こんにちは、エンリケです。
今回は、すこし目先の変わった話です。
フリーランスとして仕事されている
渡邉さんは、いろいろな経験をされ、
さまざまな現実を味わってこられました。
きょうは、そんな渡邉さんの心に何年もの間
引っかかっていたことを振り返ってくれます。
さっそくどうぞ
エンリケ
「ライター・渡邉陽子のコラム」バックナンバー
https://okigunnji.com/watanabe/
ご意見・ご感想はコチラから
↓
https://okigunnji.com/url/7/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『ライター・渡邉陽子のコラム (237)
― ある自衛官について思ったこと―
渡邉陽子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こんばんは。渡邉陽子です。
自分もものを書く端くれとしてしみじみ思うのですが、「買ったよ」
「読んだよ」と言っていただくのは大変ありがたいしうれしいこと
ですが、感想をいただくのはその何倍もうれしいものです。けれど
これまたよくわかるのですが、感想を書いて送るというのは、労力
がいるものです。「面白かった」「一気に読んだ」「勉強になった」
「興味深かった」、あるいは「つまらなかった」「内容が薄かった」
など、一言で伝えるならともかく、どう感じたのか、なぜそう感じ
たのかを著者に伝えるというのは一仕事なんですよね。伝えようと
すればするほど、労力がいります。それを知っているからこそ、書
き手は感想を伝えてくださった方への深い感謝が生まれるし、次の
筆の力にもなります。
なぜこんなことを急に書いたかと言うと、つい先日、友人が上梓し
た本を購入したところ「ぜひ感想を聞かせて」と言われました。読
了後に伝えると、「一部をSNSで紹介してもいいか」と言われるほ
ど喜んでくれたのです。そのとき、数年前に高名な方からも、きわ
めて謙虚に「忌憚なき感想を聞かせて欲しい」と言われ、驚いたこ
とがよみがえりました。
相手のいないキャッチボールが成立しないように、読み手あっての
書き手なのだと、改めて思う今日この頃です。このつたないメルマ
ガを読んでくださっているみなさまと、この場を提供してくださっ
ている管理人さまに、感謝の思いを新たにしています。
■ある自衛官について思ったこと
このメルマガでは部隊の紹介や訓練、演習の紹介などを中心にして
きましたが、今日はちょっと1回の読み切りで、何年も心に引っか
かっていることを書かせていただきます。それがタイトルの「ある
自衛官について思ったこと」です。
私は自衛隊という組織に敬意を抱いていますし、リーダーシップを
発揮して部隊を指揮する幹部も、その幹部を支え若手を育てる曹も、
そして曹を目指して日々汗を流す士にも、それぞれの立場に対する
敬意を持っています。だからこそ、ときに厳しい目で見てしまうこ
とがあるのかもしれません。
たとえば数年前に、ある自衛隊とはまったく関係ない媒体でアンチ
エイジングクリニックを取材したことがあったのですが、そこの医
師は防衛医大出身でした。防衛医大を出てからペナルティが発生し
ない年月を自衛隊病院で働いたのかは不明です。けれど少なくとも
私が取材した時点では自衛官ではなく、富裕層のマダムに対してア
ンチエイジングの自由診療をするクリニックの院長でした。インタ
ビューの最中にその事実を知り、私は頭に血が上っているのを相手
に悟られないようにするために大変な努力をしなければなりません
でした。
戦闘機パイロットがレッドフラッグアラスカという演習に参加し、
アラスカの壮大な自然に魅せられて退職、アラスカ在住のカメラマ
ンとなっていることを知ったときも、どうしても心から応援する気
持ちになれませんでした。まったく面識のない方であるにも関わら
ず。戦闘機パイロットを一人前にするまでに、どれだけの費用と労
力と多くの人の情熱が注がれてきたかを思うと、本人にも大変な葛
藤があったはずだと頭ではわかっているのに、気持ちがついていか
ないのです。
これについては知り合いのパイロットに心情を吐露したところ、
「そうやって気持ちが離れてしまった人と一緒に飛びたいとは思わ
ないので、辞めていいんですよ」と言われはっとしました。パイロ
ットならではの視点に、少し気持ちが楽になりました。
上記ふたりはすでに自衛官ではありませんが、3人目は現役の幹部
自衛官です。
かつてこの自衛官のアテンドで、カメラマン、私の3人で米軍基地
に行きました。米軍の司令官に取材すべくアポも取っていました。
