配信日時 2019/11/28 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (256)】明野駐屯地航空学校(6)

こんにちは、エンリケです。

明野駐屯地航空学校の六回目です。

隊員たちの肉声が実にいいですね。

さっそくどうぞ


エンリケ


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『ライター・渡邉陽子のコラム (256)
 ― 明野駐屯地航空学校(6)―

         渡邉陽子
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こんばんは。渡邉陽子です。
先週11月20日、航空学校教育支援飛行隊のAH-64Dが「安全が確認で
きた」と飛行を再開しました。AH-64D、通称アパッチ・ロングボウ、
対戦車・対地攻撃ヘリです。
昨年2月、陸上自衛隊目達原駐屯地のAH-64Dが住宅に墜落し隊員2
名が死亡、小学生の女の子が負傷した事故以来、航空学校の同機種
も飛行を見合わせていました。
メインローター(回転翼)ヘッドのボルトの破損が事故につながり
ましたが、破損の原因はさび止め剤の劣化、あるいは元からボルト
に亀裂があったというふたつの可能性があります。どちらかに特定
はできませんでしたが事故の原因が絞れたということで、明野の同
機種の飛行も再開しました。けがをした女の子の心身にも事故の名
残が残っていないことを切に願っています。
回転翼機は、飛行中にトラブルが発生してエンジンが停止しても、
即墜落にはつながらずゆっくり降下するオートローテーションとい
う緊急着陸訓練を行なっています。しかし飛行中に翼部分をもがれ
てしまったAH-64Dには、墜落を回避するすべはありませんでした。
操縦士と副操縦士が最後の瞬間まで機体をコントロールしようとし
たこと、きりもみ状態で落下しながらも地上の被害を最小限にとど
めようと死力を尽くしたことは、想像に難くありません。墜落まで
の数十秒間の彼らの心中を思うと、私は今も胸が苦しくなります。
改めて、殉職した隊員2名のご冥福をお祈りします。


■明野駐屯地航空学校(6)

幹部航空操縦課程に入校中の学生たちに話を聞きました。今回は第
2教育部の学生4名のコメントを紹介します。

A3尉は入隊前、自衛隊は肉体的にきつくて泥臭いイメージがあっ
たそうです。
「実際に入隊すると、その通りどころか想像以上でした(笑)。そ
の反面、隊員のことを考えた熱意のある指導は『ここまで考えてく
れるのか』と驚くことも多く、とてもありがたいです。操縦士の道
を意識したのは防大3年のときに起きた東日本大震災の影響が大き
かったです。被災地へいち早く向かったヘリを見て、真っ先に任務
ができる航空科に興味を持ちました。初めて操縦桿を握り操縦した
ときは、自分が操縦しているということにあまり実感がわかなかっ
たものの、うれしさがこみ上げ幸せを感じました。晴れて操縦士に
なったら、いつか双発エンジンでより多彩な任務が遂行できるUH-6
0JAを操縦したいですね」

B3尉は一般大学(いわゆるMARCHクラスの大学でした)を中退して
幹候に入校したという、ちょっと異色の経歴の持ち主です。
「就活もふるわず進路に悩んでいたとき、陸上自衛官の父に『幹候
という選択肢もある』と教えられました。航空科は、階級に関わら
ず賢い人が集まっているという印象を受けました。とにかくみんな
頭がよく冴えてるんですよ。中途半端なことをしたら陸曹陸士から
も鋭い指摘が入るのでまったく油断できない、そこがいいですね。
現在の操縦課程は操縦技術を学ぶだけでなく、人間教育も重視され
ています。これまでの人生を否定されるような指導を受けた日は落
ち込みますが、大好きなB’zの音楽を聞いたり苦楽を共にしている
同期の仲間と話をしたりすることで、気持ちを切り替えています」

同期10名の紅一点であるC3尉は、入校と同時に那覇基地に勤務し
ている空自の要撃管制官と入籍。新婚ながら会えるのは月に一度程
度、挙式もこれからということでした。
「高校生の頃、航空機の開発に興味を持ち、最先端の技術に関わる
なら軍事からのアプローチがいいのではと思い、心配する両親を説
得して防大へ進みました。入校して5日で帰りたくなり(笑)家に
電話したら、父から『自分で決めたことなのだから帰って来てはい
けない』と言われ、ふっきれました。もしも帰っておいでと言われ
ていたら、防大を退学し一般大学に入り直してしたんじゃないかと
思います。これまで男女の差を感じることなくやってきましたし、
与えられる任務を遂行するという面においても男女の差はないと思
います。ただ、女性自衛官は乗れない戦闘ヘリを、いつか操縦でき
るようになりたいという思いはありますね」

北海道出身のD3尉は、小さな頃から人の役に立つ仕事に就きなさ
いと祖父に言われていたそうです。
「中学の時点では自衛官になろうと決めていました。入隊前は『自
衛隊は鬼軍曹がいる恐ろしいところ』という印象でしたが、実際は
家族の状況や冠婚葬祭まで気にして適切な助言をしてくれる、家族
的な組織、人情味あふれる組織だと感じました。訓練の際に気をつ
けているのは、第一に安全に飛んで戻ってくること。また、飛ぶ前
には地上で今日はなにを学ぶかを決めてから飛ぶので、それをひと
つでもいいので身につけることを心がけています。当面の目標は、
まずは同期10名の学生全員脱落することなく卒業し、操縦士の資格
を取得することです」



(以下次号)


(わたなべ・ようこ)

※現在連載中

「PANZER」12月号
「神は賽子を振らない」第8回
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「正論」12月号
「自衛隊あってのオリンピック」第6回
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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。

 
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