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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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こんにちは。エンリケです。
加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が出ました。
今回はMP5です。
「MP5サブマシンガン」
L.トンプソン (著), 床井 雅美 (監訳), 加藤 喬 (翻訳)
発売日: 2019/2/5
http://okigunnji.com/url/14/
※大好評発売中
加藤さんの手になる書き下ろしンフィクション
『二つの愛国心─アメリカで母国を取り戻した日本人大尉─』
の第八話です。
さっそくどうぞ。
エンリケ
追伸
ご意見ご質問はこちらから
https://okigunnji.com/url/7/
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『二つの愛国心─アメリカで母国を取り戻した日本人大尉』(8)
「異国の恋」
Takashi Kato
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□はじめに
書下ろしノンフィクション『二つの愛国心──アメリカで母国
を取り戻した日本人大尉』の8回目です。「国とは?」「祖国と
は?」「愛国心とは?」など日本人の帰属感を問う作品です。
学生時代、わたしは心を燃え立たせるゴールを見つけることが
できず、日本人としてのアイデンティティも誇りも身につけるこ
とがありませんでした。そんな「しらけ世代の若者」に進むべき
道を示し、勢いを与えたのはアメリカで出逢った恩師、友人、そ
して US ARMY。なにより、戦後日本の残滓である空想的平和主義
のまどろみから叩き起こしてくれたのは、日常のいたるところに
ある銃と、アメリカ人に成りきろうとする過程で芽生えた日本へ
の祖国愛だったのです。
最終的に「紙の本」として出版することを目指していますので、
ご意見、ご感想をお聞かせいただければ大いに助かります。また、
当連載を本にしてくれる出版社を探しています。
□今週の「トランプ・ツイッター」5月12日付
ユートピアの語源は「どこにもない場所」。現実にはあり得な
い空想的理想郷のことです。オバマ前大統領の対外政策は、いま
振り返ってみると、ユートピア外交だったと感じます。
就任間もない2009年4月、チェコのプラハを訪れたオバマ
大統領は「核なき世界」を訴えた演説で欧州の人々を心酔させま
した。同氏のノーベル平和賞受賞はこのプラハ演説が評価された
ものです。「核兵器を使用した唯一の国家として、アメリカには
核廃絶に向けて行動する道義的責任がある」と、2期目の201
6年には米現職大統領として初めて広島平和記念公園を訪問。そ
の際の真摯な言葉は、被爆者も含め、多くの日本人の心に触れた
といわれています。
しかし8年にわたる在任中、すでに限界が露呈していた米ロ中
距離核ミサイル全廃条約を再交渉することなく放置し、結果的に、
同条約に拘束されない中国の核戦力増強を許しました。
オバマ政権最後の年、中国は南沙諸島に大規模な人工島を複数
建設し、同海域における実効支配を一気に強めます。が、米中関
係を「世界でもっとも大切な新二大国関係」と位置付けるオバマ
氏は何ら強硬策をとらずじまい。これ以降、習主席がにわかに軍
事拡張政策や覇権主義を推し進めたのは、オバマ政権の軟弱外交
を「米国が中国の核心的利益を容認した」と解した結果です。
民主党政権下のユートピア政策を真っ向から否定したのがトラ
ンプ氏のアメリカ第一主義。理想論やイデオロギーとは無縁のビ
ジネスマン大統領らしい「アメリカを食い物にする国には百倍返
し」という現実路線です。これは貿易・経済摩擦を超えた大国同
士の正面衝突。自由市場に基づく正統派資本主義と、共産党が恣
意的に経済介入し、他国の知的財産を侵害する国家資本主義との
覇権争いであり、この意味では、民主主義と独裁体制が対峙する
新冷戦と見ることもできそうです。
米中対立は早晩激化するとの予測が流布されています。もしそ
うなら、ひとつ気になるのは「日中関係は完全に正常な軌道に戻
った」とか「日中は互いに脅威とならないことを習近平国家主席
と確認した」とする安倍総理発言の真意です。アメリカにとって
随一の盟邦を自負する以上、日本が米中の間でとれる立ち位置は
自ずと限られているはず。独裁国家の現実に目をつぶり日本丸の
舵取りを誤れば、ユートピア外交でしくじったオバマ氏の轍を踏
むことになりかねません。
本日のトランプ・ツイッター、キーワードは beaten。「打ちの
めされた」「打ち負かされた」を意味する表現です。
I think that China felt they were being beaten so badly in
the recent negotiation that they may as well wait around
for the next election, 2020, to see if they could get
lucky & have a Democrat win - in which case they would
continue to rip-off the USA for $500 Billion a year....
