配信日時 2019/03/29 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話】◆「最新兵器の一騎討ち──F-15イーグル戦闘機 対 SU-35フランカー(2):アビオニクス」

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。
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E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が出ました。
今回はMP5です。

「MP5サブマシンガン」
L.トンプソン (著), 床井 雅美 (監訳), 加藤 喬 (翻訳)
発売日: 2019/2/5
http://okigunnji.com/url/14/
※大好評発売中

「言葉狩り」は、
わが国だけかとか思ってましたが、
米国でもおなじようにグローバリストにより
行われているとか。

「グローバル化」なるものが、
ろくでもない分野にしか起きていない感を
持つのは私だけでしょうか?

さっそくどうぞ。


エンリケ


追伸
ご意見ご質問はこちらから
https://okigunnji.com/url/7/


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加藤大尉の軍隊式英会話     Takashi Kato

◆「最新兵器の一騎討ち
 ──F-15イーグル戦闘機 対 SU-35フランカー(2):アビオニクス」

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□今週の「トランプ・ツイッター」

 いまアメリカでポリティカル・コレクトネスという言葉をよく
耳にします。直訳すれば「政治的公正」。しかしこれでは、左傾
化著しい米社会での意味合いは伝わりません。もともとは80年
代の差別語禁止運動に端を発した表現で、現在では歴史上差別さ
れてきた人たち、すなわち黒人や女性を雇用や教育面で優遇する
措置なども指します。

 人種や性別、性的少数者に対する差別是正は喜ばしい変化であ
り、わたしも全面的に支持します。同時に、平等という錦の御旗
のもと「言葉狩り」が蔓延し、率直な意見を口にするのがはばか
られる空気には危ないものを覚えます。

 たとえば年末の挨拶「メリークリスマス」。キリストの誕生を
祝う意味が問題視され、政府組織や公式の場では「ハッピーホリ
デーズ」に取って代わられました。さまざまな宗教が混在する現
状を踏まえた言い換えですが、アメリカの伝統にはそぐいません。

 米国独立宣言には「人間は生まれながらに平等で、その創造主
から生命、自由、そして幸福の追求という不可侵の権利を与えら
れている」とあり、この創造主がキリスト教の神であることは明
らかだからです。アメリカ紙幣に印刷された In God We Trust
(我らは神を信ずる)のゴッドも同様でしょう。もとよりわたし
は信心がありませんが、「メリークリスマス」という長らく定着
した表現に目くじら立てる風潮は行き過ぎだと感じます。
 
 ことほど左様に、昨今のアメリカでは伝統的価値や歴史、資本
主義に対する謂れなき中傷と、自国を差別者や搾取者と見る自虐
史観が横行しています。これをポリティカル・コレクトネスだと
信じる左派の若者が増えているのは憂うべき事態です。それはま
た息苦しい世相でもあり、たとえば「男女の区別なき幼児教育を
行なうべき」との主張に異を唱えれば、即「ホモフォビア(同性
愛嫌悪)」と決めつけられ、「ヒジャブやニカーブを強いるイス
ラム教は女性蔑視か」と疑問を呈すれば「イスラムフォビア(イ
スラム恐怖症)」のレッテルを張られてしまいます。

 この社会風潮の延長線上にあるのが今回のテーマの地球温暖化
です。いずれ枯渇する化石燃料から、今のうちに太陽熱や風力、
潮力といった再生可能エネルギー源への移行を準備するのは先見
の明あるビジョンであり、わたしも賛成です。しかし、人類が気
候変動という危機的状態に直面しているのかということになると
分かりません。

 たとえば、恐竜が生息していた中生代(2億5000年前から
6600万年前まで)は現在よりはるかに温暖で、北極と南極に
氷床が存在しなかったそうです。4万?10万年という雄大な時間
スケールで繰り返されてきた寒冷化と温暖化を、産業革命以降の
気候変動といかに区別するのか?

 気候を左右する変数が多すぎ、スパコンでも2週間先の天気予
報が限界だと言われる今日、どうして50?100年先の温暖化が
予測できるのか? わたしの素朴かつ順当な問いかけも、「温暖
化ありき」の世相では「非科学的」「非常識」「危機感不足」と
断罪されるのがおちでしょう。

 米国で息を吹き返した左派が主導する、この知的服従の風潮に
風穴を開けるのがワイルドカード・プレジデントです。ブリティ
ッシュコロンビア大学の資源環境研究所で博士号を取得し、19
86年まで国際環境保護団体グリーンピース代表を務めたパトリ
ック・ムーア博士を引き合いに出し、地球温暖化をフェイクサイ
エンスと指弾しています。

 本日のトランプツイッター、キーワードは fake science。科
学的事実として誤って流通している信念のことで「疑似科学」と
訳されます。

Patrick Moore, co-founder of Greenpeace:“The whole climate 
crisis is not only Fake News, it’s Fake Science. There is 
no climate crisis, there’s weather and climate all around 
the world, and in fact carbon dioxide is the main building 
block of all life.” @foxandfriends Wow!

