配信日時 2019/10/14 08:00

【桜林美佐の美佐日記(47)】「善きサマリア人」になることは難しい……

こんにちは、エンリケです。

さっそくどうぞ。

エンリケ



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桜林美佐の「美佐日記」(47)

「善きサマリア人」になることは難しい……

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の『土佐日記』ならぬ『美佐日記』
は今回で47回目です。

 かつて『東京上空三十秒』という映画がありましたが(ドゥー
リトル中佐に率いられた空爆部隊が東京を初空襲する話)、先日
は東京上陸から約30時間の間にYouTube番組「チャンネルくらら」
の収録を5本以上、意見交換会、そして「虎ノ門ニュース」の出
演、さらに祖母の葬儀と四十九日まで私の日程に合わせてもらい、
全てをこなして福岡に戻りました。

 今回は「虎ノ門ニュース」に初めて出演したのですが、所属す
るサンミュージックのマネージャーが百田尚樹さんにご挨拶をし
なかったと、百田さんが翌日にお怒りのツイートしたことで、多
くの方に励ましや慰めのメッセージを頂戴しました。この場を借
りて伏して御礼申し上げます。

 実は私自身は、メイク室に入っている時間だったため、状況を
全く知らず、まさかそんなことになっていたとは夢にも思ってい
ませんでしたので、驚き慌てるばかりでした。

 でも、確かに、控室に入ったらゲスト出演者はそこにいなくて、
見知らぬ人が座っている、しかも私ごときについてきたマネージ
ャーだと聞いたら、愉快でない気持ちになるかもしれませんよね。

 また、マネージャーも女性ですし、色々と思案して、朝の忙し
い時間だけに出演者の仕事の邪魔をしてはいけないと、静かにし
ていただけなのではないかと思われます。

 そう考えると、避け難いアクシデントとも言えそうです。それ
にしても、百田さんは不快な思いを抱えながら2時間の生放送で
はそんな様子も見せずにいたわけですから、ありがたいことです。

 Twitterで「タレントには罪はないが」(多分、私のこと)とし
ながらも、もう私がゲスト出演することはご免被りたいとも書か
れていますので、図らずも今回の放送分は、なんと初めてにして
唯一のものとなってしまいそうです!まだ観られますので、ぜひ
アクセスしてみて下さい。

 いつも細心の注意を払って生きているようでも、思いがけない
ことで人を傷つけたり怒らせたりするものなのですね。人間とい
うものは。

 ところで、冒頭に30時間の強行軍を自慢げに書きましたが、
忙しいということも注意や思慮を欠く要因の一端になります。い
え、もちろん望んで立てた多忙計画ではなく不可避ではありまし
たが、駆け足で移動するようなスケジュールで、頭の中に色々と
入っていれば、どうしても意識の死角のようなものができるので
しょう。

1960年代の初頭に、ブリンストン神学校に通う学生を対象に行な
われた「善きサマリア人の実験」をご存じでしょうか。

これは新約聖書のルカによる福音書に記されている「善きサマリ
ア人のたとえ」を使った実験でした。実験の方法は次のとおり。

学生たちを大きく2つのグループに分ける
1つは授業で「善きサマリア人のたとえ」について語らせるグル
ープ
もう1つは卒業後の進路について語らせるグループ
そして、それぞれをさらに3つずつのグループに分ける
授業の後半、「講義が終わったら別の建物で授業を受けてもらう」
と教師から告げる

 そして、それぞれのグループに異なる言葉を与えます。

「あ、遅刻だ。もっと早くここを出てもらわなければならなかっ
たのに。急いで向かってくれたまえ」(大至急グループ)
「助手が準備を終えて待っているはずだから、すぐに向かってく
れたまえ」(至急グループ)
「準備はまだ終わっていないはずだが、そろそろ向かってくれた
まえ」(余裕グループ)

彼らはその後、道の途中に具合の悪そうな人がうずくまっている
のを発見することになります。その時、学生たちはどうするか?
という実験です。

実験の結果の前に「善きサマリア人のたとえ」について簡単にご
説明しますと、ある旅人が強盗に襲われ、大怪我を負って道端に
倒れていた。そこを祭司たちが通りかかったが手を差し伸べるこ
とはなかった。一方で、サマリア人は旅人を手厚く助けたという
お話。ちょっとこの説明は簡単すぎますが、ここではこの程度に
しておきます。

その「善きサマリア人」に因んだ実験、結果は次のとおりでした。

直前に卒業後の進路について語ったグループは29%の学生しかそ
の人を助けようとしなかったのに対し「善きサマリア人のたとえ」
について語ったグループは、53%が助けを申し出たそうです。

そして、時間的な余裕による違いもハッキリ出ました。

余裕グループでその人を助けたのは63%、至急グループが45%、
そして大至急グループではわずか10%だったのです。

この結果から、忙しさは敬虔な信仰や行動への信念を持つ人でさ
えも、気持ちの余裕を失わせてしまう、愛を忘れてしまうという
ことが分かったのです。


 あまりにも当然のようなこの結果ではありますが、私はこれを
知った時、恐ろしくなりました。なぜなら、「善きサマリア人」
になることはそんなに難しくないのではないか、などと思ってい
たからです。しかし、次に予定がある、時間がないというだけで、
いとも簡単にその決心は吹き飛ぶわけです。

私は今、日の出から日の入りまで田園の真ん中で暮らしています
ので締め切りに追われることはあるものの、東京にいるよりはる
かに余裕がある、と考えると、環境が変わったらその余裕もなく
なるのか、と考えられます。どんな環境下でも失わない心をもっ
ていたいものです。

因みにドイツやフランスには「善きサマリア人の法」という法律
があるそうです。医師が飛行機で急病人を助けようとしたが、そ
の乗客が死亡し、その後、遺族がその医師に訴訟を起こした事例
から、医療従事者が病人と遭遇しても助けないようになってしま
ったため次のように定められました。

「災難に遭ったり急病になったりした人などを救うために無償で
善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができること
をしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われな
い」と。

そういえば以前、東京の中野駅で転んでケガをした高齢女性がい
て、駅員に知らせているのになかなか来ないことがありました。
その間に近くにいた乗客が処置をするしかなく、しばらくしてや
って来たのは女性駅員。おそらく、ケガ人が女性ということで、
男性駅員が体に触ると問題視されかねないことから、女性駅員を
連れてくるために時間がかかったのでしょう。

後のことを考えすぎて躊躇して行動できない、そんな場面は日常
でも多々ありますが、恐れずに自分の働きができるよう祈るばか
りです。


<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしている「国防ニ
ュース最前線」、今週は伊藤俊幸・元海将に解説を頂きます。

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(つづく)



(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、
ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、国防問題などを
中心に取材・執筆。著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続け
た海の守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰も語ら
なかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だけでは防衛産業は守
れない』『防衛産業と自衛隊』(いずれも並木書房)、『終わら
ないラブレター─祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』
(PHP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出
版)、『ありがとう、金剛丸─星になった小さな自衛隊員』(ワ
ニブックス)。月刊「テーミス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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