配信日時 2019/11/11 08:00

【桜林美佐の美佐日記(51)】軍拡が軍縮につながる

こんにちは、エンリケです。

このパラドックは、
今のわが国・国民にとって極めて重要な指摘です。

この感覚こそが真実です。

さっそくどうぞ。

エンリケ



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桜林美佐の「美佐日記」(51)

軍拡が軍縮につながる

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の『土佐日記』ならぬ『美佐日記』
は今回で51回目です。

先日、「核廃絶のための募金」と書いてある募金箱をみつけまし
た。私は足を止め、ここにお金を入れると一体何に使われるのだ
ろう?と素朴な疑問を持ちました。

集まったお金を核保有国に送って、核弾頭やミサイルを廃棄する
ための費用に充ててもらうのか?

そんなことに使われるなどあり得ない。

では、核廃絶の運動家の旅費になるのか?

答えは分かりませんが、いずれにしても色々と言いたいことを飲
み込んで、その場を去ったのでした。

 今月末にローマ法王が来日し、東京・広島・長崎を訪れるとい
うことで、九州ではいつにもまして核兵器反対のキャンペーンが
盛り上がっているようにも見えます。

カトリック系の刊行物を見ると、法王の来日について、教会の司
祭のコメントとしてこんなことが書いてありました。

「教皇さまのメッセージは事前には分からない。核兵器だけでな
く原発の全面廃止を語られるかもしれない、死刑廃絶についても
語られるかもしれない。(中略)いずれにせよ、現在の安倍政権
の政策に矛盾することを発言される可能性が高く、外務省がかな
り警戒しているという話も聞く。彼が語られるメッセージをしっ
かりと聞きたいものだ」

 これらに言及するかどうかは、現時点ではあくまでも予測の範
疇ですので、フタを開けていないと分かりませんが、広島・長崎
を訪れるわけですから「核廃絶」の話題が出ることだけは確実で
しょう。

 今のタイミングでのそうしたメッセージ発信は、外務省といい
ますか、政権としても複雑な心境と言えることは確かだと思いま
す。

 ロシアと米国による中距離核戦力(INF)全廃条約が失効し、
グアムや日本へのミサイル配備の必要性が高まっています。エス
パー米国防長官は、将来はアジア地域にミサイルを配備する可能
性があると述べています。

 メルマガ読者の皆さんには釈迦に説法かと思いますが、197
0年代にソ連が中距離弾道ミサイル「SS20」を東ヨーロッパ
に配備して欧州全域を射程に収めたたことが思い出されます。

ソ連によるNATOのデカップリング(切り離し)戦略で、米国によ
る対欧州拡大抑止の信頼性が崩壊したのです。

具体的には、ソ連が西ドイツに核ミサイルを撃ち込めば、米国は
反撃するはずでしたが、そうなればソ連は第二撃でワシントンを
同じように攻撃することになる。米国民はボンを守るためにワシ
ントンやニューヨークを犠牲にできるのかという懸念が生じたの
です。

そこで米国は、新型巡航ミサイルであるパーシングIIの欧州配備
を開始します。このことで、ソ連の攻撃を受けても欧州から第二
撃が可能となり、結果的にワシントンは生き残るということにな
りました。

ゴルバチョフ書記長はINF撤廃締結を決心するのです。これに
より冷戦が終わりました。

軍拡が軍縮に帰結するという事例でした。また、軍拡競争は経済
的にも国を追い詰め、疲弊させるため、限界点があることが分か
りました。

こうした歴史的事実から考察すると、軍拡は決して怖いものでは
ありません。「軍拡」=「悪」という固定概念があるからこそ、む
しろ平和から遠ざかっているとも言っていいのではないでしょう
か。

オバマ政権時代に軍縮をしたことが中国の増長を誘ったのであり、
皮肉的にもINF条約で地上発射型中距離核戦力を米ロが削減し
た隙に、中国のミサイル開発は増大しました。INF条約撤廃は
中国のミサイル能力向上が最大の原因であることは言うまでもあ
りません。結果的に「軍縮」こそが「平和を乱すもの」だったわ
けです。

軍拡によって戦争は起こらず、誰も傷つきません。

そう考えると、軍拡をしてもいいから真の平和を求めたいと私は
思っています。

先に紹介したように「核廃絶」が「政権の見解と違う」というの
は誤解で、核廃絶を願わない日本人はいない、と私は思います。

今、存在するものを否定する方法ではなく、受け入れて、いずれ
世界から核兵器をなくすという理想を実現させるためにも、あの
冷戦が終わった時のように、一度イーブンな状況を作り出すこと
はあっていいでしょう。

INF条約のような成果につながる可能性を鑑みれば、もし仮に
現政権として、核保有まではしないまでも、その持ち込みは認め
るための「非核三原則」の見直しに着手したとしても、それはア
プローチが違うだけで「核廃絶」のためにするのだ、という意志
表明をしたらどうなのでしょうか。

触らぬ神に祟りなしで、この話題に触れないのではなく、政府や
外務省は積極的な発信をバチカンに、もちろん日本国民にも、し
て欲しいものです。

<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしている「国防ニュ
ース最前線」、今週は伊藤俊幸 元海将に解説して頂きます。

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(つづく)



(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、
ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、国防問題などを
中心に取材・執筆。著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続け
た海の守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰も語ら
なかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だけでは防衛産業は守
れない』『防衛産業と自衛隊』(いずれも並木書房)、『終わら
ないラブレター─祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』
(PHP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出
版)、『ありがとう、金剛丸─星になった小さな自衛隊員』(ワ
ニブックス)。月刊「テーミス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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(代表・エンリケ航海王子)
 
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