────────────────────────────
ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽にどうぞ
E-mail
hirafuji@mbr.nifty.com
WEB
http://wos.cool.coocan.jp
────────────────────────────
こんにちは、エンリケです。
きょうの連載を読み、
大綱、中期防、年度予算の関係
がスッとわかりました。
あなたもさっそくどうぞ
エンリケ
ご意見・ご感想はコチラから
↓
https://okigunnji.com/url/7/
─────────────────────────────
防衛予算から読み解く日本の防衛力(2)
防衛予算の三本柱─「大綱」「中期防」
「年度予算」の関係
市川文一(元武器学校長・陸将補)
─────────────────────────────
□はじめに
先週から連載を始めて早速、G様、Y様から励ましを頂きまし
た。ありがとうございます。過去に例のない防衛予算の解説です
から、試行錯誤を繰り返すことになると思います。読者の皆さん
からのご質問、ご意見を参考にしながら連載を進めていきたいと
考えていますので、引き続きよろしくお願いします。
前回は、今後メルマガを読み進めていく上で参照とする資料の説
明でしたので、今回から本題に入ります。まずは、防衛予算の三
本柱の「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」「年度防衛予
算」の関係です。すべての物事に共通しますが、いくつかのもの
を比較したり、関係を理解したりするために必要なのが全体を見
ることです。ざっくりと大まかに捉えることが重要です。
一部に焦点が行ったり、細部に入ってしまったりすると、まっ
たく間違って認識することとなります。説明する側としては、物
事の本質を誤魔化したいときに、この手法がよく使われます。
たとえば、公務員の給与や人員数を同規模の企業と比較して、国
の財政健全化のために国の歳出予算の5%程度の国家公務員人件
費を削減することの効果があるかのような説明が行なわれてきま
した。歳出予算全体を減らすのであれば、国の歳出予算の30%以
上を占める社会保障費や15%以上を占める都道府県に対する交付
金を減らさなければ効果はありません。
国の借金を減らすためには、歳入を増やし歳出を減らす必要が
ありますが、小さな金額を議論しても本質的な問題の解決には至
りません。歳入を増やすためには、税金を増やすか景気を良くす
るかです。歳出を減らすためには社会保障費を減らすか交付金を
減らすかです。交付金を減らすと都道府県の歳入が減りますから、
結局は歳入を増やすための増税か景気対策になります。
全体をざっくりと大まかに捉えることにより、今まで見えなか
ったものが見えてきます。今回の大綱、中期防、年度予算も同様
です。
▼「大綱」「中期防」「年度予算」の関係
前回もすでに略して呼称していましたが、本連載においては
「防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画、年度の防衛予算」をそ
れぞれ略して「大綱、中期防、年度予算」と呼称します。なお、
大綱、中期防については策定年度を冠しますから、31年度以降の
大綱、中期防は30大綱、30中期防と呼称し、年度予算については
実際に執行される年度を冠しますから31年度に執行される予算は
31年度予算と呼称します。
したがって、30中期防の1年目となる年度予算は31年度予算、
最終年度の5年目の予算は(令和)5年度予算となります。官公
庁においては、平成まで年号を使って年度を呼称していましたが、
令和からは西暦で呼称する計画があるようです。
大綱は、日本に必要な防衛力とはいかなるものかを示します。
概ね10年を基準としています。必要な防衛力を備えるのには時間
がかかります。将来を予測して将来必要となる防衛力を計画的に
整備していかなければなりません。つまり、30防衛大綱では令和
10年に必要な防衛力を示しているということになります。
30大綱には、「策定の趣旨」から始まって「我が国を取り巻く安
全保障環境」「我が国の防衛の基本方針」「防衛力強化に当たっ
ての優先事項」「自衛隊の体制等」「防衛力を支える要素」と専
門家でないと理解できない内容が書かれていますが、重要なのは
必要な防衛力を表す「キーワード」と具体的な防衛力を示す「別
表」です。
30大綱のキーワードは「多次元統合防衛力」です。そして、大綱
の最後のページに別表として部隊の規模と主要な装備品の数量が
記載されています。簡単に言えば令和10年頃に日本に必要な防衛
力は「多次元統合防衛力」で防衛力の規模は別表のとおりという
ことです。「多次元統合防衛力」とは何か? 別表で示されてい
る防衛力はどの程度の規模か? などの疑問があると思いますが、
本連載の後半で解説します。ここでは、大綱には何が書かれてい
るかを理解してください。
10年後の大綱の防衛力を整備するための計画が中期防です。大綱
には予算(経費)は記載されていません。実際に装備品を買い、
部隊を作るためには予算が必要です。その予算規模を表したのが
中期防です。大綱は考え方、中期防は買い物計画です。大綱の期
