配信日時 2019/04/01 08:00

【桜林美佐の美佐日記(21)】自衛隊の募集難。ピンチをチャンスに変える秘策は?

こんにちは、エンリケです。

わが国は不思議な国で、
時間をかけて何でも達成してきた国です。

人種差別解消しかり、
明治維新しかり
仏教の換骨奪胎しかり
カラオケしかり
・・・

できないことはないんですね。

目の前にある大難も、
実は、必ず越えることのできる壁です。


今回も面白いです。
さっそくどうぞ。


エンリケ


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桜林美佐の「美佐日記」(21)

 自衛隊の募集難。ピンチをチャンスに変える秘策は?

桜林美佐(防衛問題研究家)
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〇〇さま
おはようございます。桜林です。「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の『土佐日記』ならぬ『美佐日記』
は今回で21回目です。

 インターネットを開くと、何の断りもなく広告が出てきますよ
ね。どうやら、これまで調べたことのあるキーワードや年齢に関
係するものらしく、よく登場する言葉が「ほうれい線」です。即
ち、鼻と頬の境界線のことですが、私はいつもこれが出てくると
「ほうてんせん!?」(=奉天戦)と、いちいちビックリしてし
まいます。因みに、ハンドクリームが有名な「ロクシタン」は
「6師団」にしか聞こえません。

 そんなことはどうでもいいのですが、先週は毎日がすこぶるア
クティブでした。

年度末ということで送別会があったり、芸能リポーターをしてい
る大学の後輩が福岡でのテレビ出演後に時間を作ってくれてお茶
をしたり、そうかと思えば、ホームレスの人々のためのお弁当作
りをお手伝いしたり・・。

知らなかったのですが、福岡県は関東や大阪に次いで病気やリス
トラなど何らかの理由で路上生活者を余儀なくされた人々が多い
ようです。私も中学生の頃、突然住まいがなくなって知人宅を転
々としたことがあり、今でもその時代に戻る夢を見たりします。
なので他人事とは思えないところがあります。

 また他にも、春休みということもあり、中学生の男の子たちを
連れて陸上自衛隊の駐屯地見学にもご一緒しました。実は友人の
息子さんとその同級生で、高等工科学校に関心があるということ
でしたので張り切ってみんなで計画を考えました。

ご承知の通り、募集難が続いていて、平成29年度の自衛官候補生
合格者は17,785人だったものの、入った人は7,513人
とのこと。なんと1万人以上の人が自衛官にならなかったのです。
その中には一般曹候補生を併願して合格した人もいるようなので
すが、いずれにしてもかなり多くの人が、合格しても自衛隊に入
らないということが起きているのです。

そんな中で、中学生が興味を持っているなんて、私たちがいかに
胸躍らせたかご想像いただけるのではないでしょうか。少年工科
学校(現・高等工科学校)出身の方や、子供向けの説明が上手な
隊員さん、見た目からして「鬼軍曹」のような人が出て来て、ま
るで腫れ物に触るかのようににこやかに対応する様子からも、現
在いかに「売り手市場」であるかが窺えます。

かくいう私も、そう、私はいつも自衛隊が困っている話や、お金
がない話ばかりしているのですが、こういう時は自衛官になるこ
とがどんなに素晴らしいかを必死に喋ろうとしてしまい、どこか
不自然なかんじに・・・!

反応がいまひとつの中学生君たちから無言の圧力を感じながら、
そして「色々言ってるけど、あくまでも自分の意志だからね!」
などと言いながらも、やはり彼らがいつか自衛官になってくれま
すように!と、心の中で祈ってしまいました。

それにしても、景気の上昇により今年3月に卒業した大卒者の有
効求人倍率が1.88倍といいますから民間企業に流れる人が多い
のは必定。自衛隊の場合は中学・高校を出たばかりの人材のニー
ズがむしろ高いのですが、大学に進むのが当たり前のようになっ
ている今、若い戦力を求めることはますます難しくなりそうです。

一方では、ホームレスの人々が久留米や博多などで冬を越せず亡
くなっているという現状があるのに、なかなか経済というものは
複雑です。どうしても学校を卒業する時の景気に左右されるとこ
ろがあるようです。

私が大学を卒業した時はいわゆる「就職氷河期」が始まった頃で、
以降に社会に出た人たちのことが社会問題になっています。しか
し、このことはあまり認知されていないのか、最近も「若い人た
ちは結婚したがらないらしいですねえ、なんでですかねえ」とい
った会話を聞きました。氷河期の人は多くの場合、社会人スター
ト時点で希望の職に就けなかったり正社員になれなかったので、
処遇に恵まれないまま年を取ってしまっているのです。このこと
があまり知られていないようです。

生活不安がつきまとうため、未婚者が増え出生数が減少している
のは当然の成り行きなのですが、自力で事業を成し遂げたような
人にとってみれば「甘ちゃん」に見えるのかもしれません。バブ
ル崩壊にリーマンショックや派遣切りと昭和の時代には経験しな
かった事象が重り、そして好景気と言われる今でも処遇は変わら
ず、さらに今後はそれぞれ親の介護も必要になる世代であること
から、「就職氷河期世代」問題は深刻化すると言われています。

