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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんにちは、エンリケです。
「我が国の歴史を振り返る
―日本史と世界史に“横串”を入れる―」
は65回目です。
毎回毎回目からうろこの記事が続きます。
貴重な文献紹介もあります。ちなみにエンリケは
この書をすぐ買ってすぐに読みました。
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すでに話題なので読まれている方も多いとは思いま
すが、そうでない方も、一度は読んで書棚に残して
おく価値はある気がします。
先週号で紹介されていた
https://amzn.to/2NYbMLm もいろいろ考えながら
読み続けています。
明治以降の歴史について知性的に、理性的にオトシ
マエをつけてないわが国では、すぐに過去の亡霊が
息を吹き返し、今の破壊を企てようとします。
この連載等を通じ、
大和民族の知性と理性の復活再生を強く期し、
自ら民間防衛を心がけたいものです。
さっそくどうぞ
エンリケ
ご意見・ご感想はコチラから
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我が国の歴史を振り返る
─日本史と世界史に“横串”を入れる─(65)
世界に拡散した「東亜新秩序」声明
宗像久男(元陸将)
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□はじめに(『反日種族主義』を読む)
22日、韓国が軍事情報包括保護協定(GSOMI
A)の協定破棄を凍結し、失効が回避されました。
仮に破棄されても、両国の関係が直ちに壊れるよう
なことはなかったとは思いますが、東アジアにおけ
る中国と米国の“パワーバランスの変化”や米朝会
談など朝鮮半島情勢への影響は計り知れないものが
あっただけに、特に日米首脳は安心したのではない
でしょうか。逆に、中国や北朝鮮などはがっかりし
たことでしょう。
それにしても、このような韓国の“常軌を逸した対
日政策”はどこから来るのだろうと考えていた矢先
でした。第56話で紹介しました、韓国のベストセ
ラー『反日種族主義』(*)を偶然、書店の店頭で見
つけました。11月15日、日本語に翻訳されて出
版されていたのです。さっそく購入して読んでみま
した。一読して、まず「編著者の李栄薫氏をはじめ
6人の著者たちの“身の安全”は大丈夫だろうか」
という心配が頭をよぎりました。
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そのプロローグは「韓国の嘘つき文化は国際的によ
く知れ渡っています」で始まりますが、著者たちは
学問を職業としている研究者の“良心”に従い、あ
えて韓国の現在の“世情”に竿をさし、蛮勇ともい
うべき勇気を振り絞った結果、本書が出来上がった
のでした。その勇気に心より敬意を表したいと思い
ます。
本書は、韓国社会の“嘘が善として奨励される”源
は、半島に長い歴史を持つシャーマニズムにぶつか
るとして、善と悪を審判する絶対者(神)が存在し
ないシャーマニズムを信奉する集団は“民族”とは
言えず、それ以下の“種族”や“部族”レベルだと
指摘します。しかも、隣の日本を永遠に仇と捉える
敵対感情を有していることから、本書を『反日種族
主義』と命名したとのことです。
本書を読むと、戦後、“韓国が主張しているすべて
が全くの嘘である”ということがよくわかります。
細部はこれから読む人々にために省略しますが、
(1)朝鮮併合時代の日本の支配、強制動員・強制
労働、徴用工の請求権、(2)独島の帰趨、(3)慰
安婦問題など、日韓両国の懸案事項に対する韓国の
言い分は、歴史的事実に照らして“虚構”であり、
“間違っている”と詳細に検証しているのです。
このように、私たち日本人が読むと納得することば
かりなのですが、長い間、教科書などで真逆のこと
を教えられ「反日種族主義」に凝り固まっている大
多数の韓国人の“怒り心頭”が容易に想像でき、冒
頭の心配になりました。
喜んでばかりはおられません。本書は、最後に「反
日種族主義がこの国を再び亡国の道に引きずり込ん
で行くもかも知れない」と警鐘を鳴らし、「反日種
族主義の横暴に対して、韓国の政治と知性があまり
にも無気力だ」と嘆いています。
その警告はけっして他人事ではありません。“韓国
の亡国が我が国の生存にバイタルな影響を及ぼす”
のはいつの時代も明々白々だからです。よって、先
人たちは、その亡国を食い止めるため、やむを得ず、
戦争という強硬手段を選択したのでした。問題は、
そのような強硬手段が取り得ない将来です。
