こんにちは、エンリケです。
河野さんのお姿に、
エリートのふるまいかくあるべし
を見た思いがしました。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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桜林美佐の「美佐日記」(23)
「一歩踏み出した勇気」に敬意
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の『土佐日記』ならぬ『美佐日記』
は今回で23回目です。
F-35Aが青森県沖の太平洋上で消息を絶ってから、やはり気が晴れ
ないですね。事故が起きるといつもそうですが、帰りを待つ家族、
そして捜索にあたるあらゆる関係者のことを考えると心が落ち着
きません。
そんな中、近くの自衛隊駐屯地のそばを通ると、新隊員さんたち
と思われる元気のいい声が聞こえてきました。皆さん頑張って下
さいと思わず呟いてしまいますが、最近は自衛隊生活が始まって
間もない親御さんからのクレームが多くなっていると聞きます。
それどころか、「だっさく」(=脱走)を手引きするお母さんが
いるのだとか、トンデモ話がエスカレートしているようにも感じ
ます。
こうした事例は間接的に聞くと、単なる「モンスターペアレンツ」
話の一環としか受け止めませんが、実際に親御さんの話を聞くと、
共感できることも多々あります。
たとえば、こんな方がいました。無事に自衛隊入隊を果たした息
子さんが、最初の休日に帰宅し、聞けば、生命保険に入ったとい
う。保険会社の担当者が来て皆で説明を聞き、なんとなく流れで
オプションも選んで加入したというので内容を尋ねたら、本人は
「みんなが入ってたから」というだけで、詳しい中身は説明でき
ないというのです。
そこで親御さんは怒りました。いきなり生命保険の説明会がある
こと、加入せざるを得ないシチュエーション、さらに、自衛官が
殉職した場合の賞じゅつ金が十分ではないということ諸々に「募
集事務所で聞いた魅力的な自衛隊じゃないではないか」と、大い
なる不満を抱いたといいます。
そう、そうなんです。おっしゃる通りです。おそらく自衛官たち
も自衛隊に関わっている我々も皆、最初は「おかしい!」と思っ
ていたはずなのですが、いつの間にか自衛官が「もしも」の時の
ために生命保険に自ら入ることを受け入れてしまっています。
いえ、もちろん、それが悪いわけではありませんし、保険会社に
助けられている事実も大きいですし、安心のためにも加入を勧め
る上司や同僚のアドバイスは現時点では妥当なのです。問題は、
この状態に慣れてしまっていることでしょう。
賞じゅつ金については拙著『自衛官の心意気』(PHP)の197
ページにも書きましたが、実は、警察官や消防士は地方公務員で
あるため、国からだけでなく都道府県や市町村からも賞じゅつ金
が授与されることから、それらを合わせると最高授与額が900
0万円となります。現在、自衛隊ではイラク派遣や南スーダンPK
Oなどで最高額の9000万円となるものの、警察や消防よりも少
なくなる場合のほうが多くなっています。
それゆえに各自が生命保険に入り、不足分を補おうというわけで
すが、命を賭(と)している自衛官にとって決して健全な考え方
ではありません。東日本大震災の後、お給料が減った時には「生
命保険を解約した」という話を何人かの自衛官から聞きました。
つまり、この保険料自体、いざという時は救いの神になるかもし
れませんが、一方で生活の悩みの種にもなり、やはり、そんな憂
いなしに任務に没頭してもらうべきでしょう。
以前、東京で地下鉄に乗っていたら隣に座った母娘の会話に驚き
ました。
「あなた結婚するなら自衛隊か消防士にしなさいよ」
「えー、自衛官ってお給料いいの?」
「どうかしらねえ・・、あ、でも、消防のほうがいいわ!自衛隊
は危険な割に補償が少ないって聞いたことあるわ!」
私は「バカ親め!あんたの娘と誰が結婚するか!」と、立ち上が
って胸ぐらをつかむようなことは決して致しません。すぐに気づ
きました。この母娘は神様からの使者であり、私に「しっかり発
信しなさい」と促しているに違いない!と。
ずっと書いていますが、やはり「自衛隊募集と親の問題」にもっ
と注力する必要があると思っています。実はこれが「自衛隊と憲
法」の問題にもつながっていることも大きなポイントです。
自衛隊が特別職国家公務員という立場である限り、給与体系など
を例外的に変更することはできない。それがゆえに自衛隊が一行
政機関ではなく、別のものとして存在が明記されることは処遇に
テコ入れができる一里塚になり得るという指摘を私は重く受け止
めています。
逆に言えば、現状のままでは改善が難しいということでもある
わけです。
ところで先日、BS-TBSの「報道1930」に退官したばかりの河
野克俊・前統幕長が出演していましたが、安定したやりとりに驚
かされました。中でも印象的だったのは2年前に日本外国特派員
協会での、憲法改正「ありがたい」発言についてでした。
これは、安倍総理が憲法9条の改正に意欲を示したことについて、
見解を問われた当時の河野統幕長が、統幕長の立場から発言する
のは適当でないと前置きした上で、「一自衛官として申し上げる
