こんばんは、エンリケです。
日本国民が強く持っていた「反自衛隊」感情のなか、
50年以上にわたり、砂を噛むような思いでひとつひとつの災害
派遣活動に「誠実に」取り組んできたわが自衛隊は、ほぼ砂漠状態
だった国民の対自衛隊感情を「自衛隊への信頼」にまで育むとい
う偉大な事業を成し遂げました。
この本を読み、
いまの時代、「誠」を重んじる道を実践しているのが
わが自衛隊で、その良き伝統は脈々と受け継がれている、
と強く感じました。あらためて頼もしさを覚えた次第です。
自衛隊の活動記録で一般人で読める本といえば、
イラク派遣や東北大震災派遣、ルワンダ派遣、サリン事件対応く
らいしか思いつきません。
なかでも、最も活動の数が多く、一般国民に身近なはずの
「災害派遣」の全貌をまとめた本は、不思議ですがこれまで
ありませんでした。この本をもって嚆矢とします。
一番の特徴は、実際その場にいた自衛官のことばを通じて、
自衛隊災害派遣活動の実際や実態、核にあったものが何だったか?
が伝わる点です。
もっといえば、
現場で現実と格闘した人だからわかる
報告というより吐露とよんで差し支えないホンネさです。
そんな、自衛隊災害派遣の全貌をまとめた本の内容は以下のとお
りです。
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目 次
監修者のことば 桜林美佐(防衛問題研究家) 1
序 災害派遣は国民の信頼と期待の源 18
沖縄の緊急患者空輸任務40年
波濤を越えて 第15ヘリコプター隊第1飛行隊長(当時)川嶋和之 23
沖縄の不発弾処理隊創設42年の軌跡
いつの日か不発弾がなくなるまで 第101不発弾処理隊長(当時)渡邊克彦 28
「御巣鷹山日航機墜落事故」派遣
悲しみのバレーボール球 第12施設大隊本部第3係主任(当時)市川菊代 34
「阪神・淡路大震災」災害派遣(1)
自衛隊に対する印象が変わった 中部方面総監部幕僚副長(当時)野中光男 39
「阪神・淡路大震災」災害派遣(2)
派遣要請を待たずに呉を出港 呉地方総監(当時)加藤武彦 46
「阪神・淡路大震災」災害派遣(3)
災害派遣出動の蹉跌と教訓 中部方面総監(当時)松島悠佐 51
「地下鉄サリン事件」災害派遣(1)
待ったなしの除染作戦 第32普通科連隊長(当時)福山 隆 61
「地下鉄サリン事件」災害派遣(2)
命懸けの除染活動に従事して 化学学校技術教官(当時)中村勝美 67
「有珠山噴火」災害派遣
万全な態勢で「犠牲者ゼロ」を達成 北部方面総監部幕僚副長(当時)宗像久男 72
「東日本大震災」災害派遣(1)
自衛隊の組織力を遺憾なく発揮 東北方面総監部防衛部長(当時)冨井 稔 79
「東日本大震災」災害派遣(2)
郷土部隊としての矜持を堅持し活動 第6師団長(当時)久納雄二 85
「東日本大震災」災害派遣(3)
「Jヴィレッジへ前進し、現場の指揮を執れ!」福島原発対処現地調整所長(当時)田浦正人 91
「東日本大震災」災害派遣(4)
迅速に物資を被災地に送り込む 中部航空方面隊司令官(当時)渡邊至之 97
「東日本大震災」災害派遣(5)
東日本大震災に見た隊員の強さと優しさ 第4海災部隊指揮官・掃海隊群司令(当時)福本 出 103
「東日本大震災」災害派遣(6)
自衛隊頼みの初期対応 宮城県危機対策企画専門監(当時)小松宏行 109
「東日本大震災」災害派遣(7)
東日本大震災の医療支援活動 自衛隊仙台病院長(当時)森﨑善久 114
「東日本大震災」災害派遣(8)
胸を張って語れる活動を実施しよう 第9師団長(当時)林 一也 120
「東日本大震災」災害派遣(9)
師団長の果断な決断 第4師団第3部長(当時)橋爪良友 127
「東日本大震災」災害派遣(10)
被災・復旧そして完全復興へ 第4航空団基地業務群司令(当時)時藤和夫 133
「東日本大震災」災害派遣(11)
