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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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こんにちは、エンリケです。
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「契約ベースと歳出ベース」
との区分が非常にいいですね。
わかりやすく納得把握しやすいです。
なぜかといえば
1.歳出予算と「装備のつけ払い費用」などの
区分を、大きな枠組みでできる基盤ができるから
2.わが防衛予算を考える上でごっちゃにしてはいけ
ないことの「明確な仕切り板」として頭脳にインス
トールできる
3.「契約」と「歳出」ということばで区分している
から誤解が少なく防衛予算への正確な理解が深まる
からです。
本日使われるテキストは
https://www.mod.go.jp/j/yosan/2019/yosan.pdf
にあります。
記事を読む前にダウンロード、印刷もしくはページ
を開いておいてください。記事の理解度に大きな差
が生まれます。
さっそくどうぞ
エンリケ
追伸
ふと思いました。
この連載読んでいると、わが防衛予算の現状を正確
に理解・把握できるようになり、適切で的確な防衛
予算への言葉が紡ぎだせるようになるので、適宜適
切な防衛政策や防衛予算立案ができる在野の人が増
えることにつながるだろうなあ、と。
すごい連載ですよ。ほんと。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(12)
防衛関係費その9
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
先月から、「2か月で61万歩(1日に1万歩)ウ
ォーキング」というイベントにチャレンジしていま
す。10月は約33万歩で2日分の貯金を貯めて目標を
達成しました。今月も順調です。1万歩で歩ける距
離は個人の歩幅によって変わりますが、成人で7~
8kmです。意外と長い距離を歩くことになります。
実は、1万歩にチャレンジするのは今回が初めて
です。歩数計測は1年前にスマホのアプリをONに
しました。1日の歩数表示が毎日スマホに表示され
ますが、先月まではあまり気にしていませんでした。
イベントにチャレンジすることになり過去の歩数を
確認しましたが、1年間の平均が約6000歩で、最大
でも月平均7500歩でした。過去1年間で最も歩いた
月でも1万歩には2500歩足りません。
自分の場合は、1分間に100歩が平均ですから、
1万歩では1時間40分となります。過去の平均から
考えると40分間以上は意識的に歩かないと1万歩は
達成できません。これが、一般的な社会人の平均的
数字かどうかはわかりませんが、通勤で自宅から駅
まで3km以上を歩いている人や歩くことが多い職
業の人以外は、意識的にウォーキングやジョギング
をしない限り1日に1万歩を歩くことは難しいでし
ょう。
万歩計という器具があるように、1日に1万歩を
歩くのが健康に良いとされています。とは言え、
1万歩に何か根拠があるとは思えません。9000歩で
も8000歩でも大きく変わるわけではありません。切
りのいい数字ということで1万なのだと思います。
しかし、実際にチャレンジしてみて感じるのは、
1万歩を達成するために「意識的に歩く」というこ
とに大きな意味があるということです。自分の場合
であれば、8000歩でも意識的に歩かないと達成でき
ないので、1日8000歩チャレンジでも意味があるわ
けです。1万歩であれば、ほとんどの人が意識的に
歩かないと達成できないので、1万歩には切りがい
いという以外の重要な意味も含まれていたようです。
健康のために意識的に何かをするということが、自
分の健康に気を遣うことのきっかけになります。日
本の予算の35%を占める社会保障費を減らすために
は、多くの国民が健康であることです。自分の健康
を害すると自分もつらい思いをしますが、周りの多
くの人に迷惑をかけます。直接迷惑をかけない人に
対しても税金を多く使うという意味で迷惑をかけて
います。
国民の多くが健康であることに心がけ、社会保障費
を減らし、その分を防衛費に充てることで国の守り
が強くなる。災害にも速やかに対処でき、国民の安
心や安全につながる。これが、国としての健全なあ
り方ですが、これを選挙で言ったら落選間違いなし
です。
▼契約ベースと歳出ベース(その1)
今まで、防衛予算の構造を繰り返し説明してきまし
たが、実は、パンフレットにおいても図解されてい
ます。52ページの参考資料「防衛関係費の構造」(*)
です。今までの説明を完全に理解しなければわから
ないような複雑な図です。「防衛関係費 その1」
で説明しましたが、行政機関からの公表資料は、全
