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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(8)
防衛関係費その5
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞されました。最近、ノーベル
賞を受賞された方が同様に危惧されているのが、近年の日本にお
ける基礎研究の軽視です。目先の成果を求め、数年のうちに、製
品化できるもの、利益が出るもの、学会で評価されるものには予
算が投資されますが、成果が期待できる期間が長くなるほど予算
は減ります。ましてや、成果が出るか出ないかわからないような
基礎研究には予算がほとんど付きません。
ノーベル賞の受賞の対象になるのは、長年積み上げた基礎研究
の上に成果が出されるものが基本です。研究開発の成果そのもの
に将来的な広がりがあり、人類に多くの利益を持たされると期待
されるもの(現に利益をもたらしているもの)です。目先の成果
を求めるものに、そのような期待はできません。地道な基礎研究
の上になし得るものです。同時受賞の米国のジョン・グッドイナ
フ氏は97歳です。人生のほとんどを費やした上に成し遂げた成果
です。
しかし、目先の成果を求めるのも重要で、特に企業の活動は毎
年利益が出なければ企業そのものを存続することはできません。
人々の生活が毎年豊かになるような研究開発も必要です。ようは、
バランスが重要ということです。
少し観点が変わりますが、防衛力も同様な意味でバランスが重
要です。現存する脅威に対応すること、10年先の脅威に対応する
こと、そして、将来の脅威に対応すること、これらにバランス良
く予算を投入しなければなりません。当面の脅威である南西方面
や弾道ミサイル対応を重点として予算を投入するのはやむを得な
いことです。しかし、将来必要になることも予測される陸上戦力
の骨幹である戦車や火砲を大幅に削減することは、基礎研究の軽
視と同様の問題があります。
▼歳出予算と新規後年度負担の関係
国の予算は歳出予算が基本です。31年度予算の内訳は、社会保障
費が34.2%、地方交付税交付金が16.1%、公共事業費が6.1%、
防衛関係費が5.2%です。このように、国の予算規模と防衛費の予
算規模を比較するには歳出予算を取りあげざるを得ません。歳出
予算の5兆70億円は、他の予算と比較できますが、新規後年度負
担の2兆4,013億円は比較の対象とする予算がありません。
日本の防衛費は、「他の国と比べて多いのか少ないのか」「過
去と比べて増えているのか減っているのか」「他の政策の予算に
比べて多いのか少ないのか」などの比較をする場合は、国の全体
の予算を基準にするほかはありません。他国との比較においても
何かを基準にしなければ、経済規模の違うさまざまな国との比較
はできません。
したがって、マスコミが防衛費を歳出予算で報道するのは、やむ
を得ないことです。ただし、報道する側も防衛費の構造をしっか
りと理解し、正確な報道を心がけなければなりません。新規後年
度負担で調達する装備品を報道する場合も、丁寧な説明が必要で
す。ましてや、子ども手当の新設による人件費アップで防衛費が
増額したことを大々的に報道するようなことは、あってはなりま
せん。また、情報を受け取る側も、しっかりとした知識を持つこ
とが必要です。
これまでの説明のように、防衛予算の特殊な構造を考慮すると、
防衛費を年度ごとに議論することには限界があります。本来、ま
ともな形での防衛力整備は5カ年計画の中期防で行ないます。大
綱の水準を達成するには2コ中期防、10カ年が必要になります。
年度予算は中期防の途中経過でしかありません。
中期防を5年間の予算として議論することで、まともな議論ができ
正確な報道もできるようになります。前年度同額以下を基準とし
た年度の予算編成では、日本の安全保障に必要な防衛力と防衛予
算の増額の議論はできません。結果として、国振りのような問題
の先送りでなんとか必要な予算を捻出しなければならなくなりま
す。
人事院勧告に基づく人件費以外、特に装備品の調達に関しては、
一括して5年分を国会決議することが望ましいでしょう。中期防の
5年分の予算額であれば真剣で本質的な議論が必要となります。安
全保障の集中的な審議もできるし、国会中継により国民にも情報
が伝達できます。毎年行なわれる予算要求もなくなり、業務の効
率化もできます。(ここで述べた防衛費の本質的な議論は社会保
障費などの他の分野においても必要であることはいうまでもない
ことです)
また、防衛予算に対する誤った認識としてGDPの1%枠があ
ります。国民の潜在意識として、予算の上限額がGDPの1%と
して認識されています。各国の軍事費を比較するときにGDPが
基準として使われることが多いため、GDPが軍事費の基準にな
るという誤解も与えています。GDPは国の経済規模と軍事力の
規模を比較するために使用しているだけで、国の予算額と比較し
ても問題ありません。比較を何にするかで、日本の防衛費が多く
感じたり、少なく感じたりします。
防衛費の上限をGDP(当時はGNP)の1%としたのは1976年
の三木政権です。1986年の中曽根政権でこの枠は撤廃されました
が、GDPの1%枠はなんとなく防衛予算の上限として認識され
ています。もともとGDPを基準にして防衛予算が決められてい
たわけではなく、GDP1%には何の意味もありません。たまた
ま、1976年当時の防衛予算の歳出額がGDPの1%とほぼ同額だ
ったため、防衛費は現状維持以下という意味合いで閣議決定され
たものです。それ以来、各国の防衛費の比較ももっぱらGDPが
使われます。
当時は、GDP1%の水準で防衛費が推移しており、国会にお
いては1%を超えるか超えないかで大きな議論となりました。最
近ではGDP1%を大きく下回っているために国会などで議論に
なったり報道で取りあげられたりすることはありません。ただし、
今後、防衛予算が増えていく過程で、必ず、議論になるでしょう。
過去の政策とはいえ、防衛予算額が日本の安全保障環境から決め
られるのではなく、GDP1%を基準として、しかも、上限とす
ることが閣議決定されたことは、戦後日本を象徴する出来事です。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。退官後の9月にはYouTube「桜林美佐の
国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
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