「環境保護団体グリーンピースの共同創立者であるパトリック・
ムーアによれば、『気候変動による危機はフェイクニュースどこ
ろか疑似科学だ。そのような危機は存在しない。気候や天候は世
界中で日々変化しており、(地球温暖化の原因とされる)二酸化
炭素は生命の基本的構成要素だ』。よく言ってくれた!」


 それでは本編に入りましょう。

 SU35フランカーは、西側第四世代機であるF15などに対抗できる
第4++世代機として2000年代初頭に登場しました。したがって当
初から、アナログ計器を廃したグラスコックピット(glass cockpit)
を装備。地上、空中目標に対し遠距離から照準できる優れたアビ
オニクス(avionics)と、ミサイルおよびレーザー警報装置などの
自己防御機能も有します。

 一方のF15は70年代のデビュー当時、アナログ計器主体のコッ
クピットでしたが、近代化プログラムを通じ現在ではほぼデジタ
ル計器に改修されています。基本設計の手堅さとテクノロジーの
進歩を見越した余裕あるデザインが功を奏した結果で、各国の第
4.5世代戦闘機に匹敵する性能を維持していると思われます。

 しかし自衛隊が装備する初期生産型のF15Jのなかには、構造上
アビオニクスの近代化改修が効率的に行なえない機体もあると聞
いています。機体そのものの空力性能(aerodynamic performance)
は変わらないとはいえ、80年代に開発されたコンピューターを積
んだ機体で領空侵犯に対処するのは、有事となれば「死にに行け」
と言うに等しいのではないかと危惧します。


教材ビデオ:
https://www.youtube.com/watch?v=EW3CXJ2iRIk

(アビオニクスの比較は3:10から始まります)

シナリオ

For close-in dogfights, he F15’s radar automatically 
acquires enemy aircraft’s position and this information 
is projected on the head-up display.

(近接空中戦では、F15のレーダーは敵機の位置を自動的に捕捉し
てヘッドアップディスプレイに投影する)

(アビオニクスの比較は4:49まで続きます)

基本語彙 (カタカナ発音表示はおおざっぱなものです)
Close-in(クロースイン)至近距離の
Acquire(アクワイヤ)得る
Project(プロジェクト)投影する
Head-up display(ヘッドアップ ディスプレイ)航空機のキャノ
ピーなどに計器情報を投影する装置

英語一言アドバイス:
借用語(しゃくようご)としてのprojectは「企画」とか「計画」
の意味で用いられますが、動詞には「投影する」「?の印象を与え
る」などの使い方もあります。たとえば「専守防衛は弱腰の印象
を与えかねない」なら、Exclusive defense posture might 
project a sign of weakness”でよいでしょう。

発音サイト
(Exclusive defense posture)projects a sign of weaknessの
発音: 
https://www.howtopronounce.com/projects-a-sign-of-weakness/


参考サイト(ウィキペディアのサイトで日本語版に移行してくだ
さい)

F15戦闘機:
https://en.wikipedia.org/wiki/McDonnell_Douglas_F-15_Eagle

F15J戦闘機:
http://www.mod.go.jp/asdf/equipment/sentouki/F-15/

SU35戦闘機:
https://ja.wikipedia.org/wiki/Su-35_(航空機)

ヘッドアップ ディスプレイ:
https://en.wikipedia.org/wiki/Head-up_display




加藤喬(たかし)


●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。アラスカ
州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省外国語学校
日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―ある“日本
製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、『名誉除隊』
『加藤大尉の英語ブートキャンプ』『レックス 戦場をかける
犬』『チューズデーに逢うまで』『ガントリビア99─知られざ
る銃器と弾薬』『M16ライフル』『AK―47ライフル』
『MP5サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。 
 
 
追記
「MP5サブマシンガン」
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『チューズデーに逢うまで』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063326X
 
『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専門用語があ
ります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日本人が自衛
隊のブリーフィングに出たとしましょう。「我が部隊は1300時
に米軍と超越交代 (passage of lines) を行う」とか「我が
ほう戦車部隊は射撃後、超信地旋回 (pivot turn) を行って離
脱する」と言われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」は
 "Repeat" ではなく "Say again" です。なぜなら前者は
砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍では建物の
「階」は日常会話と同じく "floor"ですが、海軍では船にちな
んで "deck"と呼びます。 また軍隊で 「食堂」は "mess 
hall"、「トイレ」は "latrine"、「野営・キャンプする」は 
"to bivouac" と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取りあげ、
軍事用語理解の一助になることを目指しています。
 
加藤 喬
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