間は10年、中期防の期間は5年ということで、1つの大綱を2つ
の中期防で達成することになります。
中期防は5カ年計画ですから5年分の年度予算を合計した予算が
示されています。ホームページで見ることのできる中期防には5
年間合計の予算だけしか記載されていませんが、細部計画として
各年度の予算の計画も当然作成しています。概略の予算額は中期
防の予算を5で割ればいいわけです。この予算額が基準となって
年度予算が策定されるというわけです。
中期防の本文には、大綱で示す防衛力を達成するために必要な装
備品が記載されていて、具体的数量は別表に、予算規模は「所要
経費」として最後の項目に記載されています。大綱と同様に中期
防も専門家でないと理解できない内容ですが、重要なのは最後の
2ページ、所要経費と別表です。中期防の詳しい解説も大綱と同
様に連載の後半でしますので、ここでは、中期防が5年間の買い
物計画で2コ中期防をもって大綱が示す防衛力を整備するという
ことを理解してください。
中期防を基準としてそれぞれ年度予算が編成されるわけですが、
中期防で5年間の予算が決まっていれば年度で編成する必要がな
いではないかという疑問が生じると思います。予算には、毎年度
編成し国会で承認されて成立するという枠組みしかないため、中
期防の5年間の予算の枠組みは正規の予算としては成立していま
せん。大綱、中期防は閣議決定までの段階しか経ていないのです。
国の予算に関しては、年度予算でも補正予算(災害対応等で特別
に編成される予算)でも、閣議決定された後、国会で審議され多
数決で成立します。しかも、防衛予算は中期防で閣議決定されて
いるからといって「年度予算の政府内での審議はフリーパス」と
いうわけではありません。他の予算と同様に一から積み上げて予
算案を作ります。しかも、中期防で計画された装備品の取得数量
が削られることは常態化しています。中期防は年度予算を要求す
るための上限となっているのが実情です。
中期防とは、大綱の防衛力水準を到達するために達成しなければ
ならない計画で、日本の安全保障政策上非常に重要な計画である
ために閣議決定されています。本来であれば、中期防の予算や装
備品の取得数は下限であるべきです。中期防で計画されたとおり
に装備品が取得できないというのは日本の安全保障に影響を与え
る話ですから大きな問題となってもよさそうですが、国会でもマ
スコミでも話題になったことはありません。
大綱は10年後の日本の安全保障環境を見通して必要な防衛力を
示し、大綱で示された必要な防衛力を整備するための5年間の買
い物計画が中期防で、中期防の計画に従って年度予算を編成し、
毎年毎年、着実に防衛力を整備していく──というのが、建前の
大綱、中期防、年度予算の関係ですが、前述したとおり、必ずし
も建前どおりではありません。なぜ、建前どおりにいかないのか
は、連載の後半で解説します。ここでは、大綱、中期防、年度予
算の関係をしっかりと理解してください。これが、防衛予算と防
衛力整備の基本となります。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
市川さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。
↓
https://okigunnji.com/url/7/
【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。退官後の9月にはYouTube「桜林美佐の
国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊行予定。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個人情報を伏
せたうえで、メルマガ誌上及びメールマガジン「軍事情報」が
主催運営するインターネット上のサービス(携帯サイトを含む)
で紹介させて頂くことがございます。あらかじめご了承くださ
い。
PPS
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権はメールマガジン「軍事情
報」発行人に帰属します。
最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝しています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、心から感謝
しています。ありがとうございました。
●配信停止はこちらから
http://www.mag2.com/m/0000049253.html
●配信停止はこちらから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
----------------------------------------
発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
メインサイト
https://okigunnji.com/
問い合わせはこちら
https://okigunnji.com/url/7/
Copyright(c) 2000-2018 Gunjijouhou.All rights reserved.