配信日時 2019/07/29 08:00

【桜林美佐の美佐日記(37)】初めて体験した台風5号の大雨

こんにちは、エンリケです。

地域社会の絆は、
わが国が持つ足腰の強さの一角ですね。

さっそくご覧ください。


エンリケ


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桜林美佐の「美佐日記」(36)

初めて体験した台風5号の大雨

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の『土佐日記』ならぬ『美佐日記』
は今回で37回目です。

 とうとう体験することになりました。豪雨です。台風5号の影
響で福岡県の筑後地区や佐賀県で大雨に見舞われ、6000棟以
上が床下浸水という被害が出ました。

 この日は長崎市内で講演をする予定でした。前日は夜までしっ
かり天気図を確認し、雨雲は来ないと確信していたのですが、予
想に反して雨脚が強まり、未明からエリアメールが鳴り響きまし
た。

 まもなく、高速道路はほとんど通行止め、電車もストップ、な
んとかして駅まで行って動くのを待とうかとも思いましたが、駅
までの道路が軒並み冠水し通行止めになっていると聞き、やむな
く講演会を中止してもらうに至りました。

 こんなことは初めてです。そういえば、何年前だったか、福岡
の4師団で講話をしたことがあり、その日も台風でした。しかし
大幅に遅れたものの止まっていた飛行機の運航が再開され、なん
とか辿り着いて事なきを得たのでした。

 「講話はできなくても、懇親会だけでもなんとかして来てくだ
さい!」
 あの時、羽田空港から電話をしたら担当の方がそんな事を言う
ので、思わず笑ってしまったことを思い出します。祈りは通じて、
かろうじて短縮された持ち時間で講話をこなし、メイン!?の懇
親会は計画通りに2次会まで完遂されたのでした。

 帰る時にその方が「うまかっちゃん」と「棒ラーメン」をお土
産に持たせてくれて、「とんこつラーメンを味わってもらうこと
ができなかったので、これを持って帰って下さい。それと、〇〇
歳までには結婚できるように頑張って下さいね」などと予想だに
しないことを言うので「なに~っ、よけいなお世話じゃ~!」と、
ついツンツンしてしまったのですが、時を経て、こうして福岡県
で暮らすようになるとは・・・、今、再会できたらぜひお礼を言
いたいところです。

 それにしても自衛隊って、本当に面白い人がたくさんいるなあー
などと、色々なことを思い出して過ごす思いがけない休日となり
ました。

 その間にも、「ニュースで観たけど大丈夫か」とメールをあち
こちから頂いたりしましたが、私のいる住宅は大丈夫でした。し
かし、やはり川や用水路に近い所にダメージが集中してしまいま
す。

 自治体は早々に避難所を開設していましたが、雨が機関銃のよ
うに猛烈に降り続いていたら避難所にいくこと自体が困難ですし、
断続的な降り方だと「止むのではないか」と思って家を出ない、
あるいは避難所に一時的に行っても、小降りになった時に「もう
大丈夫そう」と、本来は決して安心はできないのですが帰る人も
多いようです。こうして現地にいると人々の感じ方や行動が実に
理解できます。

 地域の大手ショッピングモールは冠水し、まるで水没したよう
な状態に。前の日に、ここのプライベートブランドの酸化防止剤
無添加1.5L750円のワインを買いに行こうとして明日でいい
かと先送りしたことが悔やまれます。ワインを飲むと頭が痛くな
る原因は酸化防止剤だと知って以来、いくつかのブランドの酸化
防止剤無添加を試しましたが、ここの物が気に入って愛飲してい
ました。

 この大手スーパーは地方暮らしのよりどころであり、ありがた
い存在でありますが、一方で映画の配給も手掛けていて映画館を
有する店舗もあります。最近は巷で有名になっている美人新聞記
者さん原作の映画「新聞記者」の配給元となっていて、参議院選
挙期間中に反権力・反政権ムードの色の濃い映画を上映するって・・、
うーん、もしかしたらここって・・、と、内心思いながらもやは
り一番便利なので足を運んでしまうんですよね~。