韓国が真に亡国に瀕するような場合、(それを防止
するために)我が国はいかなる行動ができるのでし
ょうか。対岸の火事として放置するのでしょうか。
米国に懇願だけでしょうか。元自衛官の性かも知れ
ませんが、“口には出さずともそろそろ考えておく
必要性”についても頭をよぎりました。
さらにもう1点、「反日種族主義」と同様の“性癖”
が我が国にも内在していないか、という点です。取
り上げるだけでも呆れますが、最近の「桜を見る会」
の議論などに“国家を統治する知性のかけら”があ
るのか、とどうしても疑ってしまうのです。
興味のある方はぜひ本書をご一読下さい。本題に入
りましょう。
▼共産主義者がいかに暗躍したか
三田村武夫氏が『戦争と共産主義』(*)の中で指摘
した共産主義者達の具体的な活動について、時代は
前後しますが、後々のためにもう少し続けておきま
しょう。(*)
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近衛文麿は、終戦間際の昭和20年2月、上奏文を
天皇に提出します。有名な「近衛上奏文」です。そ
の概要は次の通りです。
「過去10年間、日本政治の最高責任者として軍部、
官僚、右翼、左翼、多方面にわたって交友を持って
きた自分が反省して到達した結論は、軍部、官僚の
共産主義的革新論とこれを背後よりあやつった左翼
分子の暗躍によって、日本は今や共産革命に向かっ
て急速度に進行しつつあり、この軍部、官僚の革新
論の背後に潜める共産主義革命への意図を十分看取
することができなかったのは、自分の不明の致すと
ころである」
まさに、“時すでに遅し”でしたが、自分が革命主
義者のロボットとして踊らされたことを告白したの
でした。この“不明の致すところ”が国家の命運を
狂わしたのですから、近衛個人の人生を反省するの
とはわけが違うのです。
三田村氏の指摘では、共産主義者たちの具体的な暗
躍は次の通りです。第1には「尾崎・ゾルゲ事件」
(昭和16年から17年)に代表されるように、近
衛の側近としてコミンテルン本部要員のゾルゲや生
粋の共産主義者の尾崎秀実が活動し、国の舵取りに
決定的な発言と指導的な役割を果たしてきたことで
す。
第2には、「企画院事件」(昭和14年から16年)
に代表されるように、革新官僚が経済統制の実験を
握り、“戦時国策“の名において「資本主義的自由
経済思想は反戦思想だ」「営利主義は利敵行為だ」
と主張し、統制法規を乱発して、全経済機構を半身
不随の動脈硬化に追い込んだことです。コミンテル
ンの上からの指示に従い、革新官僚が背後より操っ
た結果といわれます。
第3には、「昭和研究会」の存在です。「昭和研究
会」は、昭和11年に「新しい政治、経済の理論を
研究し、革新的な国策を推進する」ことを目的とし
た近衛の私的ブレーンの集まりでした。メンバーは
尾崎秀実を中心とした一連のコミュニストと企画院
グループの革新官僚などによって構成されていまし
た。近衛新体制の生みの親といわれた「大政翼賛会」
創設の推進力になったといわれ、その思想の理念的
裏付けはマルクス主義を基底としたものでした。
そして第4には、軍部内に食い込んだ謀略活動です。
「支那事変」の中途から、転向共産主義者が召集将
校として採用され、大東亜共栄圏の理念に飛躍して
いったといわれます。三田村氏は「大東亜共栄圏の
理念はコミンテルンの理念と表裏一体であり、我が
国を完全なる全体主義国家に変遷せしめた」と指摘
しております。そして「政治にも思想にもはたまた
経済にもほとんど無知な軍人が、サーベルの威力に
より付焼刃的な理念を政治行動に移して強行し、自
己陶酔に陥った時、策謀に乗せられるのは当然の帰
結」と指摘しています。
のちに陸軍省軍務局長に就任する「支那事変」拡大
派の急先鋒・武藤章と尾崎秀実とは特に緊密な関係
にあったとの指摘もありますし、また、名のある政
治家、軍人、官僚、学者・有識者、経済人、マスコ
ミ関係者など多数が関係していたことも判明してい
ます。その一部は戦後、見事に転向して各界の要職
についております。
いずれも後から判明するのですが、「支那事変」か
ら「日米戦争」にかけて我が国が迷走した背後に、
このような共産主義者達の暗躍があり、それらの活
動を抜きに真実の歴史の解明は不可能との認識のも
と、あえて取り上げてみました。
当時、これらの暗躍を近衛首相は見抜けないまま、
「蒋介石を対手にせず」や「東亜新秩序」の声明発
表になり、やがては、いわゆる“南進論”に発展し
ていきます。この“一連の動き”を引き続き振り返
ってみましょう。
▼「東亜新秩序」声明とその影響
1938(昭和13)年11月、近衛内閣は「東
亜新秩序」声明を発表したことは第63話で述べま
した。この声明は、日中戦争の目的をそれまでの
「中国側の排日行為に対する自衛行動」としてきた
