配信日時 2019/06/17 08:00

【桜林美佐の美佐日記(31)】残念な映画

こんにちは、エンリケです。

いろいろ話題の映画

「空母いぶき」

映画館に行くべきか行かざるべきか
それが問題だ・・

と悩んでいるあなたに朗報です。

映画「いぶき」を映画館に行って見るか
どうかで、心を費やす必要のなくなった
さっぱりした日常を思い浮かべてください、、、

さっそくどうぞ。


エンリケ


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桜林美佐の「美佐日記」(31)

残念な映画

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の『土佐日記』ならぬ『美佐日記』
は今回で31回目です。

映画『空母いぶき』を観てきました。映画作品の出来具合として
は、『シンゴジラ』が100点だとすれば、35点くらい・・・
でしょうか。

あくまで個人の感想であり、演出に対する好みもあります。鑑賞
することで得ることが必ずありますので、これをもって「観るの
やーめた」と諦めてもらいたくはないのですが、率直に書くこと
にしました。

余談ですが、今でも多くの方に読んで頂いている『海をひらく~
知られざる掃海部隊』を映画にしたい、というお話があって、な
かなか実現はしていませんが、もしもできるのなら脚本は私が書
きたいと今回強く思いました。おこがましいことではありますが、
やはり脚本は大事だとつくづく実感したのです。総理大臣のスピ
ーチライターになったら・・・などと書いたばかりで、こんどは
映画の脚本家・・・、身のほど知らずも甚だしいですが!

映画『空母いぶき』が、これは小学校のお遊戯会なのか?と思わ
せてしまうのは『シンゴジラ』が最初から最後まであまりにもテ
ンポよく、「ゴジラ」という非現実のテーマでありながら、登場
する政治家も官僚も自衛官も非常にリアリティがあるセリフ回し
で演じられていたため、どうしてもそれと比較すると「ざ、ざん
ねんすぎる・・・」としか言いようがないのです。

だいたい、映画館に行ってがっかりすると、ああ無駄遣いをして
しまったと自己嫌悪に陥ることになり、製作者ではなくいつの間
にか、その映画を選んだ自分を責めるようなことになりがちです。

ですから、映画を作る人は神経質になりすぎるほどに気を注いで
欲しいんですよね・・。投資した時間とお金に見合うかそれ以上
の満足を持って帰ってもらうためには、1分1秒いえ1フレーム
(30分の1秒)(映画は24フレかな?)も無駄にして欲しく
ないのです。

「この時間はなに?」「このカットは必要?」と思わせてはいけ
ません。確かに「間」は大事なのですが、「シンゴジラ」ではあ
の超早口な登場人物が喋っている中でも、ちゃんと「間」はとら
れていて、音響効果もとてもレベルが高かったのに、どうしてこ
の良い例を参考にしなかったのか、それが全くもって不思議です。

繰り返しますが、映画はどんな作品でも何らかの教訓や学びがあ
るはずで、観ることがムダということは決してありませんので、
そのためにもぜひご覧になって頂ければと思うのです。

ただ、もしかしたら、と思うのは『シンゴジラ』にリアリティが
あるという点が、多くの方々には分かり難いかもしれない、とい
うことです。閣僚や官僚が棒読みのように喋ったり、いちいち法
廷根拠を探したり、有事なのに細かい手続きや書類作成に追われ
たりする、あのあたりが本当に「あるある!」というところなの
です。

ところが、『空母いぶき』はある意味ほとんどが「ないない!」
なので、そういう意味ではお見事な対比で、あらゆる場面で「な
いない!」と突っ込めば、面白く鑑賞することもできます。

おそらく最初に皆さんが気付かれるであろう「ないない」は、自
衛官たちの会話ではないでしょうか。

きっと観客に分かりやすく説明も含めたセリフになったのでしょ
う。まことに不自然。言いますかね自衛官が「防衛大学」とか。
因みに『シンゴジラ』では「きんさんチーム」(緊急参集チーム)
とか冒頭から平気で使っていたと記憶します。説明しなくても観
ている人は状況でなんとなく分かるということでいいのだと思い
ます。

あと、航空自衛隊パイロットから海上自衛官に転身した「いぶき」
艦長が、同艦引き渡し式のパーティらしき場で総理大臣に「おも
ちゃをもらって嬉しい・・」みたいな趣旨をのたまうとか、私も
よく知っている方たちが監修として関わっていたことからすると、
うーん、どうしてこのような自衛官の発言が採用されているのだ
ろう・・・と疑問が拭えませんでした。もしかしたら「航空自衛
官だったらあり得そうじゃない~?」という判断だったのでしょ
うか・・。

あまり細かく書きすぎて皆さんが映画館に行こうとする気持ちを
阻んではいけませんが(もう十分に邪魔している?)、もう一つ。

「いぶき」の艦内には部外者が2人乗っていました。クジ引きで
「いぶき」の体験搭乗取材を許可された記者たちです。1人は新
聞記者のようですが、もう1人はインターネットニュース?の女
性記者という設定。なんとこの2人を乗せたまま「防衛出動」が
発令されてしまうのです。

防衛記者会の並み居る人たちを差し置いて、おじさん記者はとも
かくも、このお姉ちゃんがここに入るということは「あり得ない~」
と思いますが、もしかしたら「近未来」が設定のようですので、
まあ、あるのかもしれません。あと、私の知る限り防衛記者さん
たちはあんな陳腐な会話はしませんよ。

悪いことばかりを書いているようですが、感動した場面もあるの
です!それは「いぶき」の艦長が自衛隊によって救出された敵パ
イロットに話しかけるシーン。よどみない英語で話すのですが、
これはよかった。細部はぜひご覧ください!

そして、極めつけは護衛艦「いそかぜ」の砲雷長が放つ艦砲と艦
長の関西弁です!領土を占領する国と交戦状態になるも、本格的
な戦争に発展させないため、あくまでも抑制的な反撃にとどめる
必要があるとして、ミサイルではなく、接近した上での艦砲射撃
が実施されるのですが、このシーンは見応え十分です!

思い起こすのは、海上自衛隊の護衛艦にはもう大砲はいらないだ
ろうという話がけっこう現実のものとして言われていたことです。
ミサイルで事足りるだろうと。この映画を観ると、それが間違い
だったと分かります。

何年前だったか、製造する日本製鋼所ではがらんとした工場に、
メンテナンスのために戻って来た艦の砲身が1つぽつんと置かれて
いたことが印象に残っています。

というわけで、この映画を観てよく分かったことは、日本の艦に
必要なのは「敵兵に粋な言葉を語る英語力」、そして「艦載砲」
と「関西弁」であるということでした。海上自衛隊の皆様には、
ぜひ参考にして頂きたいと思います!

以上、『空母いぶき』の感想でした。


<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしている「国防ニュ
ース最前線」は今週は伊藤俊幸・元海将とお送りします。

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(つづく)



(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、
ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、国防問題などを
中心に取材・執筆。著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続け
た海の守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰も語ら
なかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だけでは防衛産業は守
れない』『防衛産業と自衛隊』(いずれも並木書房)、『終わら
ないラブレター─祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』
(PHP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出
版)、『ありがとう、金剛丸─星になった小さな自衛隊員』(ワ
ニブックス)。月刊「テーミス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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