もし、なんとか結婚ができて子供が生まれても、子供が自衛隊に
入れば親も老後が安心になります、とか、そんなことになれば少
しは違ってくるのでは?などと考える今日この頃です。このピン
チをチャンスに変える秘策はないものでしょうか。

つい、募集の話が長くなりましたが、先週は福岡市にある筥崎宮
にも行ってまいりました。あの『元寇』にも出てくる「はこざき」
です。ここの楼門の上には「敵國降伏」という額が掲げられてい
ます。元寇の時に身を捨てて国難に代ろうとお祈りされた亀山上
皇による書を模写拡大したものだそうです。

敵国降伏なんておどろおどろしい印象ですし、しかもここの鳥居
は実際、通常の神社ではまずあり得ない北向きに造られ、鳥居か
ら直線上には大陸や朝鮮半島があると聞くと、かなり挑戦的なの
か?と思われそうですが、「敵國降伏」の意味するところは若干
イメージと違っていたようです。

1818年に幕末の儒学者、頼山陽が筥崎宮に詣でた際「敵國降
伏」の四文字に目を止め、もし、敵国を降伏させるという意味で
あれば、「降伏敵國」でなければ文法上おかしいのではないかと
いう指摘をしたそうです。漢文では「降伏セシム敵國ヲ」という
書き順になるのが正しいのではないかと。

このやりとりはここまでで終わるのですが、その後、明治になっ
てから福岡出身の福本日南という論客が頼山陽の疑問を解くこと
になります。

曰く、敵国が「降伏する」であれば自動詞で、敵自らが降伏する
という意味だが、敵国を「降伏させる」とすれば言うまでもなく
他動詞で、武力でねじ伏せるという意味になる。「降伏敵国」だ
ったら武力で天下を統一する意図が表されるが、「敵國降伏」は、
敵国がわが国の優れた徳の力によっておのずから靡き統一される
「王道」の表現にほかならない。これこそ日本の優れた国柄が示
されていると。

筥崎宮の田村宮司が記された「敵國降伏のいわれ」には、この経
緯から思い出される一つとして、明治天皇の御製が掲載されてい
ました。

「おのずから 仇のこころも靡くまで 誠の道をふめや國民」

 ここに日本人の進むべき道が見える気がします。もちろん、元
寇でもそうだったように、敵の侵攻する隙のない守りを固めるべ
きであることは言うまでもありませんが。

 「国難」と言っていい自衛隊の募集難も、果たして日本人の徳
の力で乗り越えることができるのかどうか・・・、私たちは試さ
れているのかもしれません。

<おしらせ>

 新刊『自衛官が語る災害派遣の記録』(桜林美佐監修/自衛隊
家族会編)は今週末に出来上がります。災害派遣に従事した指揮
官・幕僚・隊員たち37人の証言をまとめた貴重な記録です。メル
マガ連載中の宗像元陸将も、2000年3月の有珠山噴火での災害派
遣の様子を寄稿されています。そこには当事者しか知らない印象
に残る記述がありました。一部引用します。

「人間の欲求とは不思議なものです。どんな災害でも同様だと思
いますが、災害発生時とその直後は、まず『命』、危険から逃れ
ることです。まさに飲まず食わずでも安全に避難することから始
まります。そして身の安全が確保されると、必要とされるのは
『水』そして『食料』、次いで『寝る場所』となります。『食料』
も最初はただ食べられるだけでありがたかったものが、次第に
『温かいものが食べたい』『味噌汁が欲しい』となります。2、
3日も経つと、『風呂』に入りたくなります。日本人の特性でし
ょう。そして1週間も過ぎると、『プライバシー』の要求です。
体育館のような公共場所に雑魚寝するのはおおむね1週間が限度
なのでしょう。これらが、順を追って避難した住民に対する自衛
隊の災害派遣活動の主任務となったことは言うまでもありません」

「被災者に寄り添う支援」と言うのは簡単ですが、現場ではさま
ざまな苦労があることがよく分かります。なお宗像さんが東北方
面総監時代に実施した大規模な震災対処演習「みちのくアラート
2008」が、2011年3月の東日本大震災での災害派遣で大
いに役立ったことを付記しておきます。

<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしている「国防ニュ
ース最前線」4月6日(土)も伊藤俊幸・元海将に解説頂きます!

http://www.chclara.com



(つづく)



(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、
ディレクターとしてテレビ番組を制作。その後、国防問題などを
中心に取材・執筆。著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続け
た海の守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰も語ら
なかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だけでは防衛産業は守
れない』『防衛産業と自衛隊』(いずれも並木書房)、『終わら
ないラブレター─祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』
(PHP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産経新聞出
版)、『ありがとう、金剛丸─星になった小さな自衛隊員』(ワ
ニブックス)。月刊「テーミス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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