配信日時 2019/05/03 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (232)】航空自衛隊 警戒航空隊(1)

こんにちは、エンリケです。

きょうから「警戒航空隊」のはなしです。

空自の警戒部隊と聞くとすぐイメ―ジするのが
レーダーサイトではないでしょうか?
でも「警戒航空隊」と聞くと「えっ?」と少し
止まってしまう人が多くなる気がします。

それも今日まで。
さっそくどうぞ

エンリケ


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『ライター・渡邉陽子のコラム (232)
 ― 航空自衛隊 警戒航空隊(1)―
         渡邉陽子
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〇〇さま

こんばんは。渡邉陽子です。
今週末は陸上自衛隊第7師団の記念行事に参加予定です。毎年冬は
千歳の7師団か旭川の2師団の演習取材に行くのが恒例となってい
たのですが、今年は都合がつかず行けなかったので、昨年9月に北
海道胆振東部地震の災害派遣を取材したとき以来です。
7師団は機甲師団ですから、記念行事の見どころはなんといっても
観閲行進。砲身が横一列でぴたりと揃った戦車の観閲行進は、部隊
の精強さをよく表しています。
そして千歳には、行ったらかならず足を運ぶお気に入りの店がある
ので、それもまた楽しみ。北海の幸はもちろん、えいひれの炙りの
おいしさときたら……東京で食べてたえいひれって一体なんだった
んだ! と思うほど最初の出会いは衝撃でした。いえいえ、目的は
あくまでも記念行事です。


■航空自衛隊 警戒航空隊(1)

北海道から沖縄まで、全国28か所にある航空自衛隊のレーダーサ
イト、は24時間体制で日本の防空圏を監視しています。そのレー
ダーサイトで掌握しきれない部分の監視や警戒管制を空中で行なう
のが警戒航空隊です。
ひとつの部隊で2つの機種を運用する稀有な部隊は、2006年に
統合幕僚監部が設立され統合運用が始まった当初は、陸・海・空統
合運用の象徴的存在としても脚光を浴びる存在でした。
私が初めて浜松基地の警戒航空隊を取材したのは10年以上前のこ
とです。その記事は「MAMOR」創刊号に掲載されました。当時
と変わっていないこともあれば大きく変化したこともあるこの部隊
について、警戒飛行管制隊のE-767を中心に、今週から何回か
にわたりご紹介します。ちなみにE-767は空中警戒管制システ
ムの略称、AWACS(Airborne Warning And Control System 
エーワックス)の名で呼ばれるのが一般的です。

警戒航空隊は、ひとつの部隊でありながらE-767とE-2Cとい
う2種類の航空機を保有しています。そのため、以前は隊本部がE-
767を運用する浜松基地とE-2Cを運用する三沢基地2か所にあ
るという、航空部隊としては珍しい編制になっていました。
現在は2014年の組織改編により、E-2C運用部隊の飛行警戒
監視隊を廃止し、飛行警戒監視群及び隷下に第601飛行隊を三沢
基地、第603飛行隊を那覇基地に新編。あわせてAWACSを運
用する飛行警戒管制隊は第602飛行隊に改編されました。

警戒航空隊の任務には、航空警戒と要撃管制、そして航空情報の収
集・伝達があります。
また、操縦者、兵器管制官、整備員などの教育も行なっています。
本来ならば教育は術科学校で行なわれるのですが、警戒航空隊の運
用する機種は少数機ゆえ、部隊にしかない機材も多いためです。
さらに、兵器管制官たちは航空士の資格を取得する必要があります
が、これも実際に部隊へ来ないと学べません。E-767の操縦に
ついても民間航空会社でシミュレーション訓練を行なうものの、民
間のボーイング767とは若干仕様が違うし、ミッションクルーと
の連携もここでしか経験できません。警戒航空隊における教育は、
大切な任務のひとつなのです。

警戒飛行隊の誕生には、1976年9月に起きた「ミグ事件」が大
きく関わっています。これは亡命目的のソ連の鋭戦闘機ミグ25が、
領空侵犯の末、函館空港に強制着陸したという事件です。
日本の防衛能力のもろさを露呈したこの「ミグ事件」によって早期
警戒機の必要性が説かれるようになり、警戒航空隊が新編。三沢基
地にE-2Cが、その後浜松基地にE-767が導入されました。

アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、NATOもAW
ACSを保有しています。ただし、他国のAWACSはボーイング
707をベースにしているE-3。日本のAWACSはボーイング
767-200型機をベースとしたE-767と、機体のサイズが
異なります。E-3よりも床面積が1・5倍も広いので、E-3のク
ルーたちが大いにうらやましがるとか。
旅客機と違って胴体部分には窓がなく(Fedexなどのカーゴ便も窓
がないですよね、あんな感じです)、後部胴体上方にAWACSの
象徴であるお皿のような回転式レーダーアンテナ、ロートドームを
配置しています。
乗員は操縦者2名、ミッションクルー18名の計20名。約12時
間と航続時間が長いので、遠隔地へ進出して哨戒ができるほか、多
数の通信装置によって複数の相手と同時に自動データ伝送および音
声通信が可能です。
世界で唯一、日本だけが保有するこのAWACSは、当然ながら注
目度も抜群。海外の武官も含め、年間なんと3000名近くの研修
者が訪れ、取材の依頼も非常に多いそうです。

(つづく)


(わたなべ・ようこ)



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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。

 
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