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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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こんにちは、エンリケです。
市川 元陸将補の新しい連載が
きょうからスタートです。
首を長くして待っておられた方も
多いことでしょう。
市川さんの連載はこれで3回目です。
最初は防衛論
前回が陸戦兵器技術
そして今回は防衛予算。
いずれも、一般国民の立場からすると
巷にあふれる情報に
「帯に短し たすきに長し」のもどかしさを
覚えさせる分野ですね。
とくに防衛予算はそうです。そのためか、
防衛予算をとおして国防安保や防衛軍事を見る姿勢は、
殆どの国民に欠けています。軍事と数字といえば
兵器スペックにしか目が行かないのが実態のようです。
ところが本連載を通して、
国防軍事防衛を考える新たな物差しが手に入ります。
防衛予算は、わが国防軍事安保、自衛隊の現在過去未来
を考えるうえで絶対に欠かせない物差しです。
自由自在融通無碍にこの物差しを活用して、より広く
より深い国防防衛軍事安保理解につなげてください。
今回の連載は画期的。そう私は感じています。
毎週水曜日20時に配信する予定です。
どうぞお楽しみに!
ご意見やご感想をお待ちしています。
いつでもお寄せください。
エンリケ
ご意見・ご感想はコチラから
↓
https://okigunnji.com/url/7/
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(新)防衛予算から読み解く日本の防衛力(1)
「防衛予算」を確認する手段
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
早いもので、前回の連載「意外と知られていない面白兵器技術」
が3月に終了してから5か月が経ちました。3か月以内には連載
を再開する予定でしたが、テーマをあれこれ考えているうちに時
間が経過してしまったという感じです。
最終的に「防衛予算から読み解く日本の防衛力」というテーマ
で連載を開始することとしましたが、防衛予算の仕組みをわかり
やすく解き明かし、日本の防衛力の問題点を多くの方に認識して
もらいたいと考えています。
日本の安全保障、防衛に関することは不可思議なことばかりで
す。憲法から始まり、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画、年
度の防衛予算まで、普通では理解できないこと、おかしなことが
たくさんあります。まずは国の根本規定である憲法がおかしな状
態のままです。憲法については、改憲論で関心が集まっています
からほとんどの方がご存じかと思いますが、9条2項の問題です。
「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保
持しない。 国の交戦権は、これを認めない」と規定されています
が、日本には自衛隊があります。
「自衛隊は戦力ではないのでしょうか?」
「戦力ではなく防衛力だ」
「防衛力と戦力の違いは何ですか?」
「他国を攻めるためではなく自国を守るためだけに使うのが防衛
力だ」
「防衛力をもって、他国を攻めることはできないのですか?」
「できないのではなく、しないのだ」
「戦力を保持するが、自国の防衛のみに使用するということです
ね」
という具合に考えると、自衛隊は戦力以外の何物でもないのです。
防衛計画の大綱も、平成22年の改定までは「基盤的防衛力構想」
という普通では理解できない構想が使われていました。「基盤的
防衛力構想」とは、「我が国に対する軍事的脅威に直接対抗する
よりも、自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定
要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛
力を保有する」というものですが、これを素直に理解できる人が
いるのでしょうか。我が国に対する軍事的脅威に対抗できない防
衛力で国を守れるのでしょうか。
平成30年に策定された中期防衛力整備計画の「V 所要経費」に
は、二つの予算額が出てきます。「1 この計画の実施に必要な防
衛力整備の水準に係る金額は、平成 30 年度価格でおおむね 27
兆 4,700 億円程度を目途とする」「2(前略)防衛力整備の一層
の効率化・合理化を徹底し、(中略)本計画の下で実施される各
年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、おおむね 25兆5,000億円
程度を目途とする」と、二つの予算額には約2兆円の差がありま
す。これは一体、どういう意味でしょうか。
防衛省のホームページで平成31年度の防衛予算を見ると、「歳
出予算」と「新規後年度負担」という二つの数字がありますが、
何が違うのでしょうか? 通常マスコミなどで取り上げられる防
衛予算というと「歳出予算」です。マスコミでも国会でも「新規
後年度負担」は、ほとんど取り上げられませんが、なぜでしょう?