ならば、自衛隊の根拠規定が憲法に明記されるということであれ
ば、非常にありがたいと思う」と述べたものです。
このことに対し、「申し上げられません」で終わらせることはい
くらでもできました。しかし、あえてコメントをしたのは、かつ
てはいわゆる「日陰者」のようだった自衛隊が、過去の先輩や部
下たちにより実績を残し「顔の見える自衛隊」に変化している中
で、トップの人間が何を考えているか全く分からない状態はむし
ろ不健全だと考えたからだといいます。
この質問は必ず来るだろうと予測し、くだんの文言は熟考に熟考
を重ねて発言したのだそうです。これに対し出演者の1人が批判
めいたことを言いました。栗栖統幕議長発言や田母神空幕長の言
動によって自衛隊の歴史はそのたびに後退を余儀なくされた・・。
だから、やはり当時の河野統幕長の発言も踏み出しすぎた・・と
いった趣旨でした。
番組ではこの発言の後、すぐに別の話題に移ったのですが、前統
幕長は数分後に「さきほどの話ですが」と話題を戻しました。確
実に進化している自衛隊において、前例にとらわれず前に進むべ
きだという考えの下、自らの意志に基き考え抜いた発言だったこ
とを重ねて主張されたのです。先の御仁は反論の余地もありませ
んでした。
私は前統幕長の提灯持ちをしたいわけでも何でもありません。た
だ、この「一歩踏み出した勇気」に敬意を表したいのです。
自衛隊を退官した後、さまざまな場で発信をすることは後輩たち
のために大事な務めと分かっていても、これはそんなに簡単では
ないのです。問題は「言葉」だと私は思います。人前で特にメデ
ィアに喋ったり書いたりするためには言葉の重みを理解していな
ければなりません。
政治家の失言に「言葉狩り」だという意見もありますが、「言葉
狩り」というのは、「床屋」と言ってはいけないとか「○○のメ
ッカ」などと言うと宗教上問題があるといった極端に用語を気に
する場合を指すものであり、国や組織を代表するような人の言葉
はやはり一言一言が問われて当然だと私は思います。
「復興より議員が大事」や、石巻を「いしまき」と読んだ前五輪
大臣は言葉を磨いていないと言わざるを得ません。「言葉は武器」
であり、それを使うということは、非常に重く、しこたま練って
磨いて、完成させていく、そんな準備が要ることなのです。だか
らみんな面倒になってしまうのです。
「一歩踏み出す勇気」の結果、この春、真新しい制服に袖を通し
た隊員の皆さんがいます。親御さんとて同じ勇気でお子さんを送
り出したことでしょう。その勇気に報いるためにも、自衛隊で常
態化している非常識を見直し、自衛隊関係者は一歩進まなくては
ならない・・・、駆け足する隊員さんを柵の外から見ながら、そ
んなことを感じています。
<おしらせ>(1)
『自衛官が語る災害派遣の記録』(並木書房)が本屋さんに置い
てない、とか、「防衛省の厚生棟(の本屋さん)にまだない!」
など、お声を頂いています。多くの皆さんに宣伝して頂いて話題
になるとお近くの書店や防衛省でも扱ってもらえることと思いま
す(笑)。どうぞよろしくお願いいたします!
<おしらせ>(2)
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしている「国防ニュ
ース最前線」今週はお休みです。
<お知らせ>(3)
4月17日(水)は東京MXテレビ07:00~08:00「モーニ
ングクロス」に出演します。
以上!
http://www.chclara.com
(つづく)
(さくらばやし・みさ)
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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、
ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、国防問題などを
中心に取材・執筆。著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続け
た海の守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰も語ら
なかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だけでは防衛産業は守
れない』『防衛産業と自衛隊』(いずれも並木書房)、『終わら
ないラブレター─祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』
(PHP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出
版)、『ありがとう、金剛丸─星になった小さな自衛隊員』(ワ
ニブックス)。月刊「テーミス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。
PS
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(代表・エンリケ航海王子)
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