米軍基地は自衛隊の駐屯地・基地以上にセキュリティチェックが厳
しく、事前に取材申請していても、当日も顔写真付きの身分証明書
が必要です。アテンドした自衛官はそれを知っていながら、カメラ
マンと私にそれを伝えるのを失念していました。幸い私は運転免許
証が財布の中にあったのでそれで事なきを得ましたが、あいにくカ
メラマンは持ち合わせていませんでした。米軍基地の入口まで来な
がらカメラマンはそこから一歩も入ることができず、インタビュー
の撮影をすることができませんでした。カメラマンは半日、無駄に
過ごしたことになります。
私が引っかかったのは、この自衛官が伝えるべきことを伝えていな
かったということそのものより、自分のミスに対して真摯に反省し
ている様子が見られないことでした。「フリーランスのカメラマン」
の半日を潰したということがどういうことかもわかっていない。し
かも「この教訓を次に生かします」と言ったのです。そのとき私は
内心で「次なんかねーんだよ!」と口汚くののしっていました。
今日の取材も二度はない。同じ取材なんて二度とないのです。さら
っと「次に生かします」と言われたところでそれはあなたの経験値
の話であって、取材では次なんてない。どうしてそんな当たり前の
ことがわからないのか。あなたは前職ですでに何人もの部下の命を
預かる立場だった。あなたの命令に従って部下が命を落としても、
「この教訓を次に生かします」と言えるのか? そんな思いが頭の
中をぐるぐるして、一瞬で血圧が上がった感じがしました。もう何
年も経ちますが、今でも「次に生かします」の言葉は私の中でずっ
と引っかかっています。
一度ミスするとそれが仕事の切れ目になるフリーランスと、リスト
ラのない自衛官。立場の違いが私をここまで烈しく激昂させたのか
もしれません。
私は自衛官の中でも幹部自衛官にはとりわけ求めるものが大きいで
す。敬意は抱いていますが、幹部自衛官が背負うものの大きさと重
さを知っている上でのリスペクトであり、だからこそ統率する側の
立場にふさわしい常識や人格も備えていて欲しいと思っています。
今回はとりとめのない話になってしまいましたが、あえてその人柄
に惚れた自衛官ではなく(もう山ほどいます)、「ううう」と感じ
た自衛官(元を含め)のお話をさせていただきました。
(わたなべ・ようこ)
「ライター・渡邉陽子のコラム」バックナンバー
https://okigunnji.com/watanabe/
ご意見・ご感想はコチラから
↓
http://okigunnji.com/url/7/
□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個人情報を伏せ
たうえで、メルマガ誌上及びメールマガジン「軍事情報」が主催
運営するインターネット上のサービス(携帯サイトを含む)で紹
介させて頂くことがございます。あらかじめご了承ください。
最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝しています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、心から感謝
しています。ありがとうございました。
----------------------------------------
メールマガジン「軍事情報」
発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
メインサイト:
https://okigunnji.com/
問い合わせはこちら:
http://okigunnji.com/url/7/
メールアドレス:
okirakumagmag■■gmail.com(■■を@に
置き換えてください)
----------------------------------------
●配信停止はこちらから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
<丸谷 元人の講演録&電子書籍>
謀略・洗脳・支配 世界的企業のテロ対策のプロが明かす…
知ってはいけない「世界の裏側」を見る
http://okigunnji.com/url/13/
---------------------
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権は
メールマガジン「軍事情報」発行人に帰
属します。
Copyright(c) 2000-2019 Gunjijouhou.All rights reserved