配信日時 2019/11/29 08:00

【短期連載・日露戦争海戦史概説(前編)】「仁川沖海戦と旅順口閉塞作戦」長南政義(戦史研究家)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんにちは、エンリケです。

本連載も折り返し点を迎えました。
きょうからは「日露戦争海戦史概説」です。

さっそくどうぞ。


エンリケ


長南さんへの感想や疑問・質問やご意見は、
こちらから⇒ https://okigunnji.com/url/7/

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短期4回連載
日露戦争海戦史概説(前編)

仁川沖海戦と旅順口閉塞作戦

長南政義(戦史研究家)
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□はじめに

 こんにちは。戦史学者の長南政義です。みなさま
のおかげで、拙著『新史料による日露戦争陸戦史』
ですが、重版後の売れ行きが好調で、11月25日午
前11時の段階で、アマゾンの日本史「明治・大正」
部門の1位を獲得しました。その後も本記事執筆中
まで1位から3位の間を行き来しております。高額
な専門書がこのような順位を記録するのは稀なこと
で、これも応援いただいているみなさまのおかげと、
心より感謝いたしております。

『新史料による日露戦争陸戦史 覆される通説』
 長南政義(著)
 並木書房(発行)
 A5判上製/函入り/772ページ
  ⇒ http://okigunnji.com/url/65/


 さて、先日、大分県宇佐市に鎮座する宇佐神宮の
参拝に参りました。その往路、大分自動車道で、陸
上自衛隊第42即応機動連隊所属の16式機動戦闘
車の後方を走行する機会が御座いました。以前、九
州自動車道でトレーラーに積載されて運搬中の戦車
を目撃することがあったのですが、機動戦闘車も戦
車と同様にトレーラーに積載して運搬するものだと
思っておりましたので、高速道路を自走していたの
には驚きました。

 では、今週の記事に入りたいと思います。

▼仁川沖海戦と旅順口閉塞作戦

日露戦争の主戦場は満洲であったため、大陸との間
に海を挟んでいる日本にとって制海権の確立が戦争
遂行上死活的に重要であった。日本は制海権を確保
しなければ、兵員や軍需物資を大陸へ輸送すること
ができない。そのため、聯合艦隊が制海権を確保・
維持できるか否かに戦争の帰趨がかかっていた。

明治37年2月4日、御前会議でロシアとの開戦が
決定されると、日本は2月10日の宣戦布告に先立
ちロシアを奇襲攻撃した。2月6日、東郷平八郎率
いる聯合艦隊が佐世保港を出港し、2月8日~9日
旅順港のロシア旅順艦隊(第1太平洋艦隊)に対し
奇襲攻撃を実施した。さらに2月9日には、瓜生外
吉率いる第2艦隊第4戦隊が京城の外港である仁川
港に停泊中のロシア艦隊を攻撃し仁川沖海戦が生起
した。聯合艦隊主力は旅順艦隊の撃破には失敗した
が、瓜生戦隊は臨時派遣隊の揚陸援護およびロシア
軍艦の撃破に成功している。このように、日露戦争
は海戦主導で幕を開けたのである。

ロシア海軍は全戦力では日本海軍を凌駕するものの、
極東方面と欧州方面とに戦力が2分されていた。そ
のため、日本軍の奇襲を受けた旅順艦隊は、欧州方
面のロシア艦隊が極東に到着し日露の海軍戦力バラ
ンスが逆転するまで、決戦を避けて艦隊を温存する
現存艦隊主義を採り、なかなか旅順港外にでてこな
くなった。

一方、(1)欧州方面のロシア艦隊到着前に敵艦隊を
各個撃破し、(2)遼東半島への陸軍部隊輸送のため
に制海権を確保したい聯合艦隊は、旅順艦隊をなる
べく早期に無力化したかった。そこで、聯合艦隊は
旅順艦隊を旅順港内に閉じ込めてしまおうと考えた。
つまり、幅約270メートル(うち、大型船航行可
能な幅約91メートル)しかない旅順港の出入り口
(旅順口)に運送船を沈め、ロシア艦隊の出入りを
阻止しようとしたのである。これが有名な旅順口閉
塞作戦である。

しかし、2月24日、3月27日、4月3日と3次
にわたり実施された旅順口閉塞作戦はことごとく失
敗に終わり、以後、聯合艦隊は閉塞作戦を放棄し封
鎖作戦を継続する。第2回旅順口閉塞作戦は、「軍
神」広瀬武夫が戦死した海戦として有名だ。

なお、4月13日、日本側はロシア旅順艦隊司令長
官マカロフ中将の乗艦する戦艦を敷設水雷により撃
沈させることに成功した。

聯合艦隊は旅順に対し3回の閉塞作戦と8回の攻撃
を実施したものの、旅順艦隊は健在であった。4月
30日、バルチック艦隊(第2太平洋艦隊)の編成
が決定され、それを知った日本陸海軍首脳は、バル
チック艦隊が旅順艦隊と合流することを危惧し、旅
順要塞攻略を急ぐようになる。

その結果、乃木希典を司令官とする第3軍が編成
(4月1日軍司令部編成)され、陸海軍が共同して
旅順要塞を攻略することとなった。海軍は旅順攻囲
戦に海軍陸戦重砲隊を投入し、旅順攻略に多大な貢
献をした。



(以下次号)


(ちょうなん・まさよし)


『新史料による日露戦争陸戦史 覆される通説』
 長南政義(著)
 並木書房(発行)
 A5判上製/函入り/772ページ
  ⇒ http://okigunnji.com/url/65/


長南さんへの感想や疑問・質問やご意見は、
こちらから⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 


長南政義(ちょうなん・まさよし)
戦史研究家。宮城県生まれ。國學院大學法学研究科
博士課程前期(法学修士)及び拓殖大学大学院国際協
力学研究科安全保障学専攻(安全保障学修士)修了。
國學院大學法学研究科博士課程後期単位取得退学。
論文に「史料紹介 松川敏胤の手帳・年譜―満洲軍
参謀松川敏胤が語った日露戦争「日露戦争ノ勝敗ヲ
逆睹シタルヤ」―」『國學院法研論叢』第36号(國
學院大學大学院法学研究会、2008年)、「史料紹介
 陸軍大将松川敏胤の手帳および日誌―日露戦争前
夜の参謀本部と大正期の日本陸軍―」『國學院法政
論叢』第30輯(國學院大學大学院、2009年)、「陸
軍大将松川敏胤伝 第一部 ―補論 黒溝台会戦と
松川敏胤~満洲軍総司令部の不覚~」『國學院法研
論叢』第38号(2011年)など多数。
著書に『坂の上の雲5つの疑問』(並木書房、2011年、
共著)、伊藤隆・季武嘉也編『近現代日本人物史料
情報辞典』3巻・4巻(吉川弘文館、2007年、2011年、
共著)、『復刻版 日清戦況写真』(国書刊行会、201
3年、解説)、『日露戦争第三軍関係史料集 大庭二
郎日記・井上幾太郎日記で見る旅順・奉天戦』(国
書刊行会、2014年、編集)、『児玉源太郎』(作品
社、2019年)がある。



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