配信日時 2019/10/03 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (249)】自衛隊統合防災演習(5)

こんにちは、エンリケです。

「自衛隊統合防災演習」の5回目です。

さっそくどうぞ


エンリケ


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『ライター・渡邉陽子のコラム (249)
 ― 自衛隊統合防災演習(5)―

         渡邉陽子
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こんばんは。渡邉陽子です。
先週末、なんとも美しい錫のぐい呑みが届きました。手に持つとず
っしりと重く、鈍く光る表面には「陽子」と彫られ、ぐい呑みの中
をのぞけば、底には金箔で描かれた三日月模様。非の打ちどころの
ない和食器の完成形を目にした気がして感激しました。同時に、私
のことを考えながら選んでくれたのであろうことが伝わってきて、
本当にうれしかったです。義理ではない贈り物って、相手に思いが
伝わりますね。
そしてその日の夜には日本がアイルランドに勝利するという快挙!
(ラグビーの話です、もちろん)。実況アナは4年前に南ア戦を実
況した人と同じだったのですね。いい実況でした。そして日本、強
かった…!

Yさま
不衛生な環境から疫病が発生するように、衛生管理の徹底は現代の
軍隊において基本の基本なのでしょうね。おっしゃるとおり、そこ
が精強な軍隊へつながっていくのだと思います。ありがとうござい
ました。


■自衛隊統合防災演習(5)

自衛隊統合防災演習の第5回目です。
ちきりアイランドも、いよいよ訓練「本番」です。
福田首相や林防衛大臣ら関係閣僚や橋下知事(いずれも当時)も会
場を視察、自衛隊など各機関の訓練を見守っています。

13時。最初の訓練種目である「災害情報訓練」のため、陸・空自衛
隊、消防、警察、海上保安庁などのヘリがちきりアイランド上空を
飛び交い、被災地の状況を確認しはじめました。
やがて門橋やUH-1により偵察要員とオートバイが搬送され、オー
トバイによる地上偵察が始まりました。
消防や警察の偵察要員も、ヘリからリペリングして地上に降り立ち
ます。これで孤立化していた地域が「脱孤立」するための足掛かり
ができました。

情報収集に続き、応援部隊の投入です。
人命救助は時間との戦です。CH-47のスリングによる車両搬送、ヘ
リによる部隊投入と、まずは空路から車両と人員を地上へ運びます。
海からは沖合に停泊した輸送艦『しもきた』から発艦したエアクッ
ション艇LCAC2隻が轟音をとどろかせ、警察車両や救援物資を積ん
だトラックなどを揚陸。
今回はこのLCACに予備自衛官も乗り込んでおり、揚陸後は一般隊員
と同じ迅速かつ的確な動きで救助活動を行ないました。

こうやって空と海から応援部隊が被災地に投入されている間に着々
と進められているのが、92式浮橋の架橋です。
この橋が架かることで、このエリアは陸路でのアクセスが可能とな
り「孤立」から解放されます。そして92式浮橋を通って車両による
部隊投入が行なえるようになり、より多くの人命を救うことができ
るのです。

地震により脱線し、高架橋から転落した電車から乗客の救出と医療
救護を実施する大規模列車事故救出訓練は、セットも大がかり。地
面に転倒している電車は本物で、南海電鉄からの提供です。
同時に、土砂崩れにより不通となった道路から障害物を取り除き、
大量の救助部隊を投入できるようにする道路啓開訓練も進んでいま
す。
今回の千葉に多大な被害をもたらした台風では、倒れた電柱や電線
が絡まった木が道路をふさぎ、災害派遣の車両の進路を妨害しまし
た。自衛隊にはそれらを撤去する能力があるのですが、電力がらみ
の障害物は電力会社が処理するという決まりがあるため、東電が撤
去するまでに時間がかかったことが支援の遅れにつながりました
(その後、東電が自衛隊に委託してからは、道路啓開は順調に進み
ました)。

被害状況や活動状況などの情報を共有することにより各救助隊を統
括指揮するため、被災地内に合同指揮本部が設置されようとしてい
るとき、応急救護所の設置運営も進行していました。ここは救出さ
れた被災者の医療救護やトリアージを実施する場所です。ここでの
トリアージの結果、重篤だと判断された負傷者は、ヘリによって後
方医療機関に移送されます。

自衛隊単体の訓練ではなく合同訓練であること、しかも近畿圏初の
大規模な総合防災訓練であることを実感するのは、この応急救護所
かもしれません。
被災地のあちこちから負傷者を担架に乗せて運んで来るのは、迷彩
服を着た自衛官だけではありません。消防、警察、赤十字、DMAT
(災害派遣医療チーム)、各医療機関など、救護所にはさまざまな
色のウエアが入り乱れています。ときにはひとつの担架を運んでい
る4人がみな違う所属というシーンすらありました。今でこそ珍し
くないシーンですが、当時としては本当に、目にしたことのない光
景だったのです。

とある場所では車両や建物が埋没し、その一部分だけを土砂からの
ぞかせていました。
ここからの救出活動も無駄がなく手際がいいものでした。チェーン
ソーを巧みに使う部分、スコップでひたすら掘り下げる部分、車両
の窓ガラスを控え目に、けれど確実に叩き割る力加減。機械と人力
をうまく使い分けつつ、被災者に「大丈夫ですかー!」「もうすぐ
ですよー!」と声をかけています。


(つづく)


(わたなべ・ようこ)

※現在連載中

「PANZER」10月号
「神は賽子を振らない」第6回
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「正論」10月号
「自衛隊あってのオリンピック」第4回
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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。

 
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