ことから、「日本、満州、中国による東亜新秩序の
建設にある」と新たな目的を設定したことを意味し、
中国の領土保全や門戸開放を定めたワシントン体制
下の「9ケ国条約」を事実上否定するものでした。
その3年前の1935年、ナチス・ドイツは、ヴ
ェルサイユ条約破棄をして再軍備宣言し、翌36年
には、西ヨーロッパの安全保障を取り決めたロカル
ノ条約を破棄してラインラント進駐、イタリアもエ
チオピアを併合するなど、ヨーロッパの緊張が激化
していたことから、英・米など列強諸国は東アジア
に本格的に介入できないだろうと判断した結果、
「東亜新秩序」声明に至ったといわれます。しかも、
本声明の理論は、ヴェルサイユ体制打破をかかげる
ナチス・ドイツの「ヨーロッパ新秩序」のスローガ
ンを習ったものでした。
しかし、予想に反して、この「東亜新秩序」声明
に対して、重慶国民政府はもちろん、アメリカ・イ
ギリスが猛反発します。アメリカは、4000万ド
ルの対中借款を決定し、イギリスも1000万ポン
ドの中国通貨安定基金を設定し500万ポンド(2
300万ドル)の政府保証を与えます。つまり米・
英ともに、本声明を機に財政的な中国支援に踏み出
すことになります。
ソ連もまた、1937年8月、「中ソ不可侵条約」
を締結し、約1億ドルの借款を中国に与え、各種兵
器や軍需物資を供給する一方、翌39年には1億5
千万ドルの対中援助契約を結びます。
他方、「東亜新秩序」声明直前の1938年8月、
ドイツから、ソ連のみならず英・仏も対象とする
「日独伊3国同盟」の提示があります。ドイツは、
従来の親中国政策を軌道修正して、満州国の承認、
中国への武器・軍需品の輸出禁止など対日提携強
化に方針を転換したのです。
対日接近によって、対ソ連に備えるとともに、アジ
アに広大な植民地と勢力圏をもつイギリスを背後か
ら牽制する役割を日本に期待したようです。ちなみ
に、イタリアも1937年に満州国を承認し、日独
伊協定に加わるとともに国際連盟を脱退します。
これに対して、我が国の陸軍は、ドイツとはソ連
のみを対象とした同盟を結び、イタリアとはイギリ
スを牽制するために秘密協定にとどめると考えてい
ましたが、ドイツは、あくまで英・仏・ソを対象に
した軍事同盟を要望しました。陸軍は対ソ牽制のた
めに同盟そのものが不成立になることを恐れ、結局
ドイツ案を受け入れました。
しかし、外務省や海軍は英・仏を対象とする同盟
には強く反対して、翌39年1月、この問題の閣内
対立によって近衛内閣は総辞職してしまいます。後
継の平沼騏一郎内閣も「日本が同盟に躊躇するなら、
ドイツはソ連と不可侵条約を結ぶ」と警告されます。
こうして、同年5月、日独伊の軍事同盟が調印され
ますが、依然として外務省や海軍の同意が得られず、
閣議は紛叫します。
改めて、「東亜新秩序」の発案者が、各国の思惑が
交錯してこのような展開になることを企図していた
とすれば、ものすごい謀略だと脱帽しますが、この
ようななか、「ノモンハン事件」が発生するのです。
続きは次号で。
(以下次号)
(むなかた・ひさお)
宗像さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学
校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロ
ラド大学航空宇宙工学修士課程卒。
陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕
僚副長、第1高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、
第6師団長、陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て
2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。
2018年4月より至誠館大学非常勤講師。『正論』
などに投稿多数。
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マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
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心から感謝しています。ありがとうございました。
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発行:
おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
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