ての要素を間違いなく正確に表そうとするためこの
ような図になります。
(*)
https://www.mod.go.jp/j/yosan/2019/yosan.pdf
新規後年度負担の前金と中間前金、6国以上の契約
を省略するだけでも、すっきりとしたわかりやすい
図になるでしょう。誤りがなく、漏れがなく、正確
なことを追求すると、わかりやすくすることには限
界があります。一方、正確性に欠ける場合、公表後
にクレームが殺到したり、ネットで炎上したりする
ことが予想されるため、無駄な仕事を増やすことに
なります。
これは、行政機関側だけの問題ではありません。最
近のネット炎上に見られるようにちょっとしたミス
でも許されない世の中になってきていますから、行
政機関も企業も著名人も、公に出る文章や発言には
非常に気を遣います。
公(大企業、著名、有名人を含む)の発表、発信は
「間違いがなく、正確に、指摘されないこと」が重
要で、わかりやすさは犠牲にされます。わかりやす
くするために正確性に欠けることは許されません。
一方、SNSなどの匿名の発表や発信、書き込みは、
正確性は犠牲にされ、誰でもがすぐにわかるように
物事を極端に単純化しています。事実をねじ曲げて
いる発信や書き込みも多くあります。今後、この二
極化が進んでいくことでしょう。
さて、この図には防衛予算を理解する上で非常に重
要な用語が使われています。図の左下の黄色の枠に
ある「物件費(契約ベース)」です。「契約ベース」
の対になるのが「歳出ベース」ですが、「歳出ベー
ス」という用語はこの図では使われていません。契
約ベースというのは、契約するための予算額で、歳
出ベースというのは支払いするための予算額です
(契約ベースと歳出ベースの説明はパンフレットの
次頁P52にあります)。
パンフレットの2ページに戻って復習です。防衛関
係費は「歳出予算(三分類)」と「新規後年度負担」
に区分されます。「歳出予算」は、「人件・糧食費」
と「物件費」に区分され、「物件費」は、「一般物
件費」と「歳出化経費」に区分されます。歳出予算
の名称のとおり、「人件・糧食費」「一般物件費」
「歳出化経費」は歳出ベースです。
「新規後年度負担」は、当該年度は契約のみですか
ら契約ベースですが、次年度以降には「歳出化経費」
となり歳出ベースになります。つまり「新規後年度
負担」は区分上「物件費」です。契約ベースの物件
費です。
「人件・糧食費」、特に人件費については「契約」
という行為が毎年度行なわれるわけではないため、
契約ベースという用語を使うことはありません。契
約ベースという用語を使う場合は、物件費を表しま
す。
歳出予算の中でも「一般物件費」は、当該年度に契
約も行ないますから契約ベースでもあります。一方
「歳出化経費」は、すでに契約済みのものの支払い
のみですから、歳出ベースだけです。つまり、「新
規後年度負担」は契約ベース、「人件・糧食費」と
「歳出化経費」は歳出ベース、歳出予算の中でも
「一般物件費」は歳出ベースと契約ベースの2つの
顔を持つということです。
整理すると、歳出ベース=人件糧食費+一般物件費
+歳出化経費。契約ベース=一般物件費+新規後年
度負担で、物件費(歳出ベース)=一般物件費+歳
出化経費、物件費(契約ベース)=一般物件費+新
規後年度負担ということになります。
「物件費(契約ベース)」は、パンフレットでも参
考資料で使われているだけですから、当然、報道な
どで取りあげられることはありません。しかしなが
ら、防衛省内の予算編成の作業で使用されるのは、
ほとんどが「契約ベース」です。歳出化経費は、ほ
ぼ決定された額であるため議論の余地がありません。
予算編成として議論になるのは一般物件費と新規後
年度負担、つまり物件費(契約ベース)ということ
になります。
国民が報道などで知るのは歳出ベースの防衛費であ
るのに対し、実際に議論となっているのは契約ベー
スの防衛費です。パンフレットの本文で防衛能力の
強化として説明されている事業も、人件費に係わる
ものを除き、ほぼ全てが契約ベースです。
防衛予算というと歳出予算の金額の増減か新たに取
得される高額な装備品のことしか話題になりません。
しかも、歳出ベースと契約ベースが区別されず、ご
ちゃまぜの状態になっています。これでは、防衛予
算を読み解くことは不可能です。
防衛予算を見るときには、比較(他の予算や他国の
軍事費)のための歳出予算(歳出ベース)、防衛力
整備を考える時の物件費(契約ベース)、そして、
のちほど解説しますが、防衛力の実体である自衛官
定員と実員(人件費)という3つの視点が必要とな
ります。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
市川さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
PS
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