方、
ポーランドは、ドイツともソ連とも同盟を結ぶ意思
がなく、戦意も旺盛、ソ連の自国通過を含むソ連・
英仏と対独共同行動を拒否し、その構想を頓挫させ
ていました。
このポーランドとイギリスの同盟は、ポーランドの
利害を別にするドイツとソ連両国の利益を瞬時に一
致させます。1939年8月、ソ連とドイツは「不
可侵条約」を発表し、その付帯条項によってポーラ
ンドを両国で分割しようとします。これに対して、
イギリスとフランスがドイツに宣戦布告し、第2次
世界大戦が勃発するのです。
▼「欧州情勢は複雑怪奇!」
前回、我が国が三国同盟の締結に向けて閣内が分裂
していたことを取り上げましたが、欧州情勢が変転
し、ついに「独ソ不可侵条約」が締結されるや、平
沼内閣は、三国同盟交渉の打ち切りを決定し、「欧
州情勢は複雑怪奇」との名言を残して総辞職します。
上記のように、ヒトラーやスターリンのしたたかな
戦略やチェンバレンの君子豹変など欧州諸国の“機
微な動き”を地球の反対側からウオッチできるわけ
がありません。のちには、現地で勤務していた外交
官や武官らも判断を間違い、我が国の命運を狂わす
ことになります。
平沼首相の後継には、元陸軍大将で予備役に編集さ
れていた阿部信行首相が誕生します。阿部首相は、
「ドイツとの軍事同盟締結は英米との対立激化を招
く」として大戦への不介入方針を掲げます。しかし、
陸軍などの反対があって翌1940年(昭和15)
年1月には首相を辞任してしまいます。
次回、時代を少しだけさかのぼりつつ、「ノモンハ
ン事件」に至るソ満国境問題を整理して振り返りま
しょう。
(以下次号)
(むなかた・ひさお)
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学
校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロ
ラド大学航空宇宙工学修士課程卒。
陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕
僚副長、第1高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、
第6師団長、陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て
2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。
2018年4月より至誠館大学非常勤講師。『正論』
などに投稿多数。
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発行:
おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
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