因みに同スーパーには期日前投票所が設けられている店舗も少な
からずあったようです。くだんの映画を観た人の投票行動に影響
したかどうかは定かではありませんが・・。

 ともあれ、実は昨年の大雨でも冠水し、数か月の間営業中止し
ていたこちらのモールは再び長期の(多分)休業となってしまい
ました。そのため、近所の別のスーパーに買い物難民(?)が押
し寄せ、とても混んでいます。おそらく物流が大手ほど頻繁でな
いのでしょう、どんどん品物がなくなっているような気がしてい
ます。

 ただ、ちょっと感動したのは、雨が止み、水が引き始めるや否
や、待ってましたとばかりに多くの関係者らしき人たちが水の掃
き出し作業を始めていたことです。かのスーパーでは駐車場が池
のようになっていましたので、脇の道に多くの車が止まっていて、
きっと作業をしている人たちの車両なんだろうなと。

また、豪雨の翌日には床上浸水した家屋の周りにたくさん車が止
まっていて、どうやら周囲の人たちが手伝いに来ている様子でし
た。

その近くにはラーメン屋さんがあって、その日はそこに食事に行
ったのですが、夕方早くから奥の間で飲んでいたとみられるグル
ープがくだをまいていました。内容からして地元の消防団のメン
バーなのかなあというかんじでしたが、きっと朝から復旧作業を
していたのではないでしょうか。

「田んぼが池のごたるのに、国は何をしとると!」

そう、この辺りの田んぼはまるで池か海のようになっていました
ので、これは非常にショッキングな光景でした。そんな時にちょ
うど参院選の開票があり、笑顔で万歳する姿がテレビに映し出さ
れると、やるせない気持ちになっていたのでしょう。当事者にな
ってみないと分からないことでした。

『自衛官が語る災害派遣の記録』(並木書房)の後書きに記しまし
たが、戦後まずGHQが数多くの機関や組織を解体し、その中には警
防団がありました。また江崎道朗さんの『フリーダム~国家の命
運を外国に委ねるな』(展転社)を読むと、数々の神道司令の中
には神棚や仏壇を排除するだけでなく、親との同居もやめさせる
ため2DKの住宅をたくさん作り核家族化を促進することも含まれ
ていたようで、住宅に関する政策も日本解体の一環であったこと
が分かります。

その後、廃止された警防団は消防団に生まれ変わり、核家族の住
宅もニーズが変って二世帯が住める家も多くなってきたのは、日
本人が持っていたDNAのなせるわざなのでしょうか。

なにより「先祖から受け継いだ田んぼがある」という場所におい
ては、解体されてもなお、しっかりと根付いているものがある、
と実感しました。とにかく、こうして消防団ができていて、若い
方々が汗を流している姿はとても頼もしく勇気づけられます。

翌朝、散歩に出てみました。すると、水満たしだった田んぼの水
が引き、そこには太陽に照らされ緑色に輝く稲が、まるで何もな
かったかのように、整然と並んでいるのです。なんという逞しさ!

あの敗戦や占領政策のダメージ、実はまだ日本は引きずっていま
すが、こうして元通りになる強さがきっと私たちにはあるんだ・・・。
そんなことを確信したのでした。


<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしている「国防ニ
ュース最前線」、今週も伊藤俊幸・元海将に解説して頂きます。

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(つづく)



(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、
ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、国防問題などを
中心に取材・執筆。著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続け
た海の守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰も語ら
なかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だけでは防衛産業は守
れない』『防衛産業と自衛隊』(いずれも並木書房)、『終わら
ないラブレター─祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』
(PHP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出
版)、『ありがとう、金剛丸─星になった小さな自衛隊員』(ワ
ニブックス)。月刊「テーミス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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