万全の備えで福島原発へ空中放水 第1輸送ヘリコプター群第104飛行隊長(当時)加藤憲司 139
「東日本大震災」災害派遣(12)
福島第一原発へ冷却水運搬 横須賀港務隊大型曳船船長(当時)厚ケ瀬義人 145
遭難ヨット「エオラス」号乗員の洋上救難
白く砕ける波濤を越えた緊迫の人命救助 第71航空隊飛行隊員(当時)中畑昌之 151
「伊豆大島土砂災害」派遣
二正面作戦の相乗効果 東部方面総監(当時)磯部晃一 157
「広島豪雨」災害派遣
行政にとって自衛隊は「最後の砦」第13旅団司令部幕僚長(当時)山本雅治 164
「御嶽山噴火」に伴う災害派遣
厳しい状況下での捜索救助任務 第13普通科連隊長(当時)後藤 孝 169
「関東・東北豪雨」災害派遣
関係機関と緊密な連携のもとに任務遂行 第4施設群長(当時)武隈康一 175
「熊本地震」災害派遣(1)
自衛隊と自衛官時代の教育に感謝 熊本県危機管理防災企画監 有浦 隆 183
「熊本地震」災害派遣(2)
災害派遣で自衛隊の果たす役割 第8師団長(当時)岸川公彦 190
「熊本地震」災害派遣(3)
プッシュ型からプル型支援へ 西部方面総監(当時)小川清史 195
「熊本地震」災害派遣(4)
過去の震災派遣で学んだ教訓を活かす 第4師団長(当時)赤松雅文 200
「熊本地震」災害派遣(5)
即応予備自衛官の活動を指揮して 第24普通科連隊長(当時)稲田裕一 205
「熊本地震」災害派遣(6)
24時間連続で病院へ給水 第5航空団基地業務群司令(当時)和田竜一 211
航空救難団の災害派遣
人命救助にすべてを捧げる 航空救難団松島救難隊救難員 熊坂弘樹 217
「西日本豪雨」災害派遣(1)
被災者に寄り添う支援 第13旅団長(当時)鈴木直栄 223
「西日本豪雨」災害派遣(2)
段階的に変化する自衛隊の役割 中部方面総監 岸川公彦 229
「西日本豪雨」災害派遣(3)
海自艦艇の機動力を活かして 呉地方総監(当時)池 太郎 235
「北海道胆振東部地震」災害派遣
師団全隊員を誇りに思う日々 第7師団長 前田忠男 241
執筆者略歴(掲載順)248
「あとがき」にかえて
なぜ自衛隊はがんばれるのか 桜林美佐 255
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いかがでしょう?
この本には、過去50年余りの間に行われた主な自衛隊災害派遣と、
任に当たった自衛官たち(指揮官・幕僚・隊員)37名の証言が
収められています。
自衛隊家族会の機関紙『おやばと』の連載記事をまとめたもので、
それだからでしょうか、証言内容が脚色も誇張もなく実にリアルで、
緊迫感ややりきれなさが、ひしひしと読み手に伝わります。
実際の災害派遣は、離島での救急患者輸送、不発弾処理、行
方不明者捜索、医療、防疫などなど、活動範囲は広範かつ膨大です。
そんな自衛隊の災害派遣についてよく見聞きするのは、
機動力の高さや組織力の発揮、行方不明者の捜索といった
「能力発揮」の面です。しかし「高い指揮能力」があってはじめて
「高い能力を発揮」できることが、この本を読むとよくわかります。
理解ここに至って初めて自衛隊災害派遣を理解したと言えるのかもし
れない、とすら思います。
わが国では、目に見えるものしか理解・評価できない風潮が年と
ともに深まっています。そのせいか災害派遣でも、目に見える動
きだけ見てワイワイ言っている印象を持ちます。
自衛隊がなぜあそこまで卓越した能力を発揮できるのか?
を理解するなら、目に見える動きを支えた、目に見えない「指揮
能力」への視野が不可欠です。この本はその視野を与えてくれます。
監修者の桜林さんの冒頭文とあとがきも必読です。
その問題意識に共感するところ、きわめて大でした。
ぜひ読んでください。
おススメです。
『自衛官が語る災害派遣の記録─被災者に寄り添う支援』
桜林美佐監修/自衛隊家族会編
並木書房発行
http://okigunnji.com/url/28/
エンリケ