配信日時 2019/09/19 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (247)】自衛隊統合防災演習(3)

こんにちは、エンリケです。

「自衛隊統合防災演習」の3回目です。

ラグビーワールドカップも間近。
IDRCはすでに始まってます。

ラグビー好きな私には
夢みたいな日々がやってきましたw

さてきょうの記事は、
陸海統合演習のじっさいの模様が描かれてます。

さっそくどうぞ


エンリケ


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『ライター・渡邉陽子のコラム (247)
 ― 自衛隊統合防災演習(3)―

         渡邉陽子
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こんばんは。渡邉陽子です。
先週お伝えしたIDRC(国際防衛ラグビー競技会)が開催中です。
11日に行なわれた試合の観戦に行ってきましたが、会場の習志野演
習場も台風の被害があったようで、大きな木も伐採されていました。
隊員たちが短い時間に頑張って片づけてくれたのでしょう、まだ濡
れている落ち葉もきれいにまとめられていました。
試合は楽しく観戦したのですが、その日の夜、千葉県在住のOBから
自宅が停電、断水中だという連絡がありました。ラグビーと災害派
遣、どっちが大事なんだ、とも。当事者としてはそう思うのも無理
はありません。一方、防衛省も何カ月も前からホスト国として準備
をしてきたわけで、担当者はあまりにひどいタイミングの台風襲来
に泣きたい思いだったことでしょう。
白浜在住の友人宅は、一度は水道も復旧したもののまた断水してし
まい、自衛隊の入浴支援にとても感謝していました。まだ停電が続
く地域では、心身ともに疲労困憊されているとお察しします。1日
も早い復旧を祈るばかりです。



■自衛隊統合防災演習(3)

自衛隊統合防災演習の第3回目です。
演習では野外手術システムの洋上訓練も行なわれました。今でこそ
陸海空自衛隊の合同演習は当たり前のように行なわれていますが、
このときの「中部方面衛生隊の野外手術システムを海自の輸送艦
『しもきた』に搭載して艦内で展開する」という訓練は、過去に例
のない陸・海合同訓練でした。そのため、陸自も海自も手探りのと
ころが多々ありました。

この訓練の想定は「地震によって陸路が断たれた孤立化地域の負傷
者は、救助されても救急車で病院に運ぶことはできない。そこで被
災地の遠岸に停泊した輸送艦内に野外手術システムを搭載し、輸送
艦を救急病院とする」というものでした。
まずは約3時間かけて内甲板に手術室や病室などを開設し、翌日に
災害派遣2日目の朝という想定で訓練が始まりました。
艦内に患者が運ばれてくると、まず術前処理が行なわれるエアドー
ムでトリアージを実施、手術が必要な患者は奥の手術室へ、治療が
済んだ患者は天幕の病室へと移動します。
医官の「ここは痛みますか?」「深呼吸できますか?」など、はっ
きりとした大きな声が内甲板に響きました。

中部方面衛生隊第104野戦病院隊の1尉は、今回の訓練で病室長
として、病室に運ばれてきた患者のベッド配置をはじめとした患者
全般の管理を担当しました。
「艦内に救護所を展開するというのは初めてのことです。留意点と
しては、まずは海自との連携ですね。次に、普段は野外に設置する
手術システムを艦内で使うんですから手狭感があるのは当然のこと
として、その限られた空間でいかに患者の負担なく病室まで運ぶか
という動線の確保です。一方、艦内ならではの利点は、地上だった
らどうしても避けられない砂埃がないので、地上ほど過敏に感染防
止に気を付けたり、対策を考えなくてはいけない部分が少ないこと
です」
「想定外のこととしては、意外と艦内の騒音が響いたことでしょう
か。騒音のために情報の伝達に不便を感じるときがありましたが、
こういうことも一度やってみないとわからなかったことですね。け
れど一番懸念していた海自との連携についてはスムーズにいったと
思います」
今後の課題も聞いてみました。
「患者のためにも、それぞれの施設の室温管理が必要ですね。エア
ドームはエアコンが付いているんですが、天幕の病室は扇風機なん
です。あとは艦内で使えるコンセントの位置や数について把握して
おいたほうがいいということも、今回の訓練で気づきました」
実は取材時、内甲板に陸自の野外手術システムの一部を海自のフォ
ークリフトで設置しようとしたところ、システムはフォークリフト
では持ち運べないサイズであることが判明。フォークリフトを操縦
する隊員は何度か試みましたが、無理なものは無理。結局このとき
は設置を断念し、訓練開始までに別の方法で設置しました。
この一連のやりとりを目の当たりにして、あまりにも単純なミスに、
思わず「一般企業だったら上司からどんな叱責を受けるだろう」と
思ってしまいました。事前に確認するという考えがなかったほど、
当時はまだ陸海空の横の連携が希薄だったのです。こういう時期を
経て、現在の「機能する統合運用」があるのですね。



(つづく)


(わたなべ・ようこ)

※現在連載中

「PANZER」10月号
「神は賽子を振らない」第6回
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「正論」10月号
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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。

 
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