(中国は先日の交渉で完膚なきまでに打ちのめされたと感じてい
ると思う。敗北感のあまり、2020年の大統領選挙まで交渉再
開を待って、運よく民主党が勝利するのを見届けたほうが得策だ
と考えている。そうなれば、これまで通り毎年5千億ドル余りア
メリカを食い物にできるからだ・・・・」
「二つの愛国心─アメリカで母国を取り戻した日本人大尉」(8)
(前号までのあらすじ)
カレッジ対抗弁論大会を崖っぷち作戦で生き延びて間もなく、
エリザベス・スミスというチューターと知り合った。英語が「採
点対象」から「コミュニケーションの道具」に変容しつつあった
時期でもあり、わたしは知的かつ魅力的な個人教師との会話を毎
回心待ちにし、無邪気に楽しんだ。彼女に褒められると心が舞い
上がった。英語を英語のまま感じ、理解し始めていた。
▼異国の恋
次に彼女と会ったとき、意を決し、この手練のセリフを言って
みた。驚きの表情はすぐほぐれ、
「ウェイ ツー ゴー、タカシ (その調子よ、タカシ)」と返
してくれた。
叫び出したい気持ちに駆られ、キャンパスの日だまりに出て遠
くの山々を見やった。日本では知らなかった、飼い慣らされてい
ない大自然。それが、気がつけば手の届くところにある。アメリ
カも悪くないかな。そう感じている自分がいた。
「ウェイ ツー ゴー (この調子だぞ)」
自分に声をかけてみる。英語が好きになれそうな予感がした。
ある晩、大学図書館で勉強を済ませて帰宅すると、女性が膝を抱
えてドアの前に座っていた。エリザベスだ。
「ゴメンナサイ。迷惑?」
消え入るように言う。思いつくことがあった。数週間前、私は
チューターの時間にかこつけてエリザベスに拙いラブレターを出
していた。なにを期待するでもなく、ただ、彼女といるときの高
揚感に突き動かされての行為だった。
「素敵な手紙。文法も良かったわよ」
翌日、すれ違いざまに言われた。が、嬉しすぎて英語が出てこ
ない。立っているのが精一杯だ。
「お昼を一緒にどう?」
振り向いた弾みでドレスの裾が舞い上がる。
「アー、イエス、オフコース」
予想外の誘いで始まったランチデートは、この日から毎日続い
た。何を語り合ったのか、何が話せたのか、話せなかったのか、
覚えていない。記憶にあるのは、エリザベスのとび色の目がずっ
と注がれていたことだ。
「アイ・ウォント・ツー・マリー・ア・ガール・ライク・ユー」
数回目のデートだった。なぜ唐突に結婚したいなどと口にした
のか、言ってどうするつもりだったのか、分からない。気がつい
たら言っていた。
「わたしと結婚したいの? それとも“わたしみたいな女性”と?」
返事をするヒマはなかった。見下ろされる気配に視線をあげる
と、髭面の大男がテーブルの脇に立っていた。彼はエリザベスに
立てと言う。命令口調だ。男の目にわたしは入っていない。操り
人形になったエリザベスは黙って付き従う。
男の上半身は、巨大な斧を操る木こりのように盛り上がっている。
小柄なエリザベスとはアンバランスなカップルだ。訳が分からず、
私は小さくなっていく二人の姿をカフェテリアのガラス越しに見
つめ続けた。
「あの手紙、トムが読んだの。ものすごく怒って『ビッチ!』っ
て怒鳴った」
「トム?」
「ルームメイト。長距離トラックの運転手」
「ルームメイト?」
「わたし、最近まで父と二人暮らしだった。でも火事で焼け出さ
れ父は亡くなった。そのあと自宅に引き取ってくれたのがトム。
父の友人で小さい頃から知っていたから」
「ビッチって?」
「文字通りには『雌犬』という意味だけどスラングでは・・・そ
う、身持ちの良くない女・・・あばずれ、かな」
「酷いことを言う」
一呼吸おいて意を決し、
「じゃあ、ボーイフレンドじゃないんだ?」
「いいえ。でもトムはそう思っているようね・・・」
知的で内気だと勝手に思い込んでいた女性の、意外にドライなセ
ックス・ライフが浮かび上がった。
「ガールフレンドみたいに扱われるのが息苦しくなったの。彼の
家だったから文句は言えなかったけど・・・・。今晩だけここに
いさせてもらえない? 今晩帰ると危ない」
「危ない?」
「また殴られる・・・」
彼女の頬は赤く腫れていた。
「ここって、僕と一緒に?」
「ビッチはお厭?」
理知と機知が混在するエリザベスの瞳に飲み込まれた。またぞろ、
気の利いたセリフの一つも出てこない。
「いや・・・あの・・・OK、プリーズ・カムイン」
「アリガトウ、タカシサン」
こうして異国の女が私に重なりひとつになった。この晩を境に、
意識に変化が起きた。日本が「帰るところ」から「遠くから懐か
しむ土地」へと変容し始めたのだ。
トムはその後、深追いしてこなかった。年下できれい好きのエリ
ザベスは都合の良い同居人だったが、結婚相手としては考えてい
なかったのかもしれない。「長距離運送でスーザンビルを出てい
る間に、衣類や家具を持って行け」という手紙が、ほどなくして
彼女の車の窓に残されていたからだ。
エリザベスが申し訳ほどの所帯道具をもってきて、リュックの中
からタオルに包まれた物を大切そうに持ち出して言った。
「これは父の形見。肌身離さず持ってきました」
中から出てきたのはコルト社製の大型リボルバー。45口径だ。
第2次世界大戦中、コルト1911半自動拳銃の不足を補うため
に配備されたものだ。
「南洋の島に上陸したとき、父はこれで日本兵を撃ったそうです。
『殺生は嫌だったが、そうしなければ自分が戦死していた』と言
