配信日時 2019/05/16 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (231)】第一空挺団平成31年降下訓練始め(3)

こんにちは、エンリケです。

第一空挺団平成31年降下訓練始め
の最終回です。

最後の一文、心に沁みました。

さっそくどうぞ

エンリケ


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『ライター・渡邉陽子のコラム (231)
 ― 第一空挺団平成31年降下訓練始め(3)―
         渡邉陽子
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〇〇さま

こんばんは。渡邉陽子です。
先週末は瀬戸内海の小さな島に行ってきました。広島から在来線で
広へ、そこから路線バスで島から島へと橋で渡り、最後はバス停ま
で宿の車に迎えに来てもらって、目的地の手前の島で前泊。翌日、
1日4便しかない船で目的地である三角(みかど)島に到着しまし
た。与那国島より遠い!
自衛隊の取材ではなかったのですが、広島まで行きながら呉も江田
島も岩国もスルーというのが妙な気分でした。三角島では私だけ虫
に刺されまくりましたが(虫を招く体質なのです)、思いがけずと
ても気持ちのいい取材で、PCの代わりに緑を見ている時間が長かっ
たせいか普段の眼精疲労もなく、なんだかリフレッシュできました。


■第一空挺団平成31年降下訓練始め(3)

先週、日米異なる落下傘が最大時は40~50も同時に空中を舞ったと
書きましたが、これは今までの降下訓練始めでは見たことない光景
でした。そのため、一般の熱烈な空挺ファンは自身のブログでその
様子を熱く語ったり、InstagramやTwitterでリアルタイムに投稿し
たりしていました。
昨年はある空挺隊員の落下傘が別の隊員に絡まって開かなくなると
いうシーンがありましたが(予備傘を開き無事に着地しました)、
これだけ短い時間に一気に降下するのですから、起きて不思議では
ないアクシデントなのかもしれません。
ちなみに落下傘の重さは、背負う主傘が18kg、胸元の予備傘が6
kgの計24kgです。

空挺降下が終わってからは、「ヘリボン部隊および水陸機動団によ
る第2次目標線の確保」となり、さまざまな装備品による行動がい
くつも同時進行します。
狙撃手とオートバイのヘリボン、事前制圧でも使用したUH-1と
AH-1Sによるヘリ戦闘火力、CH-47からのエキスト卸下、U
H-1からのリペリングと、航空機(回転翼ばかりだというのがま
さに「陸自」ですよね)から続々と隊員が離島に見立てた地上へ投
入されていきます。
さらに今回初登場の水陸両用車2両が上陸。
CH-47によるエキスト吊下・離脱、さらにUH-1による地雷散
布やCH-47による中距離多目的誘導弾の輸送などが展開されまし
た。

そして最後は3段階で構成される地上展示の最後、?の「海岸堡設
定以降の攻撃」ということで、後続部隊による残存した敵の撃破と
海上・航空優勢の確保が実施されました。
まず、即応機動連隊主力による師団の掩護態勢の確立として16式機
動戦闘車(空砲ですが105mm砲を射撃しました)や軽装甲機動車
が展開。続いて師団火力戦闘部隊による突撃支援態勢の確立と戦車
等による目標奪取として、10式戦車と89式装甲戦闘車が前進してき
ました。そして最後は方面隊等が対空、対舟艇および対艦戦闘部隊
による海上・航空優勢を確保。後方から03式中距離地対空誘導弾、
96式多目的誘導弾システム、多連装ロケットシステム、12式地対空
誘導弾、地対空誘導弾などが掩護射撃。
このように離島奪回の一連の流れを演習し、飛行展示の後に状況終
了となりました。
その後は空挺隊員による格闘展示も行なわれましたが、これは残念
ながら一般客からは見えない位置で実施されます。けっこう見ごた
えあるのですが、プレス専用の場所からも非常に見えづらく…(泣)

視察した岩屋毅防衛相は「高い士気と技量を示してくれた」と訓示。
中国の大幅な軍拡を指摘した上で、昨年末に策定された防衛計画の
大綱の基本理念である多次元防衛統合力について「諸君にさらなる
挑戦を求めるものだが、第1空挺団は新たな課題も克服することが
できると確信した」と述べました。
こうして第1空挺団の精強さや「日米空挺の絆」を示すことは、近
隣諸国をけん制、かつ抑止力としての効果も期待できます。もちろ
ん、現実に離島を占領された場合、このシナリオ通りに奪還作戦が
進むとは思えません。ここ数年の富士総合火力演習でも離島防衛を
テーマにさまざまな装備品をもって奪還へ向けてアプローチしてい
ますが、公開するということは抑止力になりえると同時に、相手に
手の内を見せることでもあります(もちろんすべてなわけがありま
せんが)。
また、特殊作戦群や水陸機動団の存在に押され、空挺が本来持って
いる力をうまく運用できていないという声も聞きます。当の隊員た
ちはそんな声など関係なく与えられた任務を粛々と、淡々とこなす
ことに徹するのでしょうが、どうかこの日本唯一の落下傘部隊には
適時適切な、そして彼らにしか完遂し得ない任務がこれからも付与
されることを、強く願っています。


(第一空挺団 平成31年降下訓練始め  おわり)


(わたなべ・ようこ)



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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。

 
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