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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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きょうは、防衛産業に関する話です。
会計の面から防衛基盤を考える内容です。
こういうアプローチは今までなかった気がします。
新鮮でありがたくてドキッとする内容です。
<、防衛生産・技術基盤を維持するには、防
衛産業の売り上げまで考える必要があります。>
とのご指摘をきちんと把握できている日本人が
いったい何人いるのだろうか?
正直不安です。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(13)
防衛関係費その10
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
ホリエモンが「なぜ堀江貴文の本はすべてがベス
トセラーになるのか?」というタイトルの本(Ki
ndle版)で、売れる本の作り方を書いています。
彼は初版3万冊で毎月出版しているそうです。販売
の累計は約250万冊ということで、出版すれば必ず売
れているようです。ただ、無名の人が、ここで書か
れていることを実行して本を出版しても売れること
は希でしょう。そもそも、ホリエモンの本が売れる
のは彼の知名度が大きな要素です。
本を出版しても売れなければ、事業として成り立
たないし、本で伝えたいことも伝わりません。しか
し、ホリエモンのように「売るために本を書く」と
いう感性は自分にはわかりません。彼の著書もアマ
ゾンのプライムリーディング(無料)で何冊か読み
ましたが、「売るための本」そのものでした。極論
すれば、ネットの書き込みを本にしたような感じで
す。
何か文章を書いて発信、発表するというのは何か
を伝えたいからだと思いますが、ホリエモンは違う
ようです。しかも、それがよく売れるというのも面
白い現象です。これは、ホリエモンに限らず、内容
は一緒でも姿形を変えて毎年出版され続ける健康や
投資などに関する本も、売ることに焦点が置かれて
います。ゴルフ雑誌も毎回内容が同じなのに、なぜ
か売れます(ゴルフに関してはここ十数年下火です
が)。自分もゴルフをしていた頃は、よく買ってい
ました。
「売れるものがいいものだ」という世間一般の常識
がありますが、そうでないことのほうが多い気がし
ます。特に出版物では、売れていないものの中に価
値の高いものがあるように思われます。しかし、売
れないと、当然、内容は伝わりません。ホリエモン
のノウハウも必要なのかもしれません。
▼契約ベースと歳出ベース(その2)
報道などで取りあげられる防衛予算で物件費といえ
ば歳出ベースですが、防衛省内の予算編成で物件費
といえば契約ベースを意味します。防衛省が契約す
る企業サイドも収支決算は歳出ベースですから、企
業の売り上げに占める防衛関連の売り上げの割合も
歳出ベースとなります。経営者として収支決算は最
も重要な事項ですから、歳出ベースの意識が強くな
ります。
防衛予算の編成に携わり契約ベースを基準として考
えることが習慣になってしまうと、歳出ベースでの
思考が抜けてしまいます。たとえば、国振りについ
ても防衛省と防衛産業とでは、影響の度合いが全く
異なります。「防衛関係費(その4)」で説明した
とおり、国振りによって防衛予算の硬直化を招いて
いますが、企業にとっては会社の経営に係わる極め
て深刻な問題となります。
たとえば2国であれば、毎年契約してその2年後に
毎年収入が得られていたのが、3国に国振りするこ
とで、1年間、当該製品の売り上げがなくなります。
当該製品の売り上げの占める割合が大きければ、会
社は大赤字です。突然の国振りに対して、その売り
上げを他で穴埋めすることは不可能です。
そんなに簡単に穴埋めできるのであれば、すでに、
その穴埋め手段で企業は売り上げを増やしています。
予算編成の担当者が契約ベースでしか防衛予算を考
えないと、防衛産業は大きなダメージを受けること
になります。
同様に収支決算の考えも行政機関と企業では異なり
ます。行政機関で年度予算といえば、年度で使用す
る経費を表しますが、企業で年度予算といえば、
年度の売り上げや利益の目標を表します。国の行政
では財務省は収入と支出を考えますが、他のほとん
どの省庁は支出のみです。企業では収入(売り上げ)
と支出(費用)を考えますが、「売り上げ」(収入)
に重きが置かれます。
行政機関では年度の会計はプラスから始まります。
年度当初に年間に使用できる予算が示され、それを
毎日、毎月使用し年度末までにゼロにします。企業
は反対にマイナスから始まります。年度当初には、
年間の人件費、光熱水料、材料費などの費用が見積
もられますが、これらは全て支出です。支出は確実
にでますが、収入はあくまで見積もりです。
そして、毎日、毎月の売り上げでマイナスをプラス
にしていきます。もし、売り上げがなければ、年度
末には確実にマイナスの決算(赤字)になります。
しかも、行政機関の予算が年度で厳格に縛られるよ
うに、企業決算も年度で縛られます。
契約ベースで考えると、2国も3国も金額は変わり
ません。国振りによってツケ払いが後回しになり、
将来の予算編成に影響を与えますが、当年度の担当
者は困ることはありません。後任者負担です。それ
も、どの程度の負担になるのかは予測できないため、
深刻に捉えることは、まずありません。ところが、
企業にとっての国振りは、その全額がマイナスとな
ります。
2国を3国にして年度当初に支払いをすれば、1か
月ほど売り上げが遅れるだけで問題はないという間
違った理解をしている担当者も多くいます。これも、
決算年度で縛られる企業決算の事情をわかっていま
せん。1か月遅れでも前年度決算には編入されず、
売り上げはマイナスのままです。ただし、企業会計
は3月決算にする必要はありませんから、4月決算
や5月決算の企業であれば1回の国振りの影響は回
避できます。
装備品を取得する観点だけから考えると、防衛産業
の売り上げは関係ありません。大綱や中期防に基づ
き10年後、5年後を目標に計画的に装備品を取得す
るための予算を要求し、認めてもらうことが重要で
す。しかも、中期防別表に示された装備品の整備規
模は契約ベースです。国振りをしても計画上の問題
はありません。そもそも、以前説明したとおり、中
期防の整備計画数が達成されていないのが現実です。
ところが、防衛生産・技術基盤を維持するには、防
衛産業の売り上げまで考える必要があります。防衛
産業に関しては、国の税金(防衛費)で過剰な利益
をあげているという誤ったイメージが国内に浸透し
ています。国振りくらい我慢するのは当然だという
話になります。しかし、それほどおいしい話であれ
ば防衛産業からの撤退が相次ぐことはないでしょう。
事業の継続がギリギリの状態だという企業がほとん
どなのが、防衛産業の実態です。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
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