っていた。なぜか、銃好きの兄や弟にではなく、『お前が自分の
身を守るために持っていなさい』とくれました。『身を守るため
に』って・・・」
実弾が込められており、いつでも撃てる状態だ。およそ拳銃には
縁のなさそうなエリザベスが、護身用にリボルバーを携帯してい
る。アメリカ人の自衛感覚は日本人とは違う・・・華奢なエリザ
ベスと大ぶりな拳銃を見比べ、改めて実感した。
「タカシの銃と一緒にしておいて」
言うが早いか、彼女はわたしの胸元に顔を埋め、長い間、さめざ
めと泣いた。どこか尋常でないものを感じたが、あえて涙の真相
を問いただすことはしなかった。
同棲を始めて半年ぐらい経って、わたしとエリザベスは籍を入れ
た。マグダーミッド夫妻が裁判所で行なわれた式に証人として立
会ってくれた。披露宴は恩師の自宅。米国風「そば屋の二階」結
婚式に、数人の学友が手料理持参で来てくれた。エリザベス21
歳。わたしが23歳のときだ。
(以下次号)
加藤喬(たかし)
●著者略歴
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。アラスカ
州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省外国語学校
日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―ある“日本
製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、『名誉除隊』
『加藤大尉の英語ブートキャンプ』『レックス 戦場をかける
犬』『チューズデーに逢うまで』『ガントリビア99─知られざ
る銃器と弾薬』『M16ライフル』『AK―47ライフル』
『MP5サブマシンガン』『ミニミ機関銃(近刊)』(いずれも
並木書房)がある。
追記
「MP5サブマシンガン」
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『AK-47ライフル』
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『M16ライフル』発売中♪
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『ガントリビア99』発売中!
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『アメリカンポリス400の真実!』発売中
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『チューズデーに逢うまで』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063326X
『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320
オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
きょうの記事への感想はこちらから
⇒
https://okigunnji.com/url/7/
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専門用語があ
ります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日本人が自衛
隊のブリーフィングに出たとしましょう。「我が部隊は1300時
に米軍と超越交代 (passage of lines) を行う」とか「我が
ほう戦車部隊は射撃後、超信地旋回 (pivot turn) を行って離
脱する」と言われても意味が判然としないでしょう。
同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」は
"Repeat" ではなく "Say again" です。なぜなら前者は
砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに使う言葉だからです。
兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍では建物の
「階」は日常会話と同じく "floor"ですが、海軍では船にちな
んで "deck"と呼びます。 また軍隊で 「食堂」は "mess
hall"、「トイレ」は "latrine"、「野営・キャンプする」は
"to bivouac" と表現します。
『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取りあげ、
軍事用語理解の一助になることを目指しています。
加藤 喬
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最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝しています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、心から感謝
しています。ありがとうございました。
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