配信日時 2019/04/22 08:00

【桜林美佐の美佐日記(24)】ごまかしのない日本語が、自衛隊にも求められる

こんにちは、エンリケです。

きょうの美佐日記も、いい話ですね。

<ごまかしのない日本語が、自衛隊にも求められる時代にな
っている> とのご指摘に深く同意するものです。

「姑みたいに・・」と書かれてはいますが、
言う人がいないと伝えられない大切なことは
確かにあります。

桜林さんにあらためて敬意を表します。

さっそくどうぞ。


エンリケ



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桜林美佐の「美佐日記」(24)

 ごまかしのない日本語が、自衛隊にも求められる

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の『土佐日記』ならぬ『美佐日記』
は今回で24回目です。

 前回は「言葉の重み」について書きましたが、その扱いがとて
も完璧だと言えるわけではありません。ただ、多少の自信を持っ
ているのは、学生時代にけっこうな「訓練」をしたからです。

 私の恩師は西澤實(西沢実)という、日本のラジオドラマ作家
の先駆けだった人で、NHKアナウンサーの指導もしていたことか
ら、私たちが平気で「ら」抜き言葉を使ったり、鼻濁音を使わな
かったりすると、その場その場で厳しく怒られたのです。

とにかく、そのような環境にあったことで、その後「話す」とい
うことに緊張感が伴うようになりました。条件反射で間違った日
本語を使ってしまったら、自分を許せない気持ちになるからです。

 そのような私が、自尊心を打ちひしがれたのが「英語」です。
以前、英会話カフェで練習をしようと通ったことがありましたが、
あえなく挫折しました。というのは、そこに集まる人たちの言葉
というより、話題に全くついていかれなかったからでした。

 話は芸能人やマンガ、アニメ、観光スポット・・などなどにな
りがちで、これらにサッパリ興味がない私は常に置き去りに。そ
のうちに「私の趣味はディズニーランドに行くことです」「なか
でもミッキーが一番好きです」などと完全なる嘘八百を並びたて
て帰って来るようになってしまい、自分の人格にも自信を失う経
験となってしまいました。

 でも、今考えれば話が合わないというのは言い訳で、きっと加
藤喬元米軍大尉にかかれば、もっと話の展開の方法はあったのだ
と思います。最大の原因は語彙不足ということなのだと・・。

 日本語の話に戻しますと、自衛隊と関わっていると明らかに誤
った日本語を使われることが多々あります。もちろん、自衛官に
そこを要求するのは酷なことだとは思いますが、心を鬼にして言
えば改善するほうがいいと思います。生涯、自衛官でいられるわ
けではありませんし、また、言葉で信頼を失うと組織の価値も残
念ながら下がります。大げさかもしれませんが、それくらい重く
受け止める人も世の中にはいるのです。

 『「ら」抜きの殺意』という演劇が昔あったようですが、「食
べれる」「喋れる」などとコマーシャルやドラマで平気で言って
いる光景は、それを言ったがために叱責されてきた人にとっては
「怒り」以外の何ものでもありません。
 
正しい射撃の訓練を受けた人の目の前に、常にトリガーに指をか
けていたり、銃口を人に向けている人がいるのと同じようなこと
だと言っていいでしょう。

 「ら」抜き言葉については、言葉の進化・変化により、すでに
「ら」抜きでも許容されているものもありますし、この類を言い
始めると「~させて頂きます」とか「ございます」を疑問文に使
って「ございますでしょうか?」なども厳密には間違いだったは
ずですが、一般的に多く使われていて私自身もすでに使ってしま
うことがありますので、もはやそんなに目くじらを立てるような
ことではなくなってきました(自分が使っているという基準で。
なんたる勝手な言い分!)。

しかし、やはり自衛隊の行事など多くの観衆がいる類の場面では、
用語の選択に細心の注意を払うことを強くお勧めします。

敬語の使い方はもちろん、そもそも部外の人と話す際は身内には
敬語を使わないとか、「鏡割り」より「鏡開き」のほうが適切だ
ろうとか、常識の範囲内で最低限の教育があってもいいのではな
いかと、老婆心ながら思います。

ところで、もう一つ「気になること」ついでに、よく自衛隊の偉
い方も含め「国民の生命財産を守ります」とおっしゃいますが、
私にはどうしても引っ掛かりがあります。

もちろん、間違えではないですし、災害派遣ではそのような結果
を多数残しています。ただ、どうなんでしょう、自衛隊は国民の
生命は守るが、「財産」は守り切れないことだってあるのではな
いか?と私はつい思ってしまうのです。

国家の主権や独立そして平和を維持する役割を担う軍が存在し、
その結果として国民の財産は何事もなく守られるという状態はあ
るものの、これをして、人々が「自衛隊は私たちの財産を守って
くれる」と誤解しやしないかと、私は心配なのです。

国民保護が必要な事態となった時には、家屋が破壊されるような
こともあるかもしれず、
「なぜ、家を守ってくれなかったの」「自衛隊は嘘を言っていた」
などと誹(そし)られたらたまったものではないと、私は常々思
っています。

姑のようにうるさくなってしまいますが、この疑問に対し明白な
答えがある熟考を重ねてのスピーチであればいいのですが、判で
押したように、誰かが言っていたから・・・という理由で使って
いるのなら再検討されて然るべきではないでしょうか。

因みに自衛隊法等ではこのような表現はなく、あくまで自衛隊は
我が国の平和と独立を守り国の安全を保つものとされているよう
です。

もはやこの文言だけで十分に納得できると思いますが、おそらく
反自衛隊勢力が強かった頃は「自衛隊は国民を守る気などないん
でしょ」というプロパガンダが盛んだったために、苦肉の策で
「生命・財産を守る」としたのではないかと想像するものです。

そうした経緯が仮にあったとして、部内や関係者用と、部外の人
たち用とで表現を変えているケースも中にはあるとすれば、それ
はそれで「二枚舌」と捉えられてしまいかねません。

最早、ごまかしのない日本語が、自衛隊にも求められる時代にな
っているのだと思います。「正しい言葉」という実包を込めて、
論戦に挑みたいものです。


<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしている「国防ニュ
ース最前線」、先週はお休みと書きましたが誤りでした。今回も
続けて伊藤俊幸・元呉総監の解説です!

http://www.chclara.com



(つづく)



(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、
ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、国防問題などを
中心に取材・執筆。著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続け
た海の守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰も語ら
なかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だけでは防衛産業は守
れない』『防衛産業と自衛隊』(いずれも並木書房)、『終わら
ないラブレター─祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』
(PHP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出
版)、『ありがとう、金剛丸─星になった小さな自衛隊員』(ワ
ニブックス)。月刊「テーミス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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(代表・エンリケ航海王子)
 
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