いくつかの例を紹介しましたが、まだまだあります。そして、
これらの不可思議な、わかりにくい予算構造を解き明かすことで
防衛力の問題点が見えてきます。本連載では防衛予算のイロハか
ら解説して、少しずつ問題の焦点に入っていきます。そして、連
載を終える頃には、読者の皆さんが独自で中期防衛力整備計画や
年度の防衛予算を読み解けるようになることを目指します。わか
りにくい解説がありましたら、遠慮なく質問してください。
▼防衛予算3つの基本─「大綱」「中期防」「年度予算」
防衛予算を読み解くには、まず、防衛予算を確認しなければな
りません。現在では、官公庁の各種情報はインターネットを通じ
てホームページ上でほとんどが確認できます。ホームページ上で
公開されていない情報に関しては情報公開請求をする必要があり
ますが、国民の税金で成り立っている国の予算はほとんど全てが
公開されています。
当然、防衛予算についても例外ではありません。防衛省のホー
ムページ(*)を開くと画面の上端の青い帯に9個の項目があり、
一番右側に「予算関連」の項目があります。ここをクリックする
と6個の項目が出てきますが、最初の「予算等の概要」で年度の
防衛予算が確認できます。
(*)
https://www.mod.go.jp/
本連載で参照とするのは、このうちの平成31年度「我が国の防
衛と予算-平成31年度予算の概要-」です。防衛省内では「予算
パンフレット」と呼ばれており、印刷されたものが関係部署に配
布されています。以後、「パンフレット」と呼びます。地方自治
体の各市町村長にも毎年、このパンフレットに基づき地方防衛局
や地方協力本部から説明がされます。このため、予算に関する各
種資料のなかでは比較的わかりやすく作られています。
しかし、防衛省の関係者からすれば比較的わかりやすいという
だけで、予算関連の業務に携わったことがない者にとって理解で
きるのは一部です。ましてや、一般国民にとってはほとんど理解
できない内容となっています。パンフレットの内容を理解するに
は、安全保障や軍事、国の予算に関する基本的な知識が必要とな
りますが、これらの知識を全て網羅すると数冊の本になってしま
います。
このあたりが作成する側にとっても苦労するところであり、理
解のしやすさとパンフレットの厚さを何かの基準で妥協しなけれ
ばなりません。現在では軍事や予算に関する基本的知識を前提に
作成されているということです。建前的には国民向けに作られて
いますが、実際には一般国民は理解できないという、政治・行政
に対する国民にとっての不満な状況がこんなところからも作り出
されています。これは、防衛予算だけではなく行政機関すべての
予算に当てはまります。
国民が税金を払っている行政の世界だから国民が理解できる説明
をしなければならないということ自体に無理があり、最低限の知
識は自ら勉強するのが原則だと思われます。買い物をするのに、
足し算と引き算がわからなければ苦労することと変わりありませ
ん。そもそもが、すべてを理解することには無理があるし必要な
いともいえます。興味と関心がある必要な事項だけを理解し、政
治家やマスコミを通じて意見を述べていくというのが望ましい姿
かもしれません。そのためには、関心のある国民が理解できる情
報がなくてはなりません。
本メルマガでは、「軍事情報」を発信していますから、その読者
は防衛問題に関心のある国民といえます。本連載では、軍事や予
算に関する基本的知識を解説し、連載の終了時にはパンフレット
がスラスラと読み解けることを目指します。連載終了時には、防
衛予算を理解し、防衛問題に関して発信できる力がつくことにな
るでしょう。
さて、パンフレットでは予算の概要しかわかりません。もっと詳
しいものは公開されていないのか、情報公開請求しないと見られ
ないのかという疑問も生じますが、実は防衛省のホームページで
非常に詳しい内容を見ることができます。パンフレットがある
「予算等の概要」の下に「概算要求書」という項目があり、ここ
をクリックすると平成31年度の欄の一番下に「歳出概算要求書」
があります。概算要求書の名前のとおり防衛省が要求した予算で
最終的な予算額ではありませんが、大きくは変わりません。
ここには、たとえば31年度予算として、陸上自衛隊の幹部自衛
官の制服をいくら要求しているのかも書かれています。防衛省が
31年度予算として要求したすべての内容が642ページでわたって
記載されており防衛予算が細部まで一般公開されていることがわ
かります。予算要求している内容と額が記載されているので、眺
めるだけでも面白いかもしれません。パンフレットが読めるよう
になれば、概算要求書の内容もある程度はわかるようになります。
次に、防衛計画の大綱(大綱)と中期防衛力整備計画(中期防)
です。防衛省のホームページ上端の青い帯の左端「防衛省の取組」
をクリックし、一番上の「防衛省の政策」欄の「防衛大綱と防衛
力整備」をクリックすると平成8年度以降の大綱と中期防が確認
できます。それ以前の大綱と中期防については、個別に検索する
必要がありますが、本連載においては参照することはありません。
なお、大綱と中期防は策定年度を冠して、平成31年の以降の大綱、
中期防であれば30大綱、30中期防と呼びます。
本連載では、以上の資料を参照しつつ解説することになります
ので、それぞれにどのような内容が書かれているのか一度目を通
しておくと良いと思われます。
はじめに、年度予算の解説から始め、防衛予算の構造を理解して
もらいます。作成順序は、大綱、中期防、年度予算ですが、年度
予算で予算構造を理解すると全体が理解しやすくなります。大綱
に関しては防衛予算について具体的に書かれてはいませんが、予
算の枠組みそのものを規制しています。防衛予算についてはこの
三つが基本となりますので、最初に、大綱、中期防、年度予算の
関係を簡単に解説します。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。1983年、陸上自
衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合幕僚監部
人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕僚監部武器・化学課
長、東北方面後方支援隊長、愛知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤務を最後に
2017年8月に退官。退官後の9月にはYouTube「桜林美佐の
国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊行予定。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)がある。
https://amzn.to